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夏のひと思い出に

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8月某日。
昼下がりの生温い風がふいた。
「あっつい」
コンビニの袋をぶら下げ正臣は職場へと足を急がせた。
本来なら今日は正臣にとって休日の筈だった。
しかし、雇い主である折原臨也、彼は正に暴虐無人。
そんな彼から届いた一通の業務連絡。
(至急、仕事の依頼)
シンプルな内容の、けれども休日の午後を潰すには十分すぎる内容だった。
そんな連絡をよこされた正臣はせめてもと、コンビニで普段なら買わない少しお高めのアイスを購入し気を紛らわす様に臨也への愚痴を1人ごちりながら職場へと向かった。


「やあ、遅かったね」
外の気温とは違い雇い主、折原臨也の事務所兼自宅はとても過ごしやすい温度に設定されていた。
「俺は瞬間移動とか空を飛ぶとかそーいった類の技は生憎持ち合わせてないんで」
遅い、いやいやこれでも正臣は自宅から駅まで駅から職場まで全力で走った。
途中で、コンビニには寄りはしたものの。
それ位は、目を瞑ってほしいものだ。
「ふーん、まあいいけどね」
そんな事は然程興味はない、と言わんばかりに臨也は正臣に背を向けソファに腰掛けた。
少し、高そうなソファで足を組む臨也はとても絵になる。
くそ、滅びればいいのに!、と内心舌打ちをする。
「で、仕事ってなんですか?」
呼び出した張本人は、仕事の事など口にせずアイスコーヒーを啜り始める始末だ。
「ああ、仕事ね」
カラン、と置かれたグラスの氷が音を立てた。
臨也はうーん、と少し唸った後、
「うん、まあ特にないんだけどね」
ははは、とか臨也は悪びれた様もなく自分の背後に突っ立ったままの正臣の方を振り返った。
「、、は?」
心底、死ねばいいのに。
死ねばいいのに、そうしたらきっと世界は平和だと利き手で頭を押さえ、心中で呟いた。
因みに、こう言った呼び出しは過去に何度かあった訳だが。
無論、本当に仕事の場合も有る訳で。
おまけに臨也は一言連絡を入れた後は返信をしようが電話を掛けようが取り合ってくれた試しはない。
まあつまり、正臣には選択肢は初めから一つしか用意されていないのだ。
「ところでさ、その袋の中身大丈夫なの」
そんな正臣を他所に臨也は袋へと目線を落とした。


「、、あー!!!俺のアイス!!!」
少しの間が空いた後、臨也に言われ、急いで袋からアイスを取り出す。
この炎天下、アイスの入れ物は正臣の力でぐに、と少し形を変えた。
つまるところ、アイスの中身はでろでろに溶けた、と捉えて間違いないだろう。
「ああ、俺の、、俺のアイス、、」
先程も伝えたが、普段なら購入しない。
休日出勤する自分へのご褒美、と言ったところのアイス。
正臣は形が少し変わったアイスを見つめた。
「うん、自分の分しか買ってこなかったバツかもねえ、」
そんな様子を臨也は、さも楽しそうに見つめた。
「ところでさ、正臣君、君に一つ頼みたいことがあるんだけど」
未だアイスを見つめる正臣を他所に臨也は、そうそう、と話を切り題した。
「、、なんすか。」
少し間をおいて、正臣はアイスから臨也へと目線を移した。
「何、大した事じゃないんだけどね」
臨也はテーブルのアイスコーヒーをまた一口飲んだ。
「俺の部屋あるでしょ、ベットの上に服が置いてあるだけどね、一度着てみてほしんだ。」
ちらっと、臨也は正臣から目線を自分の寝室へと向けた。
「はあ、、服、ですか」
何だそれは、と正臣ははてなを頭に抱えたまま臨也と同じく寝室の方へと目線を移した。
「ああ、頼むよ」
この暑苦しい季節に、彼の様に涼しげな笑みを浮かべる事の出来る人間が一体この世に何人いるのか、と正臣は考えた。
いや、彼の様な人間がそうそう居てはたまったもんじゃない、考えただけでぞっとするな。と1人頷いた。


「失礼しまーす、」
キィー、と音を立て臨也の寝室のドアを開いた。
太陽の西日に照らされた部屋はベットとテレビと本棚、と一つ一つの家具が異様に大きく感じる以外は至ってシンプルな部屋だ。おまけに綺麗に整頓されており皺やゴミの一つもない様だ。
「えーっと、これか?」
正臣にとって臨也の寝室は同じ家の中であるにも関わらず少し緊張する場所でもある。
なぜか、ここは臨也の特別な領域に足を踏み入れた様な感覚を正臣に感じさせた。
正直な所何度か、宿泊はした。
だから、初めてではないのだけれど、
それでも空間(ここ)には未だ慣れない気がした。
仕事の関係で終電を逃しタクシーで帰ると告げた自分に彼はさも不思議そうになぜ?と答えた。
そして、その行動が当たり前の様に、泊まればいいじゃない、明日も仕事だし。それに、ベットは幸いキングサイズ、だしね。と彼は笑った。
言葉通りソファで眠る、と告げた正臣の言葉を無視し大きくてふわふわなベットへと彼は自分を引き込んだ。
それは毎回、宿泊する度に行われる儀式の様になっていた。
そしてその度、自分が臨也と言う闇に引き込まれそうな感覚を覚えた。
「っと、、ん?浴衣?」
正臣は、はっと現実へ返った。
今は、そうじゃない。
仕事だ、仕事。
そんな事より、これはと正臣はそのベットの上に丁寧に畳まれ皺一つ見当たらない浴衣を手に取った。
紺色の薄いグレーの柄が入ったシンプルなデザインの浴衣。
「これを、、着るのか?」
正臣は、取り敢えず臨也に言われだから様に着替えを始めた。
臨也は待つのが得意ではない。
正臣は身を持ってそれを学習している。
身につけた衣類を一式脱いで浴衣に腕を通す。
サイズは正臣にピッタリで、
柔らかな生地が変に肌に馴染んだ。
「あれ?帯は、えーっと、、」
確か、と帯を色々な方向にして結んでみるも昔の結べた筈の記憶は中々戻らない。
「しょーがないか」
あんまり頼みたくはないけど、と呟き正臣は部屋を後にした。
臨也に帯を結んでもらおうと。
パタン、と部屋ドアは閉まる。


「臨也さ、、、ん?」
部屋を後にリビングにいる筈の彼を探すが見当たらない。
「どこに行きやがったんだ!」
自分にこれを着てみろ、と言っておいて居なくなるとは、彼の自由っぷりに正臣はため息を吐いた。
「おや、正臣君」
玄関やお風呂などに通じる廊下のドアの開く音と同時に、臨也は正臣の背中に呼び掛けた。
「うん、思った通りだね、、。サイズもピッタリだね」
臨也はドアの付近にたったまま正臣の全身を上から下へと見た。
そして、満足そうに笑った。
「え、、い、臨也、、さん?」
当の正臣は名前を呼ばれ振り返ったままの体制で臨也の姿を見つめたままだった。
そこには、黒い色で薄いグレーと黒の帯を腰に巻いた浴衣姿の臨也がいた。
「帯、結ぼうか?」
そんな正臣を他所に臨也は満足そうに微笑んだまま正臣へと近づいた。
その姿がえらく様になって余計に正臣は臨也から目が離せない。
「正臣君?」
臨也は自分を見つめて動かない正臣に不思議そうに首を少し傾けた。
「あ、はい!」
少しだけ間が空いて正臣は我に返った様に返事をした。
「帯、結ぼうか?」
臨也は、もう一度正臣に問う。
一歩ずつ、ゆっくり近づきながら。
「あ、はい、、お願いします」
臨也は正臣にを自分の方へ向かせ
膝を床につく体制を取った。
正臣から帯を受け取りゆっくりと腰に巻きつけた。
作品名:夏のひと思い出に 作家名:ままま