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つま先立ちの恋に慣れたら

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 ---AM10:15---

 バスに乗った後、奈々は急いでスマホを開くと、やはり怜治からの着信があった。もうすぐ着くことを連絡し、目的のバス停までに乱れた息をととのえる。
 久しぶりに会えるのに、私のばかーーーーーー!
 いつもはバスの時間は気にならないが、今日ばかりは長く感じられた。
 最寄りのバス停から降りたらすぐに怜治の家がある。事前に教えられたとおりの道を歩いていると、奈々は思わず声が出そうになるのを必死で抑えた。怜治がこちらに手を振っている。奈々はいそいで駆けより、できるだけ小声で謝る。
 
「遅れてごめんなさい!でも、なんでここに・・・」
 「ごめん、うちにいてもなんだか落ちつかなくて」
 「こんな大通りで、見つかったら大事ですよ・・・!!」

 一応サングラスにマスクと、バレないように気をつかっているみたいだ。そんなこんなで到着し、怜治は高層マンションの1階の豪華なロビーでカードキーを通し、エレベーターに乗り込む。

 「ひやひやしたね」
 「ひやひやしましたね」

 怜治はなんだか楽しそうだ。一方奈々は言葉どおり、本当にひやひやしていた。見つからなくてよかった・・・!とほっと胸をなでおろした。

 「さあ、入って」
 「おじゃまします」
 
 うわあ、緊張する・・・!奈々は怜治の部屋に入るのは初めてだ。モノトーンで配色された室内にセンスを感じる。360°見渡していたのがおもしろかったのか、怜治はくすくす笑っている。
 
 「男の部屋ってこんなもんじゃない?もしかして俺が初めて?」
 「はい!なんだかモデルルームみたいでびっくりしちゃいました!!」 
 「そんなこと言ってくれるなんて嬉しいな、ありがとう。ところで今日は何を作ってくれるの?」
 「出来上がるまで待っててください!」
 「わあ、すごく楽しみだよ、俺にできることがあったら言ってね」
 「大丈夫です!ありがとうございます」

 はりきる奈々がいつも以上に可愛くてずっと見ていたくなる。後ろから見ていると緊張するからと照れた彼女にキッチンから追い出されてしまった。しょうがない、しばらくリビングで待っていよう。