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しょうきち
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novelistID. 58099
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冒険の書をあなたに

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 リュカ一家は引き続きマスタードラゴンと話をするというので、二人だけで図書館へと向かった。
 図書館は天空城の中央の棟から東側にあった。
 少し開放的な造りになっているのは皆空を飛ぶからなのだろうか。
 雲の白、空の青、そして竜の瞳の金色で纏められた荘厳な天空城は、どこかにひょっこりとジュリアスがいても違和感がなさそうだ────と考えてくすりと笑い出したアンジェリークに、ルヴァが不思議そうな顔をして訊ねた。
「アンジェ、急に笑ってどうしたんですかー」
「このお城にね、ジュリアスがいても違和感ないなあって思ってたのよ。グランバニアにはルヴァ、ラインハットにはオスカー、テルパドールにはクラヴィスねっ」
「えええっ、テルパドールは私じゃないんですかー。砂漠の星出身なのに」
「そうなんだけどー。アイシス様と並ぶって考えたらクラヴィスがいいなー」
 艶やかな黒髪を持つエキゾチックな美形の二人が並んだらきっと絵になるとアンジェリークは思っていたのだが、ルヴァは少し誤解をしたようだ。
「あの、アイシス女王は確かにお綺麗な方でしたけれどね、ええと、そのー……あなたのほうがずうっと素敵だと思いますよ、アンジェ」
 満悦の表情を隠すことなく、ルヴァはアンジェリークの手を取り頬を緩めた。
「? ……うん、ありがと、ルヴァ」
 なんか嬉しそうだし急に褒めてきたけどなんで? と小首を傾げたアンジェリークだったが、ルヴァの誤解についてはとうとう気付くことはなかった────アンジェリークにヤキモチを妬かれてしまった、という実に幸せな誤解である。

 図書館に入った瞬間、感動に頬を火照らせてふらふらと歩き回るルヴァ。
 彼は書物自体が好きなのは勿論のこと、整然とした書架を見るのもわくわくしてしまうようだ。
 新たな知識との出会いを待つ気持ちは、アンジェリークならばうまく仕上がったケーキの最初の一口にこもる、あの期待のようなものだろうか。
 予想通りにうろうろと視線を彷徨わせているその背を見送りながら、アンジェリークは凄まじく高さのある書架の数々に目をやった。
「うわぁ。ルヴァの私邸と執務室にある本が丸ごと全部納められそうね……」
 高い天井付近までびっしりと埋められた本の数々は圧巻の一言に尽きる。
「ええ、ええ! はー本当に素晴らしいですねー、ああ……私邸の天井をぶち抜いたらこんな書架ができるんでしょうか……」
 はぁ、とため息をつきつつうっとりと書架を見つめている。
「……今なんか凄い言葉が聞こえた気がしたけど、聞かなかったことにするわ……」
 そんなルヴァの様子に、聖地に戻り次第すぐに私邸の改装をしたいと言い出しそうだ────とアンジェリークはこめかみを押さえた。
「それより……わたしたちが帰るための手掛かりを探すんでしょ、ルヴァ。でもこれじゃあどこから手をつけていいのか分からないわね」
「そうですねー、これだけの書物があると探すのも大変ですから、司書の方に伺ってみましょうか」
 ルヴァはそう言って奥で書き物をしていた司書と思しき天空人に声をかけに行き、二言三言話し込むと指し示された書架の方角を見ていた。
 ゆったりとした足取りでアンジェリークのところへ戻ってくると、にこりと口角を上げた。
「いやー、凄いですねぇ。たったあれだけの情報で分かっちゃったみたいですよー。あちらにそれらしい本があるそうなので、取りに行ってみましょう」
 二人は今しがた指し示されていた方向へと歩きながら、広々とした図書館を見渡していた。
「なんて訊いたの?」
「ええとですね、青い表紙に金の箔押しで、星や天体に関係した神話や伝説を扱った本はないか、と訊いてみました」
 仕方がないとは言えその説明は雑すぎやしませんか、とアンジェリークは密かに突っ込みを入れた。
「その情報量でなんで分かっちゃうんだろう……」
「私もそう思いましてね、どうして分かっちゃったんですかーって訊きましたらね……」
 アンジェリークの耳に口を寄せて、真顔で囁く。
「……数日前から何故かその本だけが書架から度々落っこちてきていたんだそうですよ」
 軽くホラーな話になり、アンジェリークがさーっと青褪めた。
「こ、こわっ……!」
「それでマスタードラゴンに異変を伝えたところ、既に私たちの気配を感じ取っておられたので、それと何か関連があるかも知れないと仰ってたんだそうです」

作品名:冒険の書をあなたに 作家名:しょうきち