ルパン三世~赤い十字架~
唸るルパンのワルサー。
Kの2丁拳銃が火を噴く。
荒野の非情な戦い。
隠れていた兵士に一瞬ルパンが怯んだ。
「コイツら、何モンだあ?弾が効かねえ!防弾なんぞどえらい装備しやがって」
Kは無言でアーマーが脆い部分を狙い、得意の打撃を打ち込み、多少のダメージを与えてはいるが数に勝る事は出来ない。
二人はじわじわと追い詰められていく。
「くそぉ、何やってんだ次元の奴!」
「次元…?」
「ああ…俺の相棒だ。さあて、この窮地、どうしてやるかな?不思議ちゃ…おい!どうした!」
Kの視界がグラリと歪み、激しい頭痛のようなものが彼を襲った。
「ぐっ…頭が…目が…」
にじり寄る集団。
囲まれる二人。
「おい、不思議ちゃん!走れるか?」
「分からない、ルパン、アンタだけでも」
「お人好しだねぇ、そんなんじゃ早死にしちまうぜ?まあ、お前さんみたいな奴、嫌いじゃねーけどな!不思議ちゃん、目を瞑れ!」
そう言ってルパンはスーツのポケットから小さな飴玉のような物を取り出し、勢いよくそれを地面に叩きつけ、真ん丸のサングラスをかける。
一瞬の内に眩い閃光が走り、集団が怯む。
ルパンはKを抱えながら、必死に地面を蹴り、車の方へと走る。その二人を今度はドローン機が急降下し、付け狙う。
車にKを乗せ、乗り込んだルパンは後部座席のヒッチハイカー達を見て一瞬生理的な恐怖を感じた。まるで人形のように生気を感じない。
「コイツら、一体」
ルパンの問いにKがゆっくりと口を歪ませながら答える。
「これは人間ではない」
「はあ?なにいっちゃってくれてんのよ」
「俺と…同じ…ヒューマノイド。サイボーグだ…ルパン、前を…っ!」
車を取り囲む兵士達の銃の引き金が今まさに引かれようとした時、1発の重い銃声と頭の吹き飛ぶ兵士の姿がルパンの瞳に映る。その兵士の群れの向こうに頼もしいスーツ姿が砂嵐に紛れていた。
「次元!」
「まあ、なんてザマだルパン。ったく、酒もゆっくり買えやしねえ…」
続けざまに放たれるマグナムの弾丸が兵士の急所を次々と貫通していった。
そして、Kの頭には何者かの声がテレパシーのように響いていた。
(痛いかね?私の失敗作よ。私の声をよくお聞き。君にはやってもらいたい事があるのだよ…君を狙っているのは君の仲間、KGB。もう君なら分かっていると思うがね…)
(貴様…何なんだ…)
(貴様?そんな言葉を私に使って良いのかね?我が創りし息子よ…いいだろう君が知らないのも無理はない。私は…私の名はマモー。言っておくが私の事はそこのルパン君には言わないでくれたまえ。言えば君の頭は粉々に吹き飛ぶだろう。彼とはいずれ…私自身が…)
そこで奇妙な声は電波のように途切れ、Kはマグナムの咆哮を聞きながら意識を失った。
作品名:ルパン三世~赤い十字架~ 作家名:Kench