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敵中横断二九六千光年3 スタンレーの魔女

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気力の勝負



「構うな! あれだ! あれだけを討て!」

バラノドン隊の隊長は、通信で部下の全機に向けて叫んだ。レーダーの画面には、〈目標〉としてコンテナで囲んだ敵の指標がある。銀色の戦闘機の二番機だ。

「絶対に上に行かすな! 上昇されたらおしまいだぞ!」

そうだ。あいつは、この〈バラノドン〉や、他の黒と黄のやつらと違う。速度重視の一撃離脱攻撃型戦闘機なのは、さっきに飛んだもう一機の動きを見てもよくわかる。あいつに昇って行かれてしまうと、〈バラノドン〉で追いつくのは不可能だ。

そうなったら、砲台は……間違いない。今度こそ殺られる。だからピッタリと後ろに着いて、あいつが上に行こうとしたらすぐさまビームを浴びせるのだ。それであいつは、すぐに頭を引っ込めざるを得なくなる。

それでも上に行こうとすれば、間違いなく下から尻を突いてやれることだろう。あいつはそれを知っていて、おれを振り切らぬ限り上昇できないと考えている。

凄腕だ。さすが、やつらの隊長の背中を護る務めのやつだ――彼は思った。ただでさえこちらは性能で負けるのだから、おれひとりでは到底こうしてあいつの後ろに張り付くことなどできないだろう。上昇をさせないようにするのだけで精一杯で、追いかけながら照準の輪に収めることがまったくできない。

だが――とも思う。わかる。あいつも、逃げるだけで手一杯のはずだ。できるのならばおれを振り切りサッサと上昇しているはずだ。右に左にロールを打って転がるように宙を舞う。その姿を前に見ながら、しかし美しい戦闘機だな、と言う考えがふと彼の頭をよぎった。あいつにしても、自分が生まれた星を護る一心なのだろうが――。

させるものか。これは殺るか殺られるかの勝負なのだ。ここでお前を、お前だけを墜とせばいい。そうとわかったからには決して……。

逃がしはしない。彼は撃った。ビームガンの曳光が敵に伸びて翼をかすめる。当たれ。なぜ当たらないのだと彼は念じた。

『もうビームのエネルギーが残り少ない』とメーターが告げる。構うものか。一発だ。一発、こいつに喰らわせてやれれば――。

それで終わりだ! 当たれ! 当たれ! 彼は祈った。撃っても、敵はクルクルと翼を振って舞い逃げる。操縦桿を持つ手はしびれ、ブラック・アウトでものが見えなくなってきた。だがそんなものあいつだって同じなはずだ。

こうなるともう気力の勝負だ。殺してやる。殺してやる。絶対に殺してやるぞと彼は思った。誰かこいつの前を塞げ! 一瞬、ほんの一瞬でいいのだ。おれがこいつをほんの一瞬、照準に捉えるだけの時間だけ、動きを止めてくれる者がいさえすれば――。

そう思った。しかし周囲は乱戦模様となっていた。戦闘機とミサイルとビームの光が飛び交っている。こちらがあの〈二番機〉を墜とすために必死なように、敵の方も墜とさせまいと必死になって掛かってくるのだ。

ちくしょう、と彼は思った。それならそれで、あの砲台は撃てないのか! カガミのビームで〈ヤマト〉を撃ってくれないのか! たとえおれがこのままあいつを墜とせなくても、ビーム砲が〈ヤマト〉を殺ればそれでこちらの勝ちなのだろうに!