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はろ☆どき
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永遠のたそがれ【夏コミ90新刊】サンプル

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☩☩☩


 辺り一面、一分の隙もない、闇、闇、闇。
 暗闇の中、立っているのか宙に浮いているのか、果たして自分の肉体が存在しているのかすら判然としない。
 見渡す限り、深く底知れぬ闇しかなかった。星のない夜空を映した湖水のような漆黒。
 その漆黒を自分は知っている。あれはいつ……何処だっただろう?
 記憶を辿ろうとしても、頭の中は霞がかかったようにぼんやりとしていて、うまく思い出すことができない。
 やがて闇の奥に小さな焔が二つ揺らめいているのに気づく。それが段々と近づいてきて、焔ではなく紅い瞳なのだと認識した時にはもう、すぐ傍まで迫っていた。
 目を逸らすことのできない深紅の眼光に、恐怖や嫌悪、憎悪に苦渋――そんな負の感情しか湧いてこない。

――いやだ、やめろ、オレに触るな……!

 必死で拒絶の言葉を思い浮かべるが、己の唇からは何一つ音として溢れることはなかった。
ぐさり、と嫌な感触が喉元を襲い、全身が悪寒で泡立つ。
 あああああああ……!



「――――っ!」
 視界が暗転した瞬間、闇が消えて意識が現実に戻った。自分の悲鳴で目覚めたのかと思ったが、全身が緊張したように強ばっていて息を詰めている状態だった。
「はあ……はっ……は……」
 ようやく息を吐くが動悸が激しく、口の中はカラカラに渇いていた。夢でも見ていたのだろうか。意識が浮上する前の嫌な感覚しか覚えていない。
 そして気づく。自分の手や身体に感じる随分と肌触りのよい感触に。
 咄嗟に目で周りをぐるりと見回すと、とても上等な寝具に包まれているようだ。これはまだ夢の続きだろうか?
 しかし、直に身に纏っている布地が自分の衣服ではないことに気づき、エドワードはがばりと起き上がった。シンプルな白い薄布のシャツだが、上質な光沢と滑らかさは今までに触れたことのないものだ。
 改めて辺りを見回すと、広くて豪奢な造りの部屋だった。
 壁は細かい繊細な模様の連なる壁紙で覆われていて、壁際に高級そうな家具が幾つか置いてあった。壁の一面には出入口らしい重厚な扉があり、その反対の面は大きな硝子窓になっていた。外には庭のような景色が見えている。上に目をやると天井には芸術的な絵が描かれており、絵本でしか見たことのないシャンデリアのような硝子の照明がぶら下がっていた。
 その空間の中ほどに配置された、広い大きなベッドの上に自分はいるのだ。
――どこだ、ここは?――
 こんな所はもちろん自分の家ではなかったし、村や他所の場所でも見たことがない。
 わからない。頭が混乱しているのだろうか。落ち着いて意識が落ちる前のことを思い出そうと試みる。
 オレは昨日、日が落ちてから外へ出掛けた。アルフォンスのために薬を求めてくるよう、叔母さんに懇願されて。
 昨日は新月で、普通ならそんな日の夜に家の外から出る者などいない。
 そう、昨夜は「狩人の夜」だったから――。
 そこまで考えて、はたと気づく。
 オレは薬屋へ辿り着けなかった。何故なら、オレは魔物の術に嵌められて……村の外れに追い込まれた。そしてあの男が現れた。
 そうだ、オレはあいつの牙で首を噛まれた。あの感触を覚えている。身体の血が吸い上げられた感覚も。
 はっと首に手を当てると、指に柔らかいガーゼのような布が触れた。
 まさか……まさかオレは。
 嫌な予感に襲われながら壁際に大きな鏡があるのを見つけ、意を決してベッドから降りる。どこか痛いところがあるわけではなかったが身体が鉛のように重く、そろそろと這うようにして鏡の所まで辿り着く。
 恐る恐る脇から鏡を覗き込むと、ひどく青白い血の気のない顔の自分と目が合いぎょっとした。それから視線を少しずらすと……首にはやはり白い布が巻かれていた。包帯だ。
 引き千切る勢いでそれを外して、己の喉を晒すと頸動脈の辺りに赤い小さな傷跡が二つあるのが映る。エドワードは目眩を起こして倒れてしまいそうだった。
 やはり自分はあの男に血を吸われたのだ。それはどういうこと意味するのか?
 噂に聞くように男の傀儡になるのだろうか。或いは吸血鬼化して、自らが人を襲うはめになるのだろうか……?
忌まわしい思考で頭がいっぱいになる。
「お目覚めですか?」
 その時、急に背後から声をかけられて、エドワードはびくりと肩を震わせた。振り向くと、扉の傍に女がひっそりと立っていた。