こらぼでほすと 散歩3
「いや、黒ちびに尋ねろ。俺の好みを作って、どーする。」
「刹那も肉好きですよ。他に欲しいものは? 」
「帰ってから注文してやる。」
「あはははは・・・・わかりました。帰ったら、亭主孝行させていただきます。」
なぜ、このいちゃこら会話ができて、愛なんてものに進展しないのか、人間生活初心者のリジェネには、甚だ謎だ。どう聞いても、どっちも相手に想いがあるのは、リジェネでも理解できるのだ。
「リジェネ、寺に帰る時にビールを箱で買わないといけないんだ。すまないが覚えといてくれ。」
「わかった。それならフルーツゼリーも買って、ママ。」
「いいよ。いろいろと買い物はしなけりゃならないだろうから、荷物持ち頼む。」
「了解。ほら、お茶が届いたから、まず水分補給。」
看護士がニールでも飲めるほうじ茶を運んで来てくれた。さらにレイが適当な雑誌やディスクを手に戻って来たので、とりあえず、のんびり茶会を始めることにした。
坊主のほうは、朝から続く雨に予想はしていたから、がっかりはしない。とりあえず電話できるぐらいには起きていられるらしいので、それならよろしい、というところだ。作り置きのおかずはあるので、さほど困ることもないし、今日は店も休みだし、ダラダラとテレビでも見るか、と、居間で転がった。シンと悟空は脇部屋のテレビでゲームを楽しんでいるから、居間は静かだ。
カラカラカラと玄関の開く音がしたが、スルーだ。殺意も敵意もないから、おそらくは沙・猪家夫夫だろうと当たりをつけていたら、障子から出した顔は、今しがた話していた相手の片割れだった。
「こんにちわー義兄さん。」
「降下の連絡はなかったぞ? 義弟。」
「いや、地上には居たんです。・・・あれ? 兄さんは? 」
実兄の姿がない。なんとか特区の西から飛行機に乗り込んで到着はできた。勝手知ったる場所なので、タクシーで乗りつけたのだが、実兄の姿がないので、ロックオンは首を傾げた。
「女房なら本宅だ。定期検診だったんだが、この雨でダウンしてる。」
「刹那は? 」
「本宅かラボじゃないか。さっきは居なかったから、ラボだろうな。」
刹那降下の話はハイネから聞いていた。とりあえず検診中にラボで打ち合わせしてニールのところへ合流するとのことだったから、まだ戻っていないのだろう。そう言うと、義弟は、がっくりと肩を落とした。
「えーまだ? ということは本宅で合流したほうがいいな。・・・義兄さん、俺、本宅へ行きます。」
「そうだな。そうしろ。脇部屋にサルがいるから、連絡してもらえ。」
ロックオンは本宅とのホットラインを知らないので、勝手には入れない。迎えに来てもらわないと本宅のセキュリティーにひっかかる。以前も悟空に連絡してもらったから同じように頼むことにした。脇部屋では、対戦ゲームの大騒ぎが起っていたが、ロックオンが障子を開くと悲鳴になる。
「なに? 開けちゃマズかったか? 」
それだけで、ディランディーの片割れだと判明して、ふうとシンと悟空は息を吐き出した。いきなり、この大雨の中、おかんが戻ったら、それこそミステリーだ。よく見たら、オシャレな恰好だ。ニールは、そういう恰好は仕事でしかしないので、別人と、すぐに判明する。
「なんだ、ロックオンか。びっくりした。おかんが無理して戻ったのかと思った。」
「降下の連絡はなかったけどなあ。」
「地上でミッション準備してたんだが、時間が空いたんで、ダーリンに会いにきた。悪いけど、本宅へ行きたいんで、あっちから迎え寄越してもらってくれないか? 悟空。」
「いいよ。ちっと待ってくれ。」
悟空が携帯端末で本宅のスタッフに連絡すると、30分くらいで迎えに行ける、という返事が来た。
「30分くらいしたら来るってさ。」
「サンキュー。」
「ロックオン、本宅とのホットラインを登録しろよ。」
「それ、簡単に出来るものなのか? シン。」
「ああ、本宅でスタッフに頼めば、携帯からの連絡が通るように設定してくれる。一々、俺らを通してたら面倒だろ? 」
「いや、本宅に行くことは滅多にないからさ。それに、大概が、兄さんと一緒だから、自分で連絡することもないし。」
「まあ、そうなんだけど。まず、根本的にさ。飛行機で到着することを連絡してくれば、そこで段取り組めるんじゃないの? たいがい、ロックオンは連絡なしに来るよな? 前回も、いきなりだったろ? 」
「あれ? 連絡してくれてないの? 」
「誰が? 」
「ティエリアとかフェルトとか? 」
「ないんだろうな。それなら、キラさんかアスランが迎えの手配とかしてくれてるはずだ。」
「うちのダーリンは降下の連絡はティエリアが入れてるって・・・え? 俺だけスルー食らってんのか? 」
というか、今回は連絡の必要をティエリアが考えていなかったが正解だ。地上から地上への移動だったし、そういう場合は当人が連絡するものだという認識だからスルーされている。
「普通は、自分で連絡してくるもんだろ? 」
「そういうことだよな? 刹那やティエリアは決まったIDで降下してるからキラのチェックにひっかかってるはずだ。」
「俺のIDも統一して使ってますが? おふたりさん。」
「だから、なんも言わないからスルーされてんだろ? 本宅に行ったら、キラさんに言っておけばいいんじゃね? 」
後から参加したロックオンは、そういうチェックをされていない。リジェネですら、ロックオンはチェック対象から外しているので、こういうことになっているらしい。
「俺、ぼっち扱いなのか? 」
「いや、これといって緊急じゃないからだろうな。」
「大人だからかもな。フェルトの時は迷子にならないか、ママが心配するってのもある。」
一応、大人なので迷子にもならないし、適当に訪ねてくればいいだろう、ということらしい。まあ、そうだけどさあーとロックオンが、ぶちこらと文句を吐いていたら、山門のほうからクラクションが聞こえた。
作品名:こらぼでほすと 散歩3 作家名:篠義