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敵中横断二九六千光年3 スタンレーの魔女

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ドアを開けると



有刺鉄線。

宇都宮がドアを開けると、その向こうに待っていたのは有刺鉄線だった。恐れていた爆発でも、銃を持った十人の敵でも、火炎放射でもなんでもない。ただ、トゲ付きの針金が、戸口の向こうに張り渡されて、人が中に入り込めぬようにしている。

「こんなの、さっき通ったときはなかったのに……」

と宇都宮が言う。敷井はそうだろうなと思った。これでは外から中に入れないだけでなく、中から外に出ようもない。これがあったら彼が外に逃げられるはずもないことだ。

しかし、と思った。鉄線は――もっとも、素材は鉄でなくてマグネシウムのようだが――『張られている』と言うよりも、大きなバネをそこに噛ませただけのような感じに見えた。つまり、直径1メートルほどのドラムに巻かれていたのだろうトゲ線の押さえを外せばビョーンと伸びて螺旋巻きの円筒になる。それを柱と柱の間に置けば、バネの力であっという間にトゲトゲの鉄条網の出来上がり。

ものの一分で設置できる、実に簡略なシロモノだ。おそらくこれと同じものが、変電所の正面にも幾重にも張り巡らされ、銃剣突撃する者達の行く手を阻んでいるのだろう。

しかしあくまで、機銃弾幕や火炎放射、スナイパーの狙撃があるからより厄介な障害となる。それがなければこんなもの、斬ってしまえばいいだけの話だ。無論、コイルに巻かれているから、ペンチなどで迂闊に斬ればビュンと撥ねて危険が危ないものでもあろうが。

「これだけで、他になんにもなしか」

大平が言った。戸口の向こうからマシンガンでダダダと撃ってくるのであれば、これの切断は不可能に近い。だが、そんなことはなかった。行く手に人影はなく、変電設備の一部らしい機械が並んでいるばかり。なるほど、この戸口を抜ければ変電所の中らしい。

有刺線はピカピカで、埃はまったく被っていない。宇都宮の脱出の後で、それと気づいて設置したのか? が、それにしても、もうこれで中から外へ出ることも外から中に入ることもできないと考えるのはあまりにも――。

などと敷井が考えていたときだった。

「待て!」

と熊田がひそめた声で鋭く言った。有刺線のトゲとトゲの間の部分に触ろうとしていた大平が手を引っ込める。

「見てろ」

と熊田はビーム・カービン銃の先を前に突き出した。銃剣がそこに取り付けられている。熊田は刃をトゲ線に近づけた。

――と、バチッという音とともに火花が散った。刃が針金に触れるか触れぬかと言うときだ。マグネシウムの燃焼による強い閃光。

熊田は言った。「高圧電流だ」