つま先立ちの恋に慣れたら
第一話 手料理
「-----いたっ!」
指先に走る痛み。わずかに赤い線が流れた。奈々は週末、礼二のために手料理をふるまおうとピリカで練習していたら、手が滑って包丁で人差し指を軽く切ってしまった。あわてて救急箱から絆創膏を取りだす。
「あ~・・・やっちゃった・・・」
怜治に会えるのは明日。料理の味は自信があるとは言えない。任せてくださいと言ってしまった手前、おいしいものを出したいのだ。
「よし!もう一回!」
手当てをした後、練習を再開する。こうして桜井奈々の夜はふけていった。
ーーーAM10:00 当日ーーー
ピピピピピーーー。せわしないアラーム音が部屋中に響きわたる。お、起きなきゃ・・・!と奈々はボタンを押して音を止め、ぼーっとしながら時間を確認したら、頭が真っ白になった。
「いそがなきゃーーーーーーーーー!!!!」
徹夜で疲れきってまちがえて一時間おそくアラームをセットしてしまったのだ。あわてて準備をして、ばたばたとピリカのドアを開く。
「あれ奈々、朝ごはんは?」
「いらない!行ってきます!!」
「・・・・・どうしたんだ?一体」
「耕ちゃん、奈々もそういう年頃なのよ」
「さくら、お前なにか知ってるのか?」
「ひ・み・つ♡」
楽しんできてね、奈々。帰ってきたら話聞かせてもらうから。極上スマイルを浮かべながら、さくらは今日も日々の業務をこなすのだった。
作品名:つま先立ちの恋に慣れたら 作家名:yuuuuuka