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敵中横断二九六千光年3 スタンレーの魔女

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サッチ・ウィーブ



「な……」と古代は言った。「なんだよ、今の! どうなってんだ?」

〈魔女〉にめがけてミサイルを射ち、飛んでいったと思うと途中で爆発した。え?と思ったが〈ゼロ〉はまだ急降下中で地面に激突寸前の状況。

ギリギリで引き起こしをかけて上昇したが、頭の中はなんだなんだと言う思いで一杯だった。確かに狙い違わずの一撃だったはずなのに……。

『どうやら何かの迎撃装置に阻まれてしまったようです』山本の声が通信で入ってきた。『砲台の周りに反重力発生装置のようなものを確認しました。たぶんこいつでどうにかして……』

「ミサイルを止めた?」

古代は言った。送られてきたデータを見ると、なるほどそれまで気づかなかったイソギンチャクみたいなものがビーム砲台の周りにあって、古代がミサイルを射った瞬間、イソギンチャクのように動いて何か放ったらしいのがわかる。

わかるが、しかし、

「そんな。ちょ、ちょっと待てよ。じゃあ一体……」

どうすりゃいいんだ? 古代は思った。核ミサイルは〈ゼロ〉と〈タイガー〉全機にそれぞれ一基ずつ。今、自分のは射っちまった。あの砲台を狙うのは〈タイガー〉では難しいから〈ゼロ〉でやる。となれば後はもう山本の〈アルファー・ツー〉しかないわけだが、しかしこんな伏兵があるとは。

そんな。そんな。なんでだよ――ただその思いで一杯で、何も考えられなかった。

そこに加藤の声がした。

『山本! 気をつけろ、上だ! お前を狙っているぞ!』

「え?」

と言った。山本の〈ゼロ〉がクルクルと回転ドアのようにロールして、あさっての方角へと逃げていく。

そこへ、来た。ミサイルの雨が。山本が一瞬前にいたところに何十と言う数のミサイルが降り注ぎ、次いでカブトガニのような敵ゴンズイ戦闘機の群れがワラワラと降ってくる。

今までならばこの者達は、そうしてダイブを掛けた後、すぐに上へと上昇していったのだった。だが、今度は違っていた。全機が翼をひるがえして山本が逃げた方へ行く。

『野郎!』

と加藤の声がする。けれども何十と言う敵は、他の者には一切目もくれなかった。いくつかの隊に分かれて山本を、山本だけを追いかける。そして山本の行く手にも、待ち構えて襲おうとする。

ひとつの隊は山本の上へ、ひとつは右へ、ひとつは左へとまわり込み、山本がどこに行こうと前後からビーム弾幕で挟もうとするのだ。

それはかつて地球で〈零〉と言う戦闘機に、一対一では勝てない敵が編み出した〈サッチ・ウィーブ〉と言う戦法に似ていた。それを何十もの数で、山本一機に対してやるのだ。

古代は慄然とした。そうだ。当たり前じゃないか――〈一番手〉をおれがやってもう核ミサイルを失くしたのだから、〈次は二番機〉と敵は気づく。〈タイガー〉では砲台を攻撃するのは難しい。だから〈ゼロ〉の役目になるのは見ればすぐにわかること。

だからここは山本を殺りさえすればよいとなる。後は〈魔女〉が〈ヤマト〉を撃ってこの戦いは終わりとなるのだ。

「山本!」

と古代は叫んだ。山本は宙をグルグルとロールを打って逃げ惑っていた。それはついこの前にタイタンで古代がやった飛び方だった。そうしていれば敵にとっては狙いにくく、タマはなかなか当たらずに済むが、いずれGに耐えられずヘロヘロになったところを墜とされる。

タイタンではこれが十五対一だった。敵はヒヨっ子の集まりで、腕の立つ者はなさそうだった。けれども今、山本に群がる数はあの数倍。そして完全な精鋭部隊だ。

ああ、ダメだ。これではとても! そう古代が思ったとき、〈タイガー〉の四機編隊がひとつ、敵の中に突っ込んでいった。山本を狙う隊めがけてミサイルを放つ。次いで、別の方角からも、別の〈タイガー〉四機編隊。

さらに、また別の方角からも。『山本を護れ!』そう叫ぶ者達が、ブラヴォー、チャーリー、デルタと分かれてそれぞれに標的を決めて斬り込みを掛ける。

それは乱戦の始まりだった。山本を狙う敵と護る味方。合わせて百機ばかりが数機ずつ分かれて飛び交う乱戦がいま始まったのだ。