ルパン三世~赤い十字架~
Episode.4 猿と大根
「おぉ、よく見たら、そのチンケな面!いじめられっ子だった…えーっとなんだったっけかな?名前教えてくんない?忘れちまったぁ〜」
「……」
飛んだ猿芝居だ。Kはこの男、ルパンが暗殺対象だという理由がよく理解出来ないでいた。
しかし、その瞳に宿るものは自分に近いものも感じる。その感情は何とも言えず…。
「不思議だ…」
「あ〜ぁ、そうそう!確かに不思議ちゃんだったよなあ、お前さんは」
「…は?」
「は?じゃねぇだろーがよ。こんな淋しい荒野のド真ん中で奇跡的に再会したんだぜ?岩影に隠れる大っきな虫ちゃんや空を飛び廻る名もない鳥ちゃんの祝福も受けようじゃないかぃ?」
岩影の虫。
名もない鳥。
鋭く動くルパンの視線。
「はははあー、そうだね。祝福を受けよう」
自分の大根役者っぷりに吐きそうになりながら、Kは無数の敵を感知していた。
岩影には、スナイパー、マシンガンを所持した者が数名。
空には銃器を取り付けた無人ドローン機が飛びかっていた。
何故、すぐ察知出来なかったのか?
しかも、それはルパンではなく…
Kを狙っているのだ。
罠。しかし誰が何の為に?
スナイパーライフルの赤外線レーザーがKの急所を照らしていく。
間違いなく動けば、射殺。
「なんだよ、不思議ちゃん。[赤く]顔を染めやがってよ…しょうがないなぁ、もー。ヒッチハイカーのお二人さん、ちょいと待ってくんな?」
ルパンは目をギラギラさせながらも、ひょうきんな顔とガニ股でKにゆっくりと近づいていく。
(やめろ、アンタまで撃たれる)
(構わんさ)
Kの動揺を悟ったかのように、ルパンは強い意志を瞳に宿す。
「なーにガチガチに緊張してんのよ。いやぁ大きくなりましたねぇ〜俺は岩の虫ちゃんに祝福を!」
「そりゃー人間だものー当たり前さーじゃあボクは鳥に祝福を!」
猿と大根は荒野に不吉な笑いを轟かせ、
肩を寄せ合い銃を即座に構えた。
「行くぜ?大根役者」
「猿に言われたくないね」
「上等だ、不思議ちゃん」
無数の弾丸。火薬の臭いが何もない荒野を戦場へと変えた。
作品名:ルパン三世~赤い十字架~ 作家名:Kench