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美月~mitsuki
美月~mitsuki
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時津風(ときつかぜ)【三章】

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 彼女はまるで自分が痛むかのような顔をしてこちらを見ていた。首を傾げ、黙って赤司を見つめるその瞳には一言ではとても言い表せないような様々な感情が浮んでは消えて行った。
 話がつい独りよがりになってしまったと後悔する。自分の事に没頭する余り、知らぬ間に彼女の心の中の傷に触れてしまったのかもしれない。自分の失態と気まずさに表情を固くする赤司に、しかし彼女は笑ってみせた。
「・・・ごめんなさい、私がこんな顔をしてはいけないわね。」
 短く息を吐いて彼女はそう呟くと、恥ずかしそうに言った。
「ごめんなさいね。つい、息子の事を思い出してしまって・・・。」
「──息子・・・?」
 思わず赤司は呟いた。赤司の言葉に彼女は頷いた。
「私は家族を・・・夫と息子を一度に失ったの。息子はちょうどあなたと同じ歳なのよ。あなたのお話を聞いていると、息子と離れてしまった時の事を思い出してしまって・・・。気持ちの整理はついていた筈なのに、お恥ずかしいわ。」
「それは───」
 赤司は思わず彼女の方に向き直った。
 彼女がここへ来たのは亡くした家族を想って経を写す為だったのだろう。自分に話し掛けて来た事や、高校二年と聞いた時の彼女の表情も今なら全て合点がいった。静かに文机に向かう彼女の姿が赤司の中に蘇る。
「─── 申し訳ありません。存じ上げなかったとはいえ、失礼な事を・・・。」
 赤司は項垂れた。息子と別れた時の彼女の気持ちが、自分のそれと微かにリンクした気がした。
「いいえ、あなたのせいではないわ。私がいけないの。なんだかあなたのお気持ちが自分の中に流れ込んで来たような気がしてしまって・・・可笑しいでしょう?ここの不思議な空気のせいかしら。どうかお気になさらないでね。」
 彼女はそう言うと再び赤司に笑ってみせた。優しい笑顔だった。彼女の笑顔もまた、赤司には尊いものに感じられた。今、自分の目の前にいるこの人は、もしかすると自分を映す鏡なのかもしれない。母親と息子、立場は違えども二人は遺された側という意味では同じだ。相手の気持ちが自分に流れ込んでくる、彼女の言ったその言葉はそのまま赤司自身にも当て嵌まっていた。不思議な事もあるものだ。だが、いやだからこそ、この出逢いはとても意味深い。縁とはつくづく不思議なものだと赤司は思う。
「先程のあなたのお話しですけれど・・・」
 彼女は赤司に向かって静かに話し始めた。