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同調率99%の少女(8) - 鎮守府Aの物語

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「あ、いたいた。内田さん!」
 思いにふけっていた流留の前に現れたのは、さきほど視聴覚室にいた同じ学年で生徒会書記の三戸だった。少し涙目になっていた自分の顔を見られたくなく、反対側を一瞬向いて目を拭いた後、あっけらかんとした様子で三戸の声に反応した。

「三戸くん。なに?」
「いや、何じゃなくてさ。さっきの艦娘のこと。」
「あぁ……。いきなり飛び出して行ってゴメン。」
「いやいや。すぐに受け入れてじゃあやりましょうってのは無理だとは、さすがの俺でもわかるよ。それにあの会長、自分がやり手すぎるのイマイチわかってないところあるからさ。まぁ、ついていけないってのもわかる。」
 後頭部をポリポリと掻きながら三戸は照れ混じりに流留をフォローする。三戸は流留の隣にやってきたが、少し距離を開けて同じように手すりに体重をかけて寄りかかった。
「でも驚いたっしょ?あんな世界があるっての。」
「……うん。三戸くんからゲームに似たって聞いた時は、正直話半分だったの。ホントにそんなことありうるわけないって思ってたからさ。けど、あれって現実なんだよね?」
「うん。俺も初めて会長以外の艦娘見て、実際にその人達が演習とはいえ戦う姿を見て驚いたもん。本当にこんな出来事がってさ。あ、そうそう。そこの鎮守府にいる艦娘ってさ、中学生もいるんだ。中にアホっぽいけど可愛い子がいてさ〜」
 いきなり訳の分からない方向に話を進めだす三戸を流留はジト目で見る。その視線に気づいた三戸はコホンと咳払いをして話を元に戻す。

「……ともかく。俺らよりも年下の中学生ですら艦娘になって戦えるんだから、きっと内田さんだって大丈夫だと思うんだよね。」
 三戸はそう言って戦いを怖がったと判断した流留を慰める。が、流留の反応は違う。
「ゴメン。そういうことじゃないんだ。実はね、視聴覚室に来る前に……」
 流留は言いかけたがすぐに口をつぐんで止めた。全然関係ない三戸に話すべきことではないし、多分身の上を話されても彼自身困ってしまうだろうとなんとなく気が引けたのだ。頭を振ってセリフをキャンセルする。
「ううん。なんでもない。」
 三戸は?な表情を作って「ふぅん」と言うだけで首をつっこもうとはしなかった。

 これまでの人生で、心の中をさらけ出して話せる人なぞ、従兄弟たち以外に流留にはいなかった。そのため三戸には言えない。三戸を納得させられるだけの弁が足りなかった。
「あたしの中でちょっと整理がつかないから。もうちょっと待って、とだけ生徒会長に伝えておいて。」
「へ? あ、うん。わかった。じゃあ正式な回答は保留ってことだね?オーケー。」
 三戸は流留の言い淀む姿が気になり、深く聞こうとはしないでおいた。流留は三戸からの確認にコクリと頷いて、手を振って空中通路のもう半分を進み、その場を離れた。
 三戸も彼女からの一応の返事を聞けたので、「じゃあね」とだけ彼女の背中越しに伝えて視聴覚室へと戻ることにした。