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はろ☆どき
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永遠のたそがれ【夏コミ90新刊】サンプル

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☩☩☩



 その日、夢を見た。
 辺り一面、真っ赤な絨毯が敷き詰められていた。いいや、違う。これは花だ。真紅のベルガモットの花畑。風に吹かれて湖のさざ波のように、丘の上に向かって揺られている。
 波の流れを追って目を向けた先には、燃えるような夕陽と紅く染まった空があった。ふいに胸が詰まるような、懐かしい感覚が訪れる。
――おかしいな、オレが見たのは日中の真っ青な空だったはずなのに――
 夕陽が眩しくて目を眇めると、丘の上に人影があるのが見えた。自分は今、太陽に向かって立っているから、この影は自分のものではないはずだ。空と花畑の間へ吸い込まれるように沈んでいく夕陽を受けて、黒いシルエットが自分の方へぐんぐんと伸びてくる。
あとちょっとで、かげに、つかまる……!
「――っ」
 目を見開いて飛び起き、それまで自分が寝ていたのだということに気づいた。呼吸が荒く、全身が汗ばんでいる。
「どうした。夢でも見たのかね」
 すぐ傍から声がしてびくりとそちらに目を向けると、闇よりも深い夜色の瞳と視線が合う。ロイがガウンを羽織った姿で、悠然と寝そべっていた。肩肘をついてこちらを見ている。
 対する自分は何も身につけておらず、つまり裸体を男の前に晒している状態だった。身につけていた衣服は、確かベッドへ押し倒されて早々に剥ぎ取られた。
 そうだ、オレは犠牲者として貴族の屋敷に捕らわれているのだった。今は深夜で、いつものように男の相手をさせられ、嬌態を晒した挙句に意識を飛ばしたのだろう。
それではやはり夢を見ていたのか……。
「明け方まで間があるから、もう一眠りしていたまえ。それともまだ足りないのかね?」
 それならばと伸ばしてくる不埒な手を払いのけ、エドワードはさも不愉快そうに眉を寄せた。
「冗談じゃねえ。あんたの『食事』はもう済んだだろうが」
 エドワードは苦々しく言い放つと、掛布を手繰り寄せながらロイに背を向け再び横になる。
 貴族に対してそんな横柄な態度を取っても、ロイはくつくつと笑うばかりで気にする様子はなかった。むしろ面白がっている節がある。
 無視して目を閉じると、後ろから添うようにして腕を回してきた。そしてエドワードの身体を囲うようにしながら、耳元に囁いてくる。
「後で身体を洗ってあげよう。拭いただけではすっきりしないだろう? シャワーで隅々まで洗ってあげるよ」
 まるで機嫌でも取るように言っているが、拒んでも好きなようにするくせに。エドワードはむっとしたが言い返さずに黙っていた。
 シャワーは浴びたいが、他人に身体を洗われるのなどご免被りたい。しかも事後のそれは身体の奥に放たれた飛沫の処理も含まれている。自分でするのも羞恥を抑えるのに苦労するが、ロイにされるのはもっと耐えがたかった。
 最初の頃は行為の後は当分意識がなくて、気づいたら綺麗に整え直されたベッドに寝ている状態だった。身体は全身さっぱりしていたし、血を吸われた際の噛まれた傷跡にも包帯が巻かれていた。貧血を起こしたように頭が朦朧としていたから、それを誰がやっているかなど考える余裕もなかった。
 だがある日、目覚めた時にホークアイがいて、浴室に連れて行かれそうになり全力で拒んだ。今まで誰が……とは考えたくもない。
「自分でやるから誰もオレに触るな」
 そう主張したが叶えられず、ホークアイにだけはと拒んだ結果、ロイによって行われるようになった。エドワードがあまりにも嫌がるので、かえって興味をもってしまったらしい。暴れるエドワードを抱えて浴室へ運ぶのが、ロイの楽しみの一つとなっているようだ。