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はろ☆どき
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桜の妖精なエドワードとロイのお話

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〈桜降る〉

ちょうど満開を過ぎた頃、春の嵐のような南風が吹いてはらはらと桜の花びらが舞い散った。
そして追い討ちをかけるように今日は雨まで降っている。
買い物に傘を差して出かけた帰り道。ロイは道端の所々にできた水溜まりを見て、覆うように浮かぶ薄紅色の花びらにため息をついた。
それだけ花が散ったということだ。
それはエドワードとの別れが迫っている証。
ロイは気が急いて足早に自宅へ戻った。
門を潜ろうとしたところで傘にぽすんと何かが当たった衝撃があった。
花にしては重量があるような…と思っていれば、傘の縁から金色のお下げが垂れてきた。
「よ、ロイ!もう雨止んでるぜー」
「うん?ああ本当だ」
空を見上げると小降りになっていた雨も消えたようだ。
エドワードが傘から離れるのを確認してから、ロイは傘を畳もうとした。
するとはらりと桜の花びらが幾つか舞い落ちてきた。
「傘に花びらが付いてるぜ。ほら」
そう言われて傘の上の面が見えるようにそっと地面に置いてみる。
確かに数枚の花びらが乗っていた。
「雨と一緒に降ってきたんだろうね」
散る、とは言いたくないのだ。
「桜の雨かー。なんかいい感じじゃねえ?」
そんな心境を知ってか知らずか、エドワードが楽しげに傘を見る。
エドワードは花が散ることを悲しんだりなどしない。
悲しむ顔を見せたことはない。
彼にとってそれが当然のことだからだろうか。
花が咲き、やがて散って葉が伸び茂る。
そうして成長していく。
葉が落ち冬を越えて、また次の春に綺麗な花を咲かせる。
それが自然の理だ。
けれど花が散るのを寂しいと感じてしまう人の心情も理のように存在する。
「しかしこれは君だろう?」
そう言ってロイは傘の上から綺麗に開いた花を摘み上げた。
顎の付いたままの花が丸ごと落ちてくるのは鳥かリスの仕業。
でなければ桜の妖精のいたずらだ。
「へへっ、ばれたか」
いたずらが見つかって嬉しそうに笑う君。
濃紺の布地に薄紅色がよく映えた。
「綺麗だな」
「だろ?」
開いた傘を地面に置いたまましばらく二人で眺めていた。
恐らく違う気持ちを抱えながら。

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