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しょうきち
しょうきち
novelistID. 58099
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冒険の書をあなたに

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 翌朝、ポピーのつんざくような悲鳴で三人が飛び起きた。
「やだああああああああ!! 寝ちゃったあああああ!!」
 ティミーが眠そうに目を擦りながらポピーのほうを睨む。
「ポピー……なんだよ、いきなり叫んでー……」
 睨まれたポピーはもうそれどころの騒ぎではない様子で、頭を抱え込んでぐすぐすと泣き始めた。
「せ、せっかくルヴァ様に読み聞かせしてもらってたのに、途中までしか覚えてないーっ! うわぁぁん!」
 あふー、と大きな欠伸をして、隣の寝台からアンジェリークが声をかけた。
「んー……おはよ、ポピーちゃん……。わたしも途中で寝ちゃったわぁ」
 フードをかぶったままのルヴァものっそりと起き上がり、ごしごしと目を擦った────子供たちの前で寝ぼけて痴態を晒していなくて良かった、とほっとしながら。
「おはようございます、皆さん。今日もいいお天気ですねえ……ってポピー? そんなに泣いて、一体どうしたんですかー」
 すっかりしょげかえったポピーがルヴァのほうを向き、寝台の上に正座で突っ伏した。
「ルヴァ様が読み聞かせして下さってたのに、わたし、寝ちゃいました……ごめんなさいいいっ!」
「ああそんな、落ち込まなくてもいいんですよー。本ならまたいつでも読んであげますからねー。さあ、起きたなら顔を洗って仕度をしましょうね」
 はーい、とティミーが元気良く顔を洗いに行った。
 ポピーは濡れた睫毛をぱちぱち瞬かせて、ルヴァのほうをじっと見ていた。
「今度は最後までちゃんと聞きますから、またご本読んで下さい。ルヴァ様のお声、とっても素敵でした……!」
 その言葉へにこりと微笑みつつ、ポピーの頭をぽんぽんと撫でた。
「ありがとう。私も楽しみにしていますよー」
 失礼します、とポピーが一礼をして扉の向こうへ駆けて行った。

「さて……私たちも仕度を整えなくてはいけませんねー」
 アンジェリークがそうね、と言った矢先に夜着を脱ぎかけて、はたとその手を止めルヴァを見た。
 彼はにこにこといつも通りの表情でこちらを見ていた。
「……ルヴァ」
「はい、なんでしょう」
 更ににこにこと小首を傾げられ、少し狼狽えるアンジェリーク。
「あの……あっち向いてて」
「あーどうぞ私のことはお気になさらず。そのまま続けて」
 顎に手を当ててじいっと観察モードになっているルヴァの顔はとても楽しそうだ。
「いーからあっち向いててってば」
「えええっ、なんでですかー」
「なんでって、着替えるからよ! 絶対わざとすっとぼけてるでしょ、もう!」
「別に見たっていいじゃありませんか、もう全部見ちゃってるんですし。それにあなたの曲線はとても綺麗でっ……」
 ばふっという音と共にルヴァの言葉はそこで途切れた。顔面に枕が飛んできたためである。
「あ、あ、朝っぱらから恥ずかしいこと言わないで! えっち!」
 顔面にヒットした枕を寝台へ投げ戻しながら、ルヴァがくすりと口の端を上げた。
「……おや、私の奥さんは何か意識していらっしゃるようですねー。いいですか、『えっち』というのはですね」
 ひょいとアンジェリークの足が宙に浮き、視界には天井が映った。ルヴァが軽く足払いをかけたのだ。
 寝台の上へと投げ出されたアンジェリークの夜着の中へルヴァの手が進入し、滑らかな肌の上を滑った。
 アンジェリークがびくりと身を震わせる姿に満足気に微笑むルヴァ。
「……こういうことですよ。分かりましたか?」
「わ、分かりましたけどっ……」
「けど、なんです?」
 真っ赤になってひたすら狼狽えるアンジェリークの肩を押さえつけて、彼女の宝石のような瞳をじっと覗き込む。
 この少し潤んだ瞳がルヴァの中の雄を堪らなく煽るのだと、彼女は気付いているのだろうか。
「もーっ、なんでこんなえっちな人になっちゃったんですか!」
「そうですかー? 私自身はあんまり変わった気はしていませんが……あなたが魅力的すぎるせい、なんじゃないですか?」
 どこか他人事のような口調でおどけた後、ルヴァの瞳が揺れた。
「……なんて。本当はね、いつだってあなたに触れていたいんですよ。今はそれが可能ですから、遠慮せずに触れているだけです。聖地に戻ればまた……私たちは女王と守護聖という壁に阻まれてしまうんですから」

 そしてその二人を阻む壁が刻一刻と近付いていることを肌身に感じていながら、どちらも口には出せなかった────この旅がいつまでも終わらなければいいのにと、互いが密かに願っていたからだ。

作品名:冒険の書をあなたに 作家名:しょうきち