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はろ☆どき
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ホットドッグ兄さん【スパコミ25 無配】

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「うはー、美味そう! おっちゃん、ホットドッグ二個ちょうだい!」
 エドワードはようやく見つけたホットドッグ屋で、ソーセージの焼ける匂いによだれを垂らしそうにしながら注文する。
「おう、坊主。お前一人分か? うちのはボリュームあるけど大丈夫かい」
「腹ペコなんだよ。育ち盛りをなめんな!」
「そりゃあ、悪かったな。ならいっぱい食べな! うちのは美味いぞー」
 がたいのいい店主は、幸いにもエドワードの禁句に触れることなく、こんがり焼けたソーセージをバンズに乗せてホットドッグを二つ、作り始めた。
「ケチャップたっぷりでいいか」
「うん、お願い」
 店主は瓶詰めの蓋を開けて、ケチャップをソーセージの上に乗せていった。なんとはなしにその様子を見ていたエドワードは、赤いケチャップの瓶の横に、黄色と茶の粒々の入った瓶が置かれているのに気づく。
「おっちゃん、それもしかして粒マスタードじゃね?」
「よくわかったな。うちの特製粒マスタードだ。自慢の味なんだが……付けても大丈夫か?」
「オレ粒マスタード好きなんだ! ちょっと味にはうるさいんだぜ。付けてくれよ」
「お。おお……少なめならいいか……?」
 子供に見えるエドワードに対して、店主はちょっと躊躇っているようだ。「多めでも大丈夫だって」とエドワードが言い募ろうとした時――。
「付けてやってくれ、店主。彼は本当に粒マスタードがいける口なんだ」
「大佐――!」
 思わぬ声に振り向くと、エドワードの後ろにはロイ・マスタング大佐が立っていた。
「マスタング大佐! こいつはあんたの連れかい?」
「いや、ここにいたのは偶然だが――。少し付けて、できれば別の容器に少し分けてくれないか」
「はいはい、承知しました」
 どうやら。ここの店主と大佐は顔見知りのようだ。
「大佐、なんでここに……」
「仕事だよ。君こそこんなところで偶然だな」
 驚くエドワードをよそに、大佐は澄ました顔で自分の分を注文する。
「私にも二つ頼む。こちらは大人二人分だ」
「はいよ。毎度あり」
 店主はコンロの上にソーセージを二つ追加する。それからエドワードが注文した分を仕上げにかかる。
「この店を選ぶとは目が高い。ここのホットドッグは私のお気に入りでね。味は保証するよ」
 エドワードに向かって、大佐はにやりと笑いながら言った。
「……まあ、あんたが言うなら美味いんだろうな」
 珍しくエドワードは反論しなかった。
「はは、食べ物のことに関しては信用してもらえているようで嬉しいよ、鋼の」
「ホットドッグ……とマスタードに関してだけだ!」
 間違えるなとエドワードは威嚇するように言ってみせるが、相手はまったく堪えた様子はない。
「マスタードがまた、ここのは絶品なんだ。辛味は少ないが美味いから、君の口にも合うと思うよ」
「オレの口に合うかどうかは、オレが試してみてからだ!」
「威勢のいい坊主だなあ。よおし、しっかり食べてでっかくなれよ! はい、大佐の分もできましたぜ」
「ああ、ありがとう。美味そうだ」
 そうこうしているうちに、後から頼んだホットドッグも出来上がったようだ。二つに分けられていた紙袋を両方大佐が受け取ると、さっさとまとめて支払いを済ませる。
「だあれが……!」
「まあまあ、もっと大きくなれという意味だろう。いいじゃないか。それよりも早く食べよう。せっかく作りたてなのに、冷めてしまったら勿体ない」
 大佐は紙袋の一つをエドワードに渡しながら、背中を押して促した。
「あ? あれ、まだ金払ってねえぜ、オレ」
「もう済ませたよ。早く行こう。……中尉を待たせては命に関わる」
「中尉も来てるのか。そりゃ待たせたら悪いな」
「ああ、席を取ってくれているよ。せっかくだから一緒に食べようじゃないか。アルフォンスも来ているのかい?」
「え、うん。席を取ってくれてるはず……なんだけど」
「ならば探してピックアップしていこう。いや、既に中尉と合流しているかもしれんな」
 さあ、と促されてエドワードは歩き始める。なんだか煙に巻かれているような気がするが、手にした紙袋からは焼き立てのソーセージの匂いがする。

――冷めたら作ってくれたおっちゃんに悪いもんな?――

 なんとなく心で言い訳をしつつ、エドワードはアルフォンスを探しながら大佐を追いかけた。



 その後、待っていたアルフォンスとホークアに合流することができた。そして席の並びでひと悶着しつつも、無事に出来立てのホットドッグはそれぞれのお腹に収まったのだった。
 大佐の保証付きだったのはともかくとして、エドワードの口にとても合っていたらしい。「オレが美味いと思ったから美味いんだ」といたく満足した様子のエドワードを見て、アルフォンスも満腹したような気分を味わうことができた。



 そうしてアルフォンスの『元の身体に戻ったら食べたい物リスト』にこの町のホットドッグが追加され、さらに『兄さんのお気に入り』という印がまた増えたのだった。




――完――