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こらぼでほすと 散歩7

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 ニールが読んでいた生活情報誌に掲載されていた場所は、特区内だが、かなり遠い場所だった。近辺に、そういうイベントはないか、アスランも探していたのだが、残念ながら見つからなくて、どうしようか、考えている。ざっと説明すると、ふむふむ、と八戒は自分の顎を人差し指と親指で摘むようにして思案する。
「別に迷路になっていなくてもいいんじゃないですかね? コスモスって自然に咲くと、結構な高さに育つものですから、自然に咲いてるいる場所を教えてさしあげれば、よろしいかと。」
「それ、公園とかではなくてですか? 」
「ええ、公園のは管理されているから背丈も調整されているはずです。どこかの休耕田なんかに咲かせているものなら・・・・そういうのは調べられるものですか? 」
「満開のコスモスで出てくるといいんだけど・・・・」
 シャカシャカと携帯端末で検索すると、それなりの映像はヒットする。あとは場所を、この周辺にして検索範囲を狭めれば・・・と、少し調べたら、二箇所ばかりがヒットした。昨年の情報らしいが、今年も同様なら自然に咲いているはずだ。
「ありました。・・・うーん、本当に咲いてるか、どうか・・・これは去年の映像だなあ。」
「咲いてなくてもいいじゃないですか。刹那君がニールと、お散歩できればいいんだから。もし咲いてないなら、公園でも勧めておけばいいですよ。・・・・たぶんね、刹那くんは、ただニールと一緒にいたいだけなんだから。」
 八戒は、そう言うと微笑んで、アスランを見た。刹那は、ニールが見せたコスモスの迷路を、ニールに見せたいと考えている。だが、あの時、ニールは、「こういうものを見ておいで。」 と、言っただけだ。あれが見たい、と、言ったわけではない。それはアスランも記憶している。でも、どうせなら、と、思う気持ちがある。
「そうですが・・・」
「目的は、迷路じゃなくていいんです。ママと一緒に秋を感じられれば、それでいいはずです。迷路に拘らなくても大丈夫。」
「本当ですか? 」
「ええ、大丈夫です。そのデータを送ってさしあげてださい。」
 刹那はコスモスを見せたいとは思っているだろうが、それは刹那が一緒に見たいということで、迷路に拘る必要はない。どこかコスモスが咲いているところへニールと出向けば、納得できるはずだ。八戒は、それを理解している。アスランは、側で聞いていたから、目的を迷路だと感じたらしいが、そういうものでもない。楽しい思い出を作るということなら、細かいことは省略してもいい。まあ、コスモスの迷路があれば、それが一番だが、ないものを無理に用意するほどのことではないのだ。
 八戒が断言しているので、それなら、と、アスランも、そのデータを刹那の携帯端末に送りつけた。もしかしたら、背が高くて迷路になっているかもしれない、と、期待して。
「もし、咲いてなくても、それはそれで残念だったから来年にリベンジという予定が成立するでしょ? 完璧じゃないほうが、先の楽しみにもなります。」
「それはそうですね。」
「刹那君が先の予定を考えるほうが、ニールも嬉しいはずですよ? アスラン。来年まで生きていることが前提ですから。」
 そう言われて、そうか、と、アスランも納得する。刹那たちの組織は再々始動する。それは常に死の危険の伴うものだ。ギリギリのラインで踏みとどまれるのは、そういう先の予定があればこそだと思う。対して、ママニールのほうも刹那が戻るつもりだと思えば、壊れずに存在していられる鍵にはなるからだ。
「完璧じゃないほうがいいんだな。どうも、俺は、これ一度で完璧にやりたいらしい。」
「はははは・・・あなたは、そういう性格ですからねぇ。先は長いんです。一度限りじゃなくてもいいものだと、僕は思います。特に、寺の親子猫の場合は。」
 そんな暢気な会話をしていたら、悟浄が戻って来た。本日はバーテン姿でトダカの助手をやっている。いつもはダコスタがやっているのだが、本日、あちらはニール番だ。
「これ、どっちがトダカさんだと思う? 」
 ふたつのカクテルグラスを事務机に置いた。カクテルはマティーニ。メジャーなものだが、技量が計れるカクテルでもある。アスランと八戒が、交互に味見して同じグラスを指差した。グラスの下には、マーカー代わりのシールが貼り付けてある。片方がピンク、もう一方が赤だ。ふたりが指したのは赤いほうだった。
「それほど? 」
「つまり、正解なんですね? 悟浄。」
「正攻法なのは悟浄さんですが、こっちのほうが俺たちの口に合うって感じかな。酒の違いですか? それとも比率? 」
「酒も比率も違う。呑み比べさせるから、ってトダカさんに作ってもらったんだ。・・・・うーん、比率の違いって難しいな。いや、酒も違うからな。・・・・なんか仕込みやがったか。」
「そりゃ、あちらはベテランバーテンダーですからね。僕らが飲みやすいものに作れるってことですよ。」
「適当に合わせてられるってすごいな、トダカさん。」
 それでも、亭主が作ったほうを飲み干すのが女房の愛だ。くいっと飲み干して、「暇なら、僕の好みを用意してください。」 と、オーダーする。
「かしこまりました、女王様。それ、ダウンの方向でいいか? 」
「はあ? 女房をダウンさせて、どーすんですか? 普通のカクテルでお願いします。アスランも、何かオーダーしませんか? 」
「うーん、俺はノンアルコールでお願いします。酔うと運転できませんから。」
「いや、おまえはダウンさせないぜ? キラをダウンさせられるのを教授しようか? 」
「キラは、アルコール度数の高い甘いカクテルなら一発です。」
「お子ちゃまだなあ、あいつ。なら、簡単なのを用意する。」
 店が暇なので、悟浄も、いろいろと練習している。トダカのレシピは計るのが面倒だから、自己流で試しているらしい。
作品名:こらぼでほすと 散歩7 作家名:篠義