雁字搦めの君
黙りこくる正臣の腕を引き再び臨也は歩き始めた。
人通りの少ない道を臨也に腕を引かれながらひたすら歩いた。
正臣の思考は殆ど停止していた。
なぜ、なぜ、なぜ、
そればかりが頭の中をぐるぐると巡った。
「入りなよ」
連れてこられたのは、自分にとってとても懐かくて背徳を感じる場所だった。
折原臨也の自宅兼事務所。
まだ幼い頃の自分は通い慣れたはずの場所は今の正臣にとっては地獄への入り口の様に感じさせた。
「まったく、いつまで経っても世話が焼けるね。」
はあ、と一息吐き臨也は立ちすくむ正臣を自宅へと招き入れた。
パタン、ドアが閉まる音に絶望を感じ逃げろ、と身体は信号を出すのにまるで自分の身体ではなくなった様に手足は思い通りに動かなかった。
「ねえ、懐かしいでしょ」
臨也は正臣の腕を引きリビングまで連れてきた。
そしてソファに座らせた。
「あの頃は、可愛いかったよねぇ」
ソファに腰掛け俯いたまでま反応のない正臣に臨也反応1人語り始めた。
「臨也さん、臨也さんってさあ、、
ずーっと俺の後を付いてきてたよね、正臣君、、、ああ、そう言えばここだったよねえ、、正臣君と初めてシタの。」
ピクリ、と身体を震わせた正臣を臨也は見逃さなかった。
正臣の前にしゃがみ込み、俯いている正臣の両頬にそっと両手を当てた。
「この事、しずちゃんは知ってるのかなあ」
くい、と正臣の顔を自分の方へと向かせた。
「知ってる訳ないよねぇ、言えないよねぇ、自分の大嫌いな奴とこーなん関係があったなんてさぁ」
その顔は絶望を含む色をしていて、臨也はぞくり、と震えた。
自分を見る正臣の瞳は揺れていて、涙が頬を伝う。
そうだよ、正臣君。
雁字搦めの君に俺はすごく、どうしようもなく惹かれるんだよ。
と、心中で呟いた。
「ねぇ、俺の言いたい事わかるよねぇ?」
臨也は楽しそうに笑いながら正臣の唇に再び自分の唇を重ねた。