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同調率99%の少女(8) - 鎮守府Aの物語

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「はーいはい。みっちゃんは優しいね〜そーいう心配してくれるところ、あたし好きだなぁ〜」
「勝手に言ってれば?ふん。」
 真面目に心配していた思いを笑われて三千花はプイッとソッポを向く。
「ゴメンねみっちゃん。心配してくれてありがと。この感謝はホントだよ?」
「会長も副会長も、与太話に影響されて喧嘩しないでください。」
「うん。わかってるよわこちゃん。みっちゃんが本気で怒ってたらあたしも手つけられないくらいだから。ま、でもみっちゃんには悪いけど、わこちゃんから話聞いて、内田さんのことちょっと興味湧いてきたなぁ。」

 そう那美恵が言うと、三千花は那美恵をキッと睨みつけた。
「だから怒んないでってば、みっちゃん。あたしもみっちゃんと同じくさ、内田さんをうわさ話だけであれこれ判断したくないんだって。もーちょっと彼女の情報手に入れてから艦娘部に勧誘するかどうかは決めるよ。」
「……なんで内田さんなの?うちら2年だし、ほとんど全く接点ないでしょ?なんでいきなり気になり始めてるのよ?」
 那美恵は腕を組んで冗談半分本気半分で悩む仕草をしてう〜んと唸ってから答えた。
「なんかね、さっき話しかけられたとき、ビビッと来たっていうのかな? 不思議な感じ。……とかなんとかかっこいいこと言っちゃうけど本音はね、せっかく今日会った新しい人だから一人でも多く艦娘のこと見てもらいたいってだけなんだけどね。全然深い意味ないよ。」

 三千花は那美恵の言い方に含みがあるのに気づいた。ただ那美恵が良く含ませて語るのをよく知る三千花はそれを頭の片隅に置いておくことにし、一言言うに留める。
「もーいいわ。なみえが誰勧誘しようが私がとやかく言う権利ないし。怒ってるわけじゃないけど、なみえの好きにやってみればいいよ。私はそれを見守るから。」
 事実、三千花の怒りはすでに収まっていた。親友が望んで作った部だから勧誘の方針に口出しはしない、本人の好きなようにやらせてみる、それを陰ながら支えていくことが自分の役目だと再認識している。

「わこちゃん、あとで内田さんのお話、知ってる限りでいいから教えてね。とりあえずうわさ話であってもあたしは知っておきたいんだ。お願いね。」
「はぁ。私が知ってることであれば。でもだったら三戸くんから聞いたほうがいいのでは?あの様子見ると、三戸くんも内田さんの取り巻きになってるっぽいですし。」
「まーそれはあるかも。じゃあ、あとで聞いてみよっと。」
 和子の返しを聞いた那美恵はグッとガッツポーズを作って相槌を打った。
「それはいいけどさ、掃除再開しましょうよ。私たちほとんど手止まってるし。」
 三千花の指摘に那美恵と和子はギクリと体をこわばらせる。掃除のカタチをすでになしていないこの現状はさすがにまずい。ブラシを動かし始めた三人あふと三戸たちの方を見ると、水を掛け合ったりデッキブラシでカチャカチャ遊んでいる光景がそこにあった。つまり、8人ともプール掃除なぞすでに放棄状態である。


--

 その後掃除のスピードアップを図った那美恵はプールの前方を終わらせ、長いホースを持つ三戸をプール中央に徐々に進ませてその周りをブラシがけする。
 中央、後方と一通りブラシがけし終わり、プールの汚れ・ゴミは左右の端に集められた。それらを後方から前方に向けて一気に掻いて前方の一箇所にかき集める。
 そこまでするのに30〜40分かかっていた。

「ふぃ〜。汚れとれたしゴミ完了〜。さ、三戸くん。このゴミ上げて。」
「えぇ〜俺がするんっすか〜」
「頑張れ男子!」
 那美恵が発破をかけると、流留もそのノリにノッて三戸や他の男子に指図する。
「あたしたちにドロッとした汚いの触らせるつもり〜? さ、○○君たちもはよ!」

 促された三戸以外の男子生徒もしぶしぶながらもゴミまとめとプールサイドへ揚げるのに取り掛かり始める。
 その間に那美恵たちはプールサイドへ上がり、ゴミ捨て用のビニール袋を持ってきて、三千花と和子に持たせてそこに男子がまとめあげたゴミを入れさせた。

「みんな、お疲れ様〜。内田さんたちもわざわざありがとうね!あなたたち学校にまだ残ってたんだ?」
「○○君の部活終わるの待ってたんです。って言っても一度学校出てお昼みんなで食べてた時に三戸君から連絡もらったもんで。○○君の部活もまだかかりそうだったらちょうどいいねってことで。だからぜーんぜん問題ないですよ。」
 カラッとした素直なしゃべり方の流留の言に那美恵はなるほど、と頷く。

「何かお礼したいな。何かごきぼーはある?」
「いいですってそんなの。欲言えばこれから遊ぶお金ほしいな〜とか。もちろん冗談ですけど。」
 流留たちは早く遊びに行きたいのか、那美恵のお礼の提案を本当に断り、足を洗い流したあと早々にプールから出ていった。なお、三戸もついていこうとしたが、展示の片付けもほどほどにプール掃除に来てしまっていたため、 那美恵たちに首根っこを掴まれるかのごとく止められた。
 視聴覚室に戻った4人は展示の片付けの残りを進めた。20分くらいかかった後、展示もようやく片付いていつもどおりの視聴覚室が眼前に広がる。4人は荷物を置いてある生徒会室に行きやっと一息ついた。

「さて、じゃあ俺みんな待たせてるんで、帰るっす。じゃあお先に失礼しま〜す。」
 と言って素早く出ていこうとする三戸を那美恵は再び呼び止めた。
「ちょっと待って三戸くん!聞きたいことあるの。内田さんのことなんだけど、来週でいいから彼女のこと三戸くんたち男子の視点からいろいろ教えて欲しいの。いいかな?」
 那美恵の突然のお願いに戸惑う三戸だが、特に断る理由もなかった彼は一言で了承し、生徒会室から出て帰っていった。

「これで下準備おっけーかな。」
「ねぇなみえ。ホントに内田さん誘うの……?」
 那美恵の言葉に反応した三千花はさきほどの心配を思い出して確認した。
「心配しないでって。とりあえず情報収集だよ。あとはまぁ、流れ次第かな。」
 那美恵は三千花の気遣いを十分わかっていたが、ピンとキたもの・人に対してはどうしても興味を持ちたくなる性分なのだ。だが今はまだ、親友への配慮の気持ちのほうが優る。
 三千花は親友の物言いにため息をつくしかなかった。

「さーて、そろそろ帰ろ? 今日はわこちゃんも一緒に帰れる?」
 気持ちを切り替えて那美恵は帰り支度と帰り道の提案をする。三千花も親友に合わせて気持ちを切り替えて頷いた。
「はい。今日はご一緒できます。」
「よーし。じゃあ三人で帰り甘いもの食べてこー!」
 和子も那美恵の提案を承諾し、すべての用事を済ませた3人は15時に近くなった時間にようやく学校を出ることが出来た。3人ともが持った共通の思いは、長い土曜日だったという感想であった。