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敵中横断二九六千光年3 スタンレーの魔女

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バラノドン迎撃隊



冥王星の白茶けた大地は、かつて青かった頃の地球の海の底のようでもある。貝殻や石が砕けて砂になり積もった遠浅の海岸のようだ。

地球の海でよく見れば、そこにカレイやヒラメがいて、砂に擬態(ぎたい)しジッと動かずいたりする。獲物がそばにやって来ると砂塵を蹴たてて跳び上がり、一瞬に食らいつくのが彼らの狩りだ。

今、まさにそれに似た平べったい物体が、固体窒素と固体メタンの雪が積もった雪原の中から姿を現した。きな粉色のパウダースノーを振り払って宙に浮かぶ。

その動きもカレイかヒラメ、もしくは、ある種のエイやカブトガニと呼ばれる生物そっくりだった。浅い海の砂場に潜んで狩りをする平たい生き物そのものの物体。それが、ひとつふたつと次々に身を躍らせて浮上する。

ガミラスの戦闘機だった。その数はおよそ百機ほど。カレイのヒレか、カブトガニの尾に似たものが付いてしきりに動かしているが、しかしロケットエンジンのノズルのようなものはない。すべての機動を人工重力装置で行う反重力戦闘機なのだ。

ゆえに一見、地球の空を飛んでいるタッドポールを平べったくしたようでもあるが、ただの反重力機ではない。冥王星の重力に最もうまく〈反する〉ように改造された特化型の機体だった。他の星に持って行ってもロクに飛ぶこともできないが、しかしこの星においてはツバメ。自由自在にクルクルと空をダンスすることができる。

ガミラスは戦闘機の性能で地球のものに劣っていた。まともにやって勝ち目がないのは彼らもよく知っている。

だが、不利を補(おぎな)う手段が無いと言うわけでもない。やろうと思えばいくらでも手は講じられるのだ。

そのひとつが、冥王星の空でだけ強い戦闘機を造り上げ、防衛機とすることだった。彼らの中でも腕の立つパイロットに特別な訓練をしてそれに乗せ、いつかやって来るだろう地球の戦闘機隊に備える。

数は百――それがこの前線基地で彼らがまかなえる限界であり、また必要充分と言えるはずの数字だった。

〈ヤマト〉がもし波動砲を撃てたなら為す術(すべ)もなく消し飛ばされるのを承知で残った者達でもある。基地の守備隊であるがゆえ他の者らと同様に避難することは許されず、逃げるつもりは元よりない。地球人の戦闘機と戦わずして去るなどむしろ『誇りにかけてできない』とする者達だ。

彼らの機に付いた名前は〈バラノドン〉。彼らは〈バラノドン迎撃隊〉だ。一対一で戦うならば、やはり地球の〈ゼロ〉や〈タイガー〉に敵(かな)う力を持ってはいない。とは言え、今に三対一でぶつかり合って、分(ぶ)があるのは果たして〈ヤマト〉の航空隊か、彼らの方か。

これまでこの冥王星に地球側の戦闘機が来たことはなく、地球人は誰もこのステルス反重力迎撃機について知らない。この〈バラノドン〉どもが冥王星の空をどのように飛び、どのような戦法を持つか知る者はいないのだ。

無論、ただでさえ地球にはアウェイの戦場だ。〈ゼロ〉と〈タイガー〉は対空砲火を避けて低空で戦うしかない。しかし、〈バラノドン〉にとって、対空砲は背中を護る後ろ盾。

今、百機の〈バラノドン〉が、反重力の作用によって高く高く上昇する。その姿は冥王星の空に合わせて設計されたステルスの蓑(みの)に覆われて、〈ゼロ〉や〈タイガー〉のレーダーでは捉えるのも難しかろう。

しかしガミラス基地の中では、彼らの動きはすべて把握されていた。レーダーの画像を見ながらシュルツが言った。

「戦闘機の性能が、戦力の決定的差ではない。地球人め。それを思い知るがいい――」