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同調率99%の少女(7) - 鎮守府Aの物語

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--- 1 艤装の持ち出しについて



 校長と提督の打ち合わせから1週間と3日ほど経った。いざ艦娘部を設立できるとなると準備が忙しくなり、那美恵はその間生徒会の仕事・部設立の学内の準備・鎮守府への掛け合いの3つをほとんど並行して行う日々を過ごす。
 提督から艦娘としての通常任務や出撃任務は控えられていたのと、もともと鎮守府Aは出撃任務自体が少なかったのが那美恵にとって救いであった。学生の身であるため、実際の作業は放課後の数時間で行うことがほとんどである。ため息をつく暇もない時間が続く。
 そんな忙しくなる日々の前、打ち合わせがあった翌々日のこと。


--

 那美恵は高校の授業が終わったあと、生徒会室への顔出しを軽くしてからすぐに鎮守府Aに向かった。目的は、以前質問した艤装の持ち出しに関する回答を聞くためだ。なお、学校側の代表として三千花も連れて行こうと思い提督に連絡すると、OKが出たので二人揃って学校を発った。

 その日鎮守府にはめずらしく全員が揃っていた。五月雨たちと五十鈴らは艦娘の待機室に、先日那美恵の高校に来た妙高は提督とともに執務室にいる。那美恵はノックをして執務室に入り、二人に挨拶をして提督に近寄った。三千花は執務室の前で待たせている。

「提督、昨日言ってた質問の回答聞きに来たよ。あと三千花連れて来たんだけど、入れていーい?」
「あぁ、どうぞ。」
「みっちゃん、入っていいって。」
「失礼します。」

 三千花が執務室に入ると、提督と妙高はにこやかな顔で彼女を迎え入れた。三千花は来賓扱いということで提督はソファーに案内し着席を促す。ほどなくして妙高がお茶を出してきた。

「あの、私ここまで案内されてもよかったんでしょうか?那美恵、那珂の関係者とはいえ一応部外者ですし。」
「いやいや、那珂の関係者だからこそいいんだよ。それにこれから伝える話はあなたにも一応知っておいてほしいからね。」

 三千花ははぁ…と返事をして、提督が話しのため準備が終わるまで待つことにした。
 その間那珂は何かすることはあるかと提督に尋ねたが、特にないので三千花と一緒に座っているようにと提督から指示を受ける。その提督は妙高に何か指示を出していた。

「提督。今日は五月雨ちゃん秘書艦席にいないのね。どーしたの?」
「ん?あぁ。今日は俺は朝から鎮守府勤務でね。五月雨は学校で外せない用事があったみたいだったから、急遽妙高さんにお願いしたんだよ。」
 その日は妙高が秘書艦なのであった。その妙高が内線で呼び出したのは工廠長の明石だ。

 明石は数分後、執務室にやってきた。メンツが揃ったので提督は明石を那美恵と三千花の向かいのソファーに座らせ、自身も明石の隣に座って話し始めた。
「さて、那珂から預かっていた質問を大本営、つまり防衛省の鎮守府統括部に問い合わせてみた。その回答が来たよ。」
「うん。」「はい。」
 那美恵と三千花は頷く。

「条件付きでOKとのことで、その条件とは……。」
「条件とは……? もったいぶらずにサクッと教えてよぉ〜」
 那美恵は提督にやや甘えた声でせがむ。提督は少し溜めた後その条件の内容を口に出した。
「本人が同調して使える艤装ならOKとのことだ。」
「自分が?」
 那美恵は片方の眉を下げて怪訝な顔をして、提督の言葉を聞き返した。
 三千花は明石の方に視線を向けて言った。
「それって……?」
 それに気づいた明石は三千花のほうをチラリとだけ見てすぐに提督の方を向き、続きを促すべく小声で催促する。それを受けて提督は小さく咳払いをしてから続きをしゃべりはじめる。
「言葉通りの意味だよ。本人が同調して使える艤装なら持ちだしてもいいということだ。」
「いやいや、同じこと2回も言わなくてもわかってるって。あのさ、それじゃさ。意味……なくない?詳しく教えてよ?」
 那美恵の語気が荒くなり始める。提督の言い方にやや苛ついる様子が伺えた。

「今現在の艤装装着者に関する法律では、鎮守府つまり深海棲艦対策局および艤装装着者管理署の支部・支局外への艤装の持ち出しについては特に明記されていないんだ。」
「へぇ〜そうだったんだぁ。じゃあ今は問題ないんだよね?」
 那美恵が期待を持って言うと提督と明石は明るくない表情になった。
「それが……そうでもないんだよ。だから持ち出していいよという簡単な話じゃなさそうなんだ。」
 とバツが悪そうな提督。提督の言葉の続きは明石が続けた。
「いわゆるグレーっていうことなの。艤装の任務以外での鎮守府外への持ち出しについては艦娘制度当初から特に定められてなかったみたいなの。」
「うん。そんでそんで?」
 那美恵は軽いツッコミで聞き返した。明石はそのツッコミ混じりの相槌を受けて続ける。
「ちょっと歴史のお勉強になるけどゴメンね。付き合ってね。……20年前に誕生した艦娘こと艤装装着者。彼ら彼女らの使う艤装は武装としても内部で使われている電子部品としても一級品のいわゆる金のなる木のような存在で、初期の数年では一部の鎮守府で国外への持ち出しがあったのが発覚したの。それを重く見た当時の政府は国内はまだしも国外に技術A由来の日本独自の設計による艤装が国外に渡って不意な技術流出があってはならない、ということで国外の無断持ち出しは禁止にと、法改正で決まったの。国外への持ち出しこそ禁止になったけど、法の施行当時まで、鎮守府外・国内の非戦闘地域への持ち出しについては特に誰も問題視しなかった。というよりもすっぽり抜け落ちていたらしいの。その後問題提起されたんだけど……。今回提督が防衛省に行って確認して、それでお偉いさんも思い出す羽目になって慌てて提督に臨時で言い渡したらしいのよ。」

「でも国内はおっけぃなんでしょ?」
「うーん。どうでしょね。提督からお話聞いて私も気になってうちの会社の艤装開発設計部の上司や関係部署にその辺りの法律関係のこと聞いてみたんだけどね。そのことについては取り決められてないから製造担当の企業である自分らでは判断しかねるって誰もが言うのよ。」