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しょうきち
しょうきち
novelistID. 58099
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冒険の書をあなたに

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 その頃、ルヴァは聖地へと戻る手掛かりを探して驚異的な速度で本を読み進めていた。
 中には星の始まりや終わりについての話、星座にまつわる神話などが豊富に掲載されており、じっくりと読み込んでみたい衝動に駆られつつ、半分を読み終えた辺りで気になる一文に辿り着いた。

(……遠き彼方より来たる天の御使いは、聖なる歌声にて眩き扉を呼び覚まして帰らん。不思議な力を秘めし民より引き継がれし聖なる歌は、神の息吹となり天つみ空を駆け往かん……)

 その僅かな文章に何かが引っかかる感じがしたルヴァは、ポケットに忍ばせていた手帳にその一節を書き留めた。
 暫く後にポピーがやってきて、本に齧りついているルヴァに声をかけてきた。
「ルヴァ様ー。何か手掛かり見つかりましたか?」
 本から顔を上げて一瞬目を彷徨わせ、それからポピーのほうへと視線を移すルヴァ。
「あぁ、ポピー……ええ、何やらそれらしき文章は見つかりましたよー。ひとまず写しは取りましたから、もう皆さんと合流できると思います」
 既に読み終わっていたのだが、読み落としがないようにもう一度読み始めていたのだ。
「進展あったんですか、良かったですね! あの、お父さんが今から天空城を動かすって言ってたんです。アンジェ様はどこにいらっしゃいますか?」
「うーんと、城内の散策に出かけてしまったんで、どこかにはいると思うんですけどねー。すみません、今どこにいるかは分かりません」
 リュカ殿は神の城すらも掌握しているのかと驚きつつ、本を元の棚に戻した。今度は落ちてこなかった。
「もうご本は読まなくていいんですか? それなら外が見えるところに出ましょう。アンジェ様はたぶんお兄ちゃんが見つけてると思うんで」

 ティミーとアンジェリークは天空城西側の広場へ出てきていた。
「お兄ちゃーん! アンジェ様ぁー!」
 声のした方向へ視線を向けると、東側の扉から出てきて大きく手を振っているルヴァとポピーが見え、二人とも同じように手を振り返した。
 ルヴァは駆け寄るポピーの後ろを歩き、アンジェリークの側へやってきた。
「お待たせしてしまいましたね、アンジェ。これが手掛かりだと思うんですが、気になる一文があったので写してきましたよー」
「見つかったのね、さすがルヴァだわ!」
 アンジェリークは嬉しそうに顔を綻ばせながら、手渡された手帳に目を走らせた。
「聖なる歌声……」
 先程の図書館で微かに聴こえた歌声、そして水鏡で聴こえたマーサの歌声。
 ここへ来て二つとも無関係とは思えなかった。
 図書館で突如落ちてきた一冊の本。
 誰かにかは知らないが、確かに導かれているとアンジェリークは考え始めていた。
「ルヴァ。わたし、次に行く場所に心当たりがあるわ。後であなたの意見を聞かせてくれる?」
「ええ、もちろんですよ。ちょっとお茶でも飲んで、一息入れましょうね」
 アンジェリークは気付いていないようだが、ルヴァは気付いていた。彼女が顎に手を当てて考え込む仕草が、自分と良く似てきたことを。

作品名:冒険の書をあなたに 作家名:しょうきち