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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL26

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第89章 デュラハンの脅威


 デュラハンの配下であった姿をした傀儡の相手を天界の三人に任せ、ガルシア達はアネモス神殿の最奥へとたどり着いた。
「この先にデュラハンが……」
 ガルシアは呟くと、生唾を飲む。
 ガルシア達が前にする扉の向こうからは、圧倒的な力を持つものの存在を感じた。
 その力はあまりにも禍々しく、胸が悪くなるような感覚を覚える。この扉を開けばそこにはきっと、天界に侵攻し、世界を混沌に陥れ、仲間をさらっただけに止まらず、ソルブレードの使い手たるロビンを殺害した憎きデュラハンがいる事であろう。
 ガルシア達はここへ来て初めて、自らが相手をするものの真の恐ろしさを知る。重厚な扉を一つ隔てているというのに、伝わってくる力はやはりとてつもなく大きい。
 しかし、ガルシア達に戻る道はなかった。ただ前へと進み、必ずやデュラハンを倒さねばならない。
 囚われの身であるシバ、太陽神ソルに導かれし虹の女神、イリスを救うため、そしてデュラハンの不意の凶刃に倒れたロビンの仇を討つためにも、戦って勝利を上げねばならない。
「皆、行くぞ……!」
 ガルシアは仲間達が頷いたのを確認すると、禍々しい気を放つ扉へと手をかけた。
 ガルシアが扉を軽く押すと、重厚な見た目に反して扉は簡単に開いた。そしてガルシア達は部屋の内部へ足を踏み入れる。
 その先に通じていたのは、最早この世界の理から外れているような空間であった。
「なんだここは!?」
「これは、瘴気か? いかん、皆気を抜くな! 気が狂ってしまうぞ!」
 アネモス神殿最奥の部屋は、ついさっきまでウェイアード全体を包んでいた瘴気に満ちていた。
 瘴気の発生源であった物体は、ヒースの命懸けの攻撃によって破壊されている。そのはずであるのに、部屋内部は激しく煙立つ香でも焚いているかのような瘴気の霧に包まれていた。
 見通しの効かない強力な霧の中、ガルシアはあるものを発見した。
「あれは……!?」
 ガルシアの視線の先には、一本の柱が立っている。しかし、よく目を凝らしてみると、それは単なる柱ではないことが分かる。
 柱の中心付近が、ガラスで包まれているように透明で、その中に何かが閉じ込められている。目を凝らすごとに、その内部に閉ざされているものの形が見える。
 それは細長く、上下が尖ったような形をしている。中心は白く、上部の尖りと中心部の間に丸い、くすんだ金色のものが見える。
「おい、ガルシア、どこに行くんだ!?」
 おもむろにガルシアはその柱へ向かって歩き出していた。シンが止める声など気にかけられないほどに、ガルシアには嫌な予感が走っていた。
 扉が開放されたためか、煙が外に出ていくかのごとく、瘴気の濃度は薄れていき、視界も少しずつはっきりしていった。
 そして柱の全体を目視できるほどの距離に近付いた途端、ガルシアは驚愕することになる。
「バカな!?」
 ガルシアは柱に駆け寄り、それに張り付いた。
「シバ!? シバじゃないか!」
 柱に閉じ込められていたのは、四肢を緊縛された状態の少女である。そしてその少女は、ガルシアの探し続けていたシバであった。
 白地の衣服は薄汚れており、特徴的なボブヘアーの金髪は乱れ、顔は頬が痩けているのがよく分かった。
 見るからに憔悴しきっており、蒼白となった顔は死人と比べてもそう違わない。果たして生きているのか。
「シバ! 俺だ、ガルシアだ! 返事をしてくれ!」
 ガルシアは分厚いガラスの柱を叩きながら大声で呼び掛ける。
 シバは目を薄く開けた。
「が……る、し…………あ……?」
 とても弱々しい声ではあったが、シバはガルシアの呼びかけに応じた。
 シバは生きていた。この事実を知ることができただけで、ガルシアはひとまず安心感を得ることができた。
「シバ! そうだ、俺だ、ガルシアだ! 待っていろ、今自由にしてやるからな!」
 シバを閉じ込めるガラスの柱は強固であり、とても素手で壊せそうな代物ではなかった。
 仕方なくガルシアは、黒魔術の魔導書を取りだし、その力によってシバを助けだそうとする。その瞬間。
「危ない、ガルシア!」
 ガルシアの真横を狙うように、真っ赤な球体が落下した。
 その球体はまるで水滴のごとく、落下した瞬間に四散した。
「なにっ!?」
 ガルシアはあまりにも急に起こった現象に驚くしかなかった。しかしすぐに、落下して散ったものの正体が分かった。
 それはエナジーの塊であり、熱量を持っていて地面を黒く焦がしていた。
「これは、エナジーの波動!?」
「ふふふ……! それは我がイリスと融合するための媒体だ。あまりベタベタと触らないでもらおうか」
 重低音の声が聞こえた。その先には玉座に座する、紫に金のまだら模様の鎧に身を包み、ガルシアへと手を向け、そして肩から上、首がない大悪魔。
「デュラハン……!」
 シバとイリスをさらい、三体の配下を従え、ウェイアードを瘴気に満たして混沌に陥れ、更にはロビンを殺したデュラハンが、まるで王者のように座していた。
「人間どもがここまで来られたこと、まずは誉めおくとしよう……」
 デュラハンの話し方は王のそれに近いものである。
「そこの下郎、これ以上は言わぬ、さっさとその手を媒体から放せ」
「ふん、素直に従うとでも思うか!?」
 ガルシアは何としてもシバを救いだそうというつもりであった。
「待っていろ、シバ、今すぐ自由にしてやるからな!」
 ガルシアは魔導書を持ち、黒魔術で柱を砕こうとする。
「ふん、王の慈悲をくれてやろう。そこから小娘を無理に出そうものなら、瞬く間に小娘は死ぬぞ」
 戯れ言で惑わそうとしているのだろうと、ガルシアは取り合わない。
「分からぬ奴よ、アネモスの巫女はもう一週間以上何も口にしておらぬ。よもやこの意味が分からぬわけではあるまい?」
 ガルシアはこの言葉に反応を示した。
「なんだと……!?」
 一週間もの間飲まず食わずであれば、人はどうなるのか、考えるまでもなく死が訪れる。シバが憔悴している事からも、死の危機が濃厚なのが分かる。
 ではそのような状態にありながら、何故シバはこうして生きていられるというのか、答えはデュラハンにより明かされる。
「アネモスの巫女は、我が与える活力によって生きながらえているているのだ。その柱を媒介してな。そんな状態の巫女を無理矢理外に放り出せばどうなるか、ここまで言えば分かるであろう?」
 シバを拘束から救うことは、そのままシバの命を散らす事になってしまう。
 それはデュラハンを倒すことも同じであった。デュラハンが死ぬような事があれば、活力を与える者がいなくなり、やはり間もなくシバに死が訪れてしまう。
「くっ! 何か方法はないのか……!? デュラハンを倒し、シバも救える最善策が……!」
 ガルシアは葛藤する。
「イリスを救うんだ」
 ガルシアの葛藤に、答えを与えたのはシンであった。
「イリスの力、あの虹色の翼の再生力があればきっとシバも回復できるはずだ!」
 イリスの再生の力は、瀕死になったガルシアを救ったことがあった。
 全身に大火傷を負い、死にかけたガルシアはその力によって傷跡も残さずに回復した。