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同調率99%の少女(8) - 鎮守府Aの物語

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 プールの水が引いたので、8人はプール内に降り立って掃除をし始めた。三千花が水をまくところに那美恵と和子が、三戸が水をまくところに流留たち4人が集まって作業をする。その2つのグループは端と端にいるので距離がある。
 プール掃除を進めながら、三千花と那美恵は和子に、さきほどの態度の理由を聞き出し始める。
「ねぇ毛内さん。さっき内田さんが来た時にあなたビクついてたけど、何かあったの?」
「そーだ。そーそー。どうしたの?」
 三千花と那美恵が尋ねると、和子はやや俯きになり下唇を上唇でグッと抑えて口を真一文字につぐんだ後、口をモゴモゴさせ、チラチラっと流留の方を遠めで見て確認してからゆっくりと口を開いた。
「実は、あの内田さん。1年の女子の間ではあまり評判よくないんです。」
「「評判?」」
 那美恵と三千花がハモって聞き返す。

「はい。私は違うクラスなのであくまで噂程度でしか知らないんですけど、よく男子と一緒にいるそうなんです。それだけなら別にいいとは思うんですけど、彼女と同じクラスの女子の話だと、いろんな男子とよくつるんで、周りに男子がいない時間はないってくらいだそうです。どうも色目使ってるからだの、男遊びするその……不良だからだの思われてるそうで、本当のところはわからないですけど、とにかく私達他の女子からすると、印象悪い子、怖い子、評判最悪な子なんです。」

 つまりは色恋沙汰で素行が悪い子なのか、と那美恵と三千花は和子の話を聞いて真っ先に思った。さらに和子から話を聞く。
「評判悪くしてる例の一つで、ある女子が密かに思いを寄せてる男子がいるんですが、その男子も例に漏れず内田さんと結構仲良くしちゃう人で、内田さんも見せつけるようにその女子の前でイチャイチャするんです。それを見てたその女子の友達が激怒しちゃって……。」
 まだ恋愛経験のない那美恵も三千花も恋愛が絡む話となると年頃の女の子らしく、和子の話に興味津々で聞き入る。
「え〜、内田さんってその男子と付き合ってるの?」
 那美恵が尋ねると、和子は頭を横に振る。
「いえ。付き合ってるとかそういうわけではないみたいです。ただその子の友達からの話だと、その子の気持ちをどこかで知って、それでもてあそぶようにその男子と仲良くして見せつけてるんだって。内田さんの取り巻きの男子の中にその男子が入るようになったのって、その子が友達に気持ちを打ち明けて相談した後くらいから急になんだそうです。あまりにもタイミングがよすぎるって、勘ぐってるみたいなんだそうです。」

 和子でさえ、又聞きでしかない内田流留の恋愛与太話。那美恵は色々妄想しているようでふんふんと聞いているが、三千花は仔細を聞いて一蹴する。
「なにそれ。噂が噂を呼ぶじゃないけど、どこにも確かな要素ないじゃない。くっだらない。」
「でも直接内田さんと関わりがない私みたいな違うクラスの女子は、聞こえてくるそういう話だけでも近寄りたくない、関わりたくない、そういう印象の人なんです。」
 和子に対してではなく、その話自体に対して嫌悪感を三千花は湧き上がらせる。彼女の握るホースの先からは、勢いを増した水流が2〜3m先のプールの底面にビシャビシャと当たっている。
「どういうつもりで男子とつるんでるのか知らないけどさ、誤解を招くことようなことしてる内田さんが悪い。けど、きちんと確認せずに陰で噂するのもどうかと思うわ。それに毛内さんもそんな噂なんかでビクついてたらダメよ?」
「は、はい。それはわかってるんですけど……。」
「まーまー。みっちゃんそーいううわさ話や不真面目な関係やごちゃごちゃしたこと嫌いだもんねぇ。」

 那美恵の問いかけに言葉を出さずに三千花は微妙な頷きをし、親友に対して口を開いた。
「なみえだっておんなじようなもんでしょ。純愛至上主義なお調子者さん」
「ぶー!みっちゃんいじわる〜」
 デッキブラシで三千花を突こうとする那美恵にすかさずホースの水で反撃する三千花。
「きゃ!やったなぁ〜」


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 和子から話を聞いてあれやこれや雑談しつつふざけつつも掃除を続ける3人。もちろん離れたところにいる三戸と流留たちには聞こえないように声のボリュームを下げる配慮をしている。

「ねぇなみえ。私さっき内田さんを艦娘に誘わないのって聞いたけど、やっぱ前言撤回。あの子はやめなさい。」
「およ?なんで?」
 那美恵と和子に対し背中を向け、二人とは違う方向にホースで水を巻き始める。二人に顔を見せずにいる三千花の眉間には皺が寄っている。そしてその理由を口にした。
「真意がどうであれ、ああいう良くない噂が立つ子は側にいさせるべきじゃないよ。」
「みっちゃん……。」
「私はなみえがああいう子とつるむのは……よくないと思う。なみえのためにならない。」

 三千花の背後でデッキブラシを持った那美恵と和子が黙って立っている。手の動きは止まっていて、掃除という行為をなしていない。
「みっちゃんさ、今自分が矛盾してるのわかってる?」
 那美恵の一言にくるりと体の向きを変えて振り向いた三千花。那美恵は口だけを笑いを含んだ、見透かしたような表情だ。
「今のみっちゃんはさ、みっちゃんが嫌ううわさ話で判断する人、そのものだよ。それになんであたしが内田さんを誘う前提なの?」
「!! いや……私は、あなたからそういう素振りを感じられたから……。」
「だから、なぁに?」

 那美恵から心を突くような一言。三千花は親友のその見透かしたような問いかけに怯んだ。その影響で右手に持ったホースの水はゆるやかな水流になっている。しばらくの沈黙のあと、三千花は照れ混じりに口を開いて白状した。

「確かに、そうね。私もあの子のうわさ話だけで判断しちゃってる。けどそれを承知で白状するわ。もし内田さんが艦娘部に入ったら、きっと取り巻きの男子も入ろうとするかもしれないし、そうなるとなみえ、あなたの目的が……」
 うつむき加減で言葉が途中で途切れる三千花。口を挟まずに三千花の次の言葉を待つ那美恵と和子。
「その……さ。あんたは孤立して、目的を果たせなくなって、内田さんと大勢の男子のためだけの部活になって、その……万が一にでもなみえが危ない目にあったらどうしようって……思ったのよ。」
 言い終わった三千花の視線は那美恵に向かいまっすぐ差している。2〜3秒の沈黙のあと、それを那美恵の笑い声が打ち破った。

「プッ!アハハ〜!みっちゃん!考えすぎぃ! いくらなんでも妄想広げ過ぎだよ〜。フフッ」
 その瞬間三千花は顔を赤らめて怒りながら那美恵に詰め寄る。
「ちょ!笑うことないじゃない!私は万が一のことも考えて心配してあげるのに!!」
「会長、さすがに笑うのはどうかと……」
 せっかく心配してくれた三千花のことを笑う那美恵に対しさすがに気まずく感じた和子は三千花の方を心配げにしてフォローに回った。