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同調率99%の少女(8) - 鎮守府Aの物語

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「ごめんなさい。あたし、無理です!」


その一言だけ言って、流留は那美恵と三千花をかき分けて、脱兎のごとく視聴覚室を駆け出て行った。
「あ! ちょ! 内田さん!?」
 那美恵の呼びかけも意味をなさず、声はその場に響いただけだった。視聴覚室にはあっけにとられた那美恵達3人、そして廊下には早足で出てきた流留に呆然とする和子が残る。
「せっかく艦娘になれる人見つけたのになぁ〜」
 後頭部を掻きながら流留がいなくなった視聴覚室の区画で宙を見つめる那美恵。驚いた和子も艤装のある区画に入ってくる。
「どうかなさったんですか?内田さん走って出て行っちゃいましたけど?」
 異変を感じたのか、和子がその場にいた3人に訊いてみた。
「うん。内田さん、同調率合格したんだけどね、やりたくないって出て行っちゃったの……。」と那美恵。
「だから言ったでしょ。なみえだけ理想に燃えてやる気みなぎってたって誰もついていけないって。内田さんの言い分わかるわよ。なみえはさ、やっぱ生徒会長としての存在が強すぎるのよ。実際に誘われたらあれが普通の反応よ。」
 と三千花は親友に厳しく諭す。
「え〜……それじゃあ、誰誘ってもあたしにはついてこないってこと? うー……」
「そ、そこまでは言わないけど、もっと違う切り口からの誘い方にしないと。それにさっきのあんた、興奮しすぎて押しすぎだったわよ。ちょっと珍しかったけど。」
 泣きそうな顔になり那美恵は俯いて表情を暗くする。三千花は、親友の那美恵が弱気を見せはじめ本気で凹んでしまったことに焦ったのか、思いやり半分指導半分のフォローをする。が、那美恵の表情は暗く落とされたままだ。


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 二人の側にいた三戸は、会長に言われたとはいえ、自分が進んで流留を誘ってきたこともあり少々責任を感じていた。艦娘になれる素質があったにもかかわらず結果的に流留は断り、せっかく得られるはずだった艦娘仲間を失ったという事実に今まで見せたことのないショックを受けている那美恵のその様は、さすがの三戸も心苦しかった。
 自分が、内田流留と光主那美恵の橋渡しをするのだ。いや、しなければならないと彼の中には強い決意が湧き上がった。

「会長!副会長!俺ちょっと追いかけて内田さんと話してくるっす。任せて下さい!」
 左腕でガッツポーズをして、そばにいる1つ年上の女の子二人を元気づけて三戸は視聴覚室を出ていこうとする。

「ちょ!三戸君!?どうするのよ!?」
 反応して呼び止めたのは三千花だ。那美恵はまだ俯いたままでいる。
「内田さんを誘ったのは俺だし、なんとかしてみますよ!」
「違うよ三戸くん。内田さんを誘おうとしたのはあたし。三戸くんを使ってあたしが誘ったんだよ。だから三戸くんはこれ以上何もしてくれなくていいんだよ?」
 那美恵はうつむいたまま涙声で三戸に言う。三戸はこれはますますヤバイ、なんとかせねばと燃える。
「いや。直接交流あるの俺だけだし、俺がなんとかしなくちゃいけないんっすよ。」

 妙にやる気にも燃えている三戸の姿を見て、那美恵と三千花、和子は少しだけ彼の見方を変えた。やる気に燃えた三戸は3人の声を聞いても今度は足を止めずに視聴覚室を出て流留を追いかけていった。