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同調率99%の少女(8) - 鎮守府Aの物語

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「と言っても、いきなり川内の艤装を試してもらうのはみなさん何があるかわからないし怖いと思うので、今日はあたしが川内の艤装を付けて、艦娘とはどういうことができるのかを、身を持ってみなさんにお見せしたいと思います。それでは中村さん、例のものを。」
 那美恵は三千花を近寄らせ鉄の板を持ってこさせる。同調した後に使う目的だ。三千花は両手で持ってくるが、普通の女子高生にはつらい重さのため、フラフラヨタヨタと足元おぼつかずにようやくといった様子で那美恵の側に到着した。

「あたしはいまこうして川内の艤装を身につけていますが、まだ同調していないので、あたしはただのか弱い少女です。ですが、同調すると、とてもすごいことができます。」
 しんどそうに鉄の板を持ってきた三千花を下がらせ、自身は同調を開始する。

「では同調始めます。特に見た目は変わらないのであたしを視姦しても意味無いですよ〜」
 ふざけたあと、真顔になって精神を落ち着けて那美恵は同調を完了させる。その直後、那美恵は艦娘川内になった。


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「……はい。私は今、川内という艦娘になりました。」
 プールサイドからはえぇ〜だのわかんない〜だの声が聞こえる。すでに想定済みの反応なので、那美恵はすぐにわかりやすい実例をする。
「では同調するとどうなるのか、まずはこの鉄の板でご覧頂きたいと思いま〜す。」

 そう言って那美恵は三千花がやっとの思いで持ってきた鉄の板を、ひょいと軽々片手で持ち上げた。その瞬間、プールサイドの見学者の間でおぉ〜!という歓声が一気に響き渡る。そばでひときわ大きな歓声で驚いているのは艦娘部顧問の阿賀奈だ。三千花も水の上を進む以外の、直接的に艦娘化の効果がわかる行為をする那美恵の姿を見たので驚きを隠せないでいる。
「この鉄の板、普通の女子高生な中村さんにはひじょ〜に重かったのですが、川内になったあたしにとっては、ベニヤ板か発泡スチロールのように軽く感じます。」
 その後見学者から鉄の板を持ってもらう人を募り、実際にその鉄の板が重いものであることを証明する。

「このように、艦娘になれると、力がひじょ〜にアップします。今のあたしはボクシングや格闘技のチャンピオンよりもきっと強いかなぁって思います。ま、さすがにそこまでは試したことないのでわかりませんけど。ただ日常生活に限ったら、相当持て余すくらいのパワーアップをします。危険なので、艦娘は原則として海の上で深海凄艦と戦う以外のことはしません。それでは艦娘とっておきの、水上航行をしたいと思います。」

 艦娘になったあとの注意事項を含めつつ説明を続け、デモンストレーションのメインに移るために、那美恵はプールの水面に足を乗せる。足を漬けるのとは明らかに違う波紋が波立つ。片足が浮くのを確認した後、もう片足を水面に乗せる。これで那美恵の両足はプールに浮いた。
 那美恵自身、もしかすると鎮守府内の水路やプール、もしくは海でしか浮かばない仕組みだったらどうしようと内心不安の気持ちがあったが、なんなく浮くことができたので密かにホッと胸を撫で下ろす。


 見学者は那美恵がプールに浮く姿を見た瞬間、さきほどの鉄の板の時よりも大きな歓声を挙げた。明らかに普通の人ではできない行為をやってのけているからだ。

「はい。浮きました。こうして水の上で船のように浮くことが、艦娘にとって基本中の基本なんですよ〜。それではこのプールを移動してみたいと思います。」
 そう言って那美恵はプールの端から中央に進む。汚れが浮いたプールの水に波が立ち、汚れがかき分けられる。それはプールサイドから見る人たちでも、水の上を何か異質な存在が進んでいることがはっきりわかる現象だった。プール中央に到達した那美恵は、2〜3言雑談まじりの解説をしながら、今度はプールの上を縦横無尽に移動し始めた。のろのろゆっくり進むときもあれば、ダッシュするかのように急速にスピードを上げてプールの端から端、50mを移動したりと。

 そしてひと通りの水上でのパフォーマンスが終わり、元いたプールサイドに戻って上がる頃には、見学者の歓声は拍手を伴って大盛況も大盛況。盛り上がりも最高潮に達していた。
 そして那美恵は同調を切断し、艦娘川内から人間那美恵に戻った。

「ふぅ……。とまあ、艦娘になるとこのように水上を移動し、深海凄艦と戦います。実際は専用の銃や腰に付いている魚雷を使って、遠距離から攻撃するので、本当に戦うためには多少訓練は必要です。」

 一説明終えて那美恵は阿賀奈と三千花を呼び寄せて艤装を外す。そののち艤装を一旦まとめて側に置き、見学者との質疑応答を設ける。

 見学者からは深海凄艦と戦うのは怖くないのか、艦娘になったらどのくらい出勤しないといけないのか、給料は出るのかなど、提督からある程度聞いておいた内容で答えられる範囲の質問が出てきたので、那美恵はそれらに的確に答えていく。
 そして川内の艤装で同調を試してみたい人を募る。那美恵はもちろんのこと、三千花も心臓がキュッと詰まる思いで見学者の挙手を見守る。
 すると、十数人いるうちの、6人が手を挙げて、同調を試してみたいという意思表示をしてきた。中には那美恵と同じクラスのクラスメートもいる。男子も2人おり、様々な反応を見せている。

 那美恵と三千花は明石から聞いておいた通り、川内型の艤装のコアとなる腰の背中側に装着する箱状の部位を生徒の腰にベルトとともに当てる。そして三千花はタブレットに入れておいた艤装の同調チェック用のアプリを起動し、川内の艤装を認証させて、電源をつけた。
 那美恵は装着する生徒それぞれに初めて同調する際のコツと注意事項を伝え、万が一同調成功しても驚かないように気をつけさせた。

 一人目の女子生徒、同調率24.53%、不合格。
 二人目の女子生徒、同調率54.10%、不合格。
 三人目の男子生徒、同調率41.66%、不合格。
 四人目の女子生徒、同調率73.91%、不合格。
 五人目の男子生徒、同調率 9.15%、不合格。
 六人目の女子生徒、同調率64.64%、不合格。

 このような結果となった。一人だけかなりいい線いった73%台の数値を叩き出した女子生徒がいた。その子は那美恵のクラスメートだったが、合格は81%以上なので当然不合格になってしまった。本人はこれで艦娘になれるの!?と興奮気味だったが、合格範囲のパーセンテージを伝えると、がっかりしておとなしくプールサイドの端に戻っていった。