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敵中横断二九六千光年3 スタンレーの魔女

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ガントレット



並び立つ巨大な変圧器と変圧器の間に敷井が飛び込むと銃弾は飛んでこなくなった。ひとまず銃の火線を逃れたものらしい。けれどもそれが一時(いっとき)だけのことであるのもまた疑いない。

「そっちだ!」「追え!」

と叫ぶ声が反響して聞こえてくる。そして銃声。ガンガンとキャットウォークの床を鳴らして走る足音。バラ撒かれる薬莢が鳴らす楽器のような響き。

足立と宇都宮が銃を撃ちつつ敷井のいる場所に駆け込んできた。さらに遅れて流山がこちらにやって来ようとしている。

しかし、途中で銃弾に撃たれた。倒れながらも拳銃を抜き、身を引きずって這いながら、敵に応射しようとする。

――が、そこまでだった。連射を浴びて流山はその場に動かなくなった。

「ちくしょう」と足立が言う。「もうおれ達だけか」

「ああ」

と言った。敷井自身と、足立と、そして宇都宮。もうこの三人しか残っていない。

「どうする。おれ達だけで……」

ここを突破できるのか? こいつはまるで、〈ガントレット〉じゃないかと敷井は思った。剣を振り下ろす甲冑騎士が立ち並ぶ細い路を奴隷に駆け抜けさせる死のゲーム。

出口まで辿り着けたらおなぐさみ、と言うやつだ。しかし絶対に抜けられるはずが――。

などと考えるヒマもなかった。キャットウォークに人影が現れ、上から銃を撃ってきたのだ。

敷井の周りで跳弾が弾け、火花が散る。

「わわっ」

叫んだ。撃ち返しつつ後ろへ下がる。

変圧器は巨大な円筒であるために、丸みに沿って移動すれば火線を避けることも可能だ。しかし、

「こっちだ!」「逃がすな!」

と〈石崎の僕(しもべ)〉どもが呼び交す声。また別の方向から〈AK〉を持った男が飛び出してきた。

敷井はビームカービンを向けて、撃った。タマは当たるが、しかし男は防弾着で身を鎧(よろ)ってもいるらしい。倒れず、銃をダダダダとフルオートで撃ちながらそのまま突っ込んでくる。

「うおおおーっ!」

叫び声を上げた。敷井はその男が持つ〈AK〉の先にも銃剣が装着されているのを見た。

その切っ先が自分に向けられている。弾丸を撃ち尽くしても男はそのまま向かってくる。こいつはそれでおれと刺し違える気なんだ、と敷井は知って恐怖に駆られた。相手の腰に狙いを変えて撃ち続ける。

防弾されてないはずの脚を撃っても男の勢いは止まらなかった。ビームに体を貫かれても男はまだ突っ込んでくる。

おそらく、もはや痛みを感じていないのだ。実体を持たぬビーム弾にはマン・ストッピング・パワーがなく、突進する相手を止められぬときがあると言われる。言われるが、その実例を見ているのだと敷井は思った。しかしまさか――。

とうとう銃剣に銃剣で応戦することになった。刃を刃で受けて斬り返す。ガキンと言う音が鳴って火花が散った。

腕にビリビリ痺れるような衝撃を覚える。敷井が体当たりを喰らわせると男は転び、そこをビームで撃ってやったら喉の辺りから血を噴き出してようやく動かなくなった。

しかし一息つくヒマもない。別の〈僕〉がまた銃剣付き〈AK〉を持って飛び出してやってくる。そしてまた別の方から別の〈僕〉が現れて、やはり〈AK〉で撃ってくる。

敷井と足立で撃ち返した。しょせん相手は素人の乱射。対してこちらは訓練を受けたプロの兵士だ。二人三人と撃ち倒し、キャットウォークの上に立つ者も狙い落としてやった。

今さっきの男のように撃っても平気で突っ込んでくるようなのは、さすがにそういないようだ。とは言え、

「行こう、留まっていたら殺られる!」足立が叫んだ。「走り抜けるんだ。それしかない!」

「わかった!」叫び返した。それから宇都宮に、「いいな!」

「はい!」

三人で走り出した。〈ガントレット〉の中に。