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こらぼでほすと 散歩10

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「俺も行く。ロックオンは好きにしろ。」
「いや、俺もついてく。でも、料理は手伝えないから運転手と思ってください。」
「夕方には戻れると思うんだけど・・・なあ、ロックオン、ショッピングモールで、うちのおやつの買出ししてくれないか? ハンバーガーとかでいいから。」
「いいぜ。そういうことなら、俺は買出し担当にしてくれ。」
「どうせ、キラが俺たちの予定を知って食べたくなったんだろう。だが、うちの地方には肉まんはないんだが・・・」
「爾燕さんたちの地域の料理らしい。珍しいものが食えそうだ。」
 特区では、いろんな地域の料理があるが、砂漠料理なんてものはない。珍しい料理というのも楽しいものだから、それはそれで実弟や子猫も喜ぶだろう、と、ニールは思っている。ただし、亭主は和食が好きなので、そこいらの調整はしなくてはならない。明日、朝のうちにスーパーまで出向いて魚を用意することにした。刺身かマヨ焼きかは、亭主次第なので、今夜、尋ねる、と、心の予定帳に記憶した。


 中東料理のレストランは、独特の雰囲気に装飾された店だった。ただし、中東全域の料理とのことで、刹那が食べていたものではないのもある。メニューを眺めたものの、ガーリエマーヒー以外は、なんだかわからないので、お勧めを用意してもらうことにした。
 羊と鳥の串焼きには、白とオレンジのライスと野菜の酢漬け、バジル、生タマネギのスライスなんかがついている。羊とヒヨコ豆の煮物とナン、ナスのトマトシチューと、そこいらが出て来た。カレーのような香辛料が効いているものやヨーグルトの効いているものが多いが、割りと素朴な味で、ニールたちの口にも合う。飲み物もザクロジュースやヨーグルトジュースなんてものが主流で、ロックオンはビールを頼んだ。
「うわぁー、独特って感じ。辛いってほどじゃないんだな。」
「これ、香辛料減らしてるよ、ロックオン。アイシャさんのレシピだと、もっと入ってるからな。刹那、お酒呑んでもいいんだぞ? 運転は自動でも大丈夫だから。」
「いや、酒はいい。肉を食え、おかん。」
「おまえは野菜を食べなさい。肉ばっか食ってるだろ? 」
「煮込みはナンにつけてもいいな。これなら、俺、好きだわ、兄さん。はい、兄さん、あーん? 」
 取り分けたり食べさせたりで忙しいニールには、実弟と黒猫が口に投げ入れる。
「こういうの好きか? 刹那。」
「うまいと思うが、あんたのほどじゃない。」
「アイシャさんに他のレシピも教わろう。これなら、うちの亭主や悟空も食うだろう。」
 刹那のために魚のカレーだけ習ったので、他のも教えてもらうことにした。ロックオンが食べられるのだから、万人向けにするとおいしいものらしい。いつもより辛味も減らしてあるから、ライスやナンと合わせれば、おいしいものだ。ただし、リジェネには別の甘めを用意する必要はある。リジェネは、子供舌なので、スパイシーなものは苦手だ。
「おまえさん、放浪してた時に食わなかったんだな。」
 四年ばかり刹那は、世界を放浪していた。忙しいから、と、携帯食と水ばかりだったのは知っていたが、故郷でも食事しなかったらしい。はごはごと熱心に食べている刹那の様子からすると、経験ゼロというのは、おかんには判る。
「食えるような地域には下りていない。」
「そうかぁ? 集落はあっただろ? 」
「小さな集落には食堂はない。携帯食があった。」
「そうじゃなくてさ・・・まあ、今更だけど。これからは、ミッションで地上にいる時は、ちょっとは食べたりしろよ? それを俺に教えてくれたら作れるなら、なんとかするからさ。」
「あんたが作るごはんで十分だ。」
 どうあっても経験値を増やす気はないらしい。こういう場合は、もれなく相棒のほうに頼んでおく。
「ロックオン、頼んだぜ? 」
「無理。うちのダーリン、あんたのごはん以外は栄養摂取しか目的にしないから。ミッション中なんて、本気で携帯食オンリーなんだぞ? なんで教育してくれなかったかな? 先代さんや。」
「ミッション中は無理だよ。終わってから、とか、時間のある時でいいからさ。できるかぎり、俺は教育して、ようやく、ここまで成長したの。」
 ザクロジュースを、ちゅーと吸い上げて、ニールも苦笑する。最初の頃は、携帯食以外は毒だとばかりに食わなかったのだ。簡単で栄養もあるから、と、ジャンクフードなんかは食べるようになったが、それぐらいが精一杯の教育だった。
「もっと野菜とか肉とか食べさせたかったんだけどさ。身体に必要なもんを食べてくれなくて苦労した。身長が伸びるからって牛乳だけは飲んでくれたけど。」
「必要な栄養は携帯食にも入っていた。」
「身長が伸びなかったんじゃないですか? 刹那さんや。この四、五年で伸びませんでしたか? 」
「あんたのメシで成長したのは認める。」
「うん、だから、普段もさ。」
 宥めすかして食べさせていたのは、この会話からも判る。子育ての苦労って、こういうのの積み重ねなんだね? お兄様、と、憐憫の目をロックオンは向ける。これが三倍だったわけで、マイスターとしての仕事以外の苦労が偲ばれる。最初は、他のマイスターたちも仲が悪く連携もできなかったのだから、そこから信頼させて仲良くさせて、と、考えると、ロックオンは、俺には無理、と、確信できる。
「兄さん、苦労したんだね? 」
「は? それより、ロックオン、こいつだけじゃなくて、みんなにも食事勧めてくれよ? ほんと、こいつら、食事に興味がなさすぎるんだ。」
「俺には無理。とりあえず、兄さんとこへ定期的に戻すようにするから、メシ食わせてくれ。」
「わかってるよ。おまえも携帯食ばっか食ってるんじゃないだろうな? 年長者なんだから、そこいらの監督もしてくれ。」
「そっくり、あんたにも同じ台詞返してやる。俺らがいなくても、メシはちゃんと食え。義兄さんのあーんでメシ食ってんじゃねぇーよっっ。肉食え、肉。」
 羊肉の串焼きをニールの口に運び、ロックオンが文句を言う。もーと言いながら、ニールも肉をパクリと食う。食事に無頓着なのは、この実兄も同じなのだ。誰かが食べているから一緒に食べるという態度が、すでに壊れている。『吉祥富貴』のスタッフは、そこいらのことも理解しているから、とにかく、ニールの口にブツを運ぶことになっている。
「そうだ、おかんが肉を食え。筋肉になるんだぞ。」
 さらに、黒猫も鳥の串焼きを口に運ぶ。ニールが食わないことを発見したのは刹那で、ニール介護取扱説明を作ったのも刹那だ。だから、自分にばかり構うおかんの世話は、自分の仕事だと思っている。ほんと、仲の良い親子だよねぇーと、ロックオンは、その光景を肴にビールを飲んでいる。
作品名:こらぼでほすと 散歩10 作家名:篠義