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こらぼでほすと 散歩6

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刹那たちはナビが案内してくれた旅館に到着した。予約のデータを見せると部屋に案内される。
「秋の花を観賞したい、との、ご要望でしたので、こちらの部屋にいたしました。いかがですか? 」
 案内のスタッフが庭に向けた障子を開け放すと、目の前の庭には桃色の花が盛大に咲いていた。そして、部屋には、花や野草が飾られている。秋の花仕様ということで飾ってくれたらしい。
「その花も秋の花なのかい? 」
「はい、萩と申しまして夏の終わりから秋まで咲く花です。この部屋が一番綺麗に眺められます。生憎と雨で庭を散策していただくには不自由ではございますが。」
 萩は小さな花と小さな葉が並んで枝にある。下に向けて流れるような枝が大量にあって、可憐なイメージのものだ。庭の萩は、まるで波のように部屋に向かって枝が盛り上がって咲いている。へぇーとロックオンは、それを眺めている。刹那のほうは、部屋に飾られている花や野草を歩いて眺めていた。床の間には活け花があって、これも秋の花でできているらしい。特区の秋の七草が彩られているそうだ。飾り棚に置かれたふたつの小さな鉢植えには、小さな花が咲いていた。
「これは? 」
「そちらは、ホトトギス草とサギ草です。野草でございます。」
 刹那の指差した鉢植えに、ロックオンも近寄った。片方は、真っ白で花びらが独特のものだし、もうひとつは紫の花だが、ドットプリントされたように濃い紫の斑点が浮き上がっている。
「うわっ、これ、自然なものなのか? ドットプリントだぜ? ダーリン。」
「色づけはしていません。自然に、その模様になっているんです。ホトトギスという特区の鳥の腹の色に似ているから、その名称だそうです。サギ草も、サギという鳥の跳ぶ姿に花が似ているからですよ。それから、洗面台のほうにはコスモスの花がございます。」
「変わってるな? 」
「俺も、こういうのは見たことがないよ。このふたつは、珍しいものなのか? 」
「そうですね。ホトトギス草は山野草としては一般的です。サギ草は自然に咲いているものは絶滅危惧種に認定されています。今は、育てられているものが大半でしょうか。」
 一通りの花と部屋の説明をすると、スタッフも下がった。ガラス窓は閉められているが障子は開け放したままだから、萩の様子は部屋から、よく見える。さすが、アスラン、と、ロックオンは賞賛だ。あの短時間で、ニールのリクエストに答えた場所を用意してくれた。ちゃんと飾られた秋の花についてのファイルも机に置かれている。それを取上げて床の間の活け花についてロックオンが指差し確認している。
「んーっと、これが・・・おみなえし・・・こっちが萩、庭のヤツだな。それからススキ、キキョウ、フジバカマ、ナデシコ、クズだってさ。つまり、これが特区の秋の代表的な花ってことなんだろうな。シーズンごとに違う花が咲くわけか・・・花の国だな? 」
「特区は季節が四つあるから、種類が多いんだろう。春の桜も見事だ。あれなら寺にもある。」
「俺、春って降りてないんじゃないかな。・・・・というか、花なんて愛でるのなかったしなあ。」
 野郎なんてものは花を観賞するような趣味の人間は少ない。何度も特区に降りているが、刹那もロックオンも、そういうものを観察することはなかった。
「寺の裏庭の畑にも花は植わっているのか? 」
「いや、あれは食材だ。ニールの暇つぶしを兼ねているから簡単に栽培できる野菜のはずだ。」
「生活困窮? 」
「暇つぶしだ。店から給料は出ている。」
 ふーん、と、ロックオンはつまらなそうに、庭に目を遣る。何かしら実兄にしてやれることがあるなら、すかさずやりたいのだが、なかなか見つからない。
「兄さんと旅行した時も、こんなだった? 」
「ああ、あの時は桜が散り際で、俺でも綺麗だと思った。露天風呂にも桜の木があって湯船に花びらが舞い降りていた。」
「露天風呂か・・・・ここのは、どうなんだろ? ちょっと見てくる。」
 これといってやることがあるわけでもないので、とりあえずは部屋の探検からやることにした。まあ、ロックオンの亭主も同じことなので、てけてけと後からついてくる。この部屋には専用の風呂がついているので、そちらを覗いて、ふたりして止まった。半露天風呂で、庭のほうに大きく窓が開かれていて、外には紅葉が少し色づいていた。それから木でできた浴槽と同じ素材の床の隅のほうに大きな花瓶に花が活けられている。ここにもススキと萩が大胆に飾られていて一幅の絵画のような景色だ。
「うわぁーこれもすごいなあ。」
 雨は相変わらずで外出は難しそうだ。前は、どうしてたの? と、刹那の女房は尋ねてきた。こういう旅館というものに泊るのは初めてで、ロックオンは勝手がわからない。
「風呂に入って、メシを食って、また風呂に入って・・それからニールがダウンするまで酒を呑んだ。」
「は? 酒? 兄さん、ほとんど呑めないだろ? 」
 前回、ロックオンは実兄と呑みに出たが、ウイスキーシングル一杯で酔っていた。酒を呑むというほど呑めないことは知っている。
「量は呑まない。ちびちびと呑んでたぞ。・・・・俺が二十歳を越えたら、ふたりで呑もうと約束していたんだ。」
「え? おまえ、二十歳より前から呑んでたよな? 四年の放浪の時に酒は覚えたって・・・」
「ニールは、特区の法律で飲酒可能な年齢までは飲ませなかったんだ。おかんの前では飲んでない。」
「さいですか。」
「それで? 」
「ん? 」
「おまえは、どうしたいんだ? ニールと同じでいいのか? 」
「いやいや、ダーリン。濃密な身体の交わりもやりたいです。・・・でも、風呂も入りたいな。とりあえず入ろうか? 」
「ああ、そうしよう。」
 特区のキモノは下着をつけない決まりなんだってさ、と、刹那の女房がおかしなことを言い出したので、とりあえず刹那は拳骨はくれておいた。



 翌日は、雨は小雨になっていた。午後からは雨も止むらしいので、昨日の公園辺りを散策するか、と、朝食の席で亭主は言い出した。チェックアウトは午後前なので、それまでは、もう一回ぐらい、次は風呂でもいいな、とかロックオンは考えつつ頷いた。たっぷりと愛情補給はしてもらったので、気分はいい。こればかりは、実兄にはされないことだ。
「いいんじゃね? 旅館のスタッフに尋ねれば、それらしいところは教えてくれるだろ。」
「そうだな。・・・あと、あの花、持ち帰れないか、尋ねてくれないか? ロックオン。」
「どれ? 」
「棚の野草だ。ニールのみやげにする。買い取れるなら、それでいい。もしダメなら同じものを売っている場所を教えてもらってくれ。」
「あんな小さいものにするのか? 派手なの用意しようぜ? ダーリン。風呂の花みたいなのがいい。」
 土産として渡すなら派手なほうがいい。風呂の大きな花瓶の活け花は見事だし実兄が驚いてくれそうだ。そう言うとロックオンの亭主は胡乱なものを見るような目で睨んでいた。
「なっなに? 」
「活け花というのは切花で長持ちしない。それから、あれはメジャーなもので売っているものだ。」
「うん。」
「それなら寺の周辺でも手に入る。野草なら、ニールも目にしていない可能性がある。だから、俺は野草がいいと思った。」
作品名:こらぼでほすと 散歩6 作家名:篠義