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Quantum

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2.

 ―――俺の青春おまえは奪ったんだから、おまえの青春俺が貰ってもいいよな?

 冗談とも本気ともつかぬいい笑顔で提示された条件。
 なんだそれは一体?と尋ねれば、「妖精にはなりたくないし、ユニコーンに懐かれたくもない」と。ようするにあれだ……童貞卒業したいのだということで、サガはもう乾いた笑いを浮かべるしかなかったが。その程度で気が済むならばと不承不承、アイオロス好みの相手を見繕って準備した。偽教皇時代に体得した術を用いてアイオロスのご希望通り、すぐ欲を満たせる状態にして、だ。

 しかしそれで終わらないところが、アイオロスがアイオロスたる所以だ。そして大抵の男がそうであるように一度目覚めたアイオロスの性もまた貪欲だった。
 以降アイオロスは年頃の女から熟女まで次々に手を出した。そこで必ず、サガに前準備をさせるのだ。サガは淡々と甘い囁きを唇に乗せて、充分に熱く濡れた瞳でサガを求める健気な女たちの手をそっと払い、アイオロスに渡す――そんな爛れた事を繰り返した。

 女だけではなく、男にすら手を出し始めるのにそれほど時間は要しなかったアイオロス。
呆れるほどの絶倫っぷりには、ほとほと参っていたが、「贖うのだろう?」と云われれば、否応なしにアイオロスが気の済むよう『贄』を差し出せねばなるまい。

 そんなことを密やかに続けていくうちに思いの外、精神的に負担となっていたのだろう。いつしかサガの身体は『変調』を来していたけれども、別段日常生活において困ることはなかったし、アイオロスの青春のための施しの際にはむしろ、その状態の方がかえって都合がよかった。

 気まぐれに求められた『参加』に「悪いが役立たずだ」と云えば、「嘘、マジか?」と驚愕と憐憫の眼差しで一点凝視するアイオロス。結果、検証のために最後まで視姦役をさせられた時はなんの拷問だと恨めしく思ったが、検証するまでもなく、大人しいまま沈黙を貫き通していた不肖の息子。しめやかに悼むサガを他所に何故だかアイオロスの変な情熱に火を点けたらしい。

 それから事のたびに『参加』させようとするアイオロスに何度「私の不肖の息子は死んだ」と説明しても傍迷惑なやる気を起こしてくれるものだから困ったものだ。他の誰も困らないのだから、このまま永眠させてやってくれ、頼むから。そんなサガの願いも一刀両断である。

 サガがアイオロスのストライクゾーンに反応しないからといって、天国に近いご老人方や就学前の幼児までも呼びつけるのは色んな意味で拙いから本当にやめて欲しい。

「―――で、どうするよ。サガ?」
「ん?ああ……そうだな。ここはおまえに先行して貰いたい。それから私が――」

 段取りを説明しながら、きっとアイオロスと二人なら何の問題もなく任務を遂行し、あっという間に聖域に戻ることができるだろうとサガは思いつつ、その後の夜遊びが厄介なのだと小さな嘆息を吐いたのだった。




作品名:Quantum 作家名:千珠