敵中横断二九六千光年3 スタンレーの魔女
線上の敵を討て
「〈線〉で突き止められただと?」
バラノドン隊の隊長は、基地司令部からの通信に応え、キャノピー窓の向こうを見やった。敵戦闘機隊は全機でひとつの編隊を組み、まっすぐにひとつの方向を目指しているらしいのがわかる。
その先にあるのは、なるほど――。
『そうだ!』と基地の通信士。『敵はその線上にビーム砲台があると知ってる! 見つかったらおしまいだ! 何がなんでも全機墜とせ!』
「了解」
と言った。言ったが、しかし、そんなことが可能なのか?
『隊長!』と、部下が通信を送ってきた。『しかしやつらは、もうすぐにも――』
「黙れ!」
と言った。しかし、そうだとわかっていた。敵の戦闘機どもは既に、砲台のある場所までもうすぐそこに迫っている。〈線〉まで突き止められたと言うなら、後はそこまで辿り着くだけの話ではないか。とても三十何機も全部、それまでに墜とすなど――。
できない。それはわかっている。しかし、と思った。
「いいか、また隊長機だ! 敵のアタマをまた狙う!」
敵の先頭の機を見据えた。さっき一杯喰わせてくれた銀色のやつの一番機。あれを墜とせさえすれば、まだこちらに勝機はある。
「突撃だ! やつらはまた他の機が護りを掛けてくるだろうが、気をつければいいだけのことだ! こちらも同じ手は喰わん!」
「はい!」
と部下達が応えてきた。編隊が組まれる。八十機で再びあの一番機を襲うのだ。
叫んだ。「行くぞ!」
作品名:敵中横断二九六千光年3 スタンレーの魔女 作家名:島田信之