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つま先立ちの恋に慣れたら

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 他の男が奈々を見ている。どこへ行ってもそういう輩がいるから、まるでデートに集中できなかった。イルカショーを見ても、エサやり体験をしても、おみやげを買っても。考えるのはほかの男の視線と奈々にいったい何があったのかの2択。俺はこんなに心が狭かったかな?一通り回って帰る流れになり、水族館を出てから人気のない道を2人でこっそり通って帰ることにした。しばらくとりとめのない会話をしながら歩いていると、奈々は怜治の手を引っ張って足を止めた。

 「・・・どうしたの?」
 「今日、なにかありましたか?」
 「どうして?」
 「怜治さん、今日上の空な気がしたから。私の気のせいですか?」
 「・・・気のせいじゃないよ」

 奈々の顔が不安でいっぱいになる。だが何もわかっていない彼女には釘を刺す必要がありそうだ。唇に手を当てて、どうやら今日何があったのか思い出しているようだった。そんな彼女の空いているほうの手を引いて抱きよせ、耳元でそっとささやく。

 「わっ・・・れ、怜治さんっ・・・!」
 「今日、奈々いつもとなんだか違うよね?水族館でときどき見られてるの、気づかなかった?おかげでちょっとハラハラしてたんだ」
 「・・・・っ」
 「そんな可愛い格好して、化粧して。ほんと気が気じゃなかった」
 「・・・ううっ」
 「誰に教えられたのか知らないけど、そのままの奈々が十分可愛いよ?おしゃれもいいけど、2人きりで会うときだけにしてほしいな」
 「あ・・・は、はい・・・っ」
 「ここも。ここも・・・・ここだって」

 鎖骨、手首、耳と静かにキスを振らせていく。

 「全部俺の、だからね。誰にも見せたくない。だから」
 「ちょ・・っ」

 ワンピースを軽くずらして、鎖骨の少し下に自分の印をつける。

 「見えないところならいいよね?俺のってつけとくよ」
 「ぁ・・・れいじさん・・・・・っ・・・」
 「ん・・・・もうちょい・・・うん、できた」 
 「・・・はずかしいです・・・・・・」
 「消えないように定期的にしなきゃね」
 「!?」
 「・・・だめかな?」
 「~~~っ、怜治さん・・・!!」
 「ね?」
 「もう、知らないです・・・!でも可愛いって思ってくれたなら、満足です」
 「?」
 「少しでも気に入ってもらいたくて、雑誌とか見て調べたり、がんばりましたから。結果的にちょっと困らせちゃったみたいですけど」

 えへへ、と笑う彼女は小悪魔としか思えない。

 「----まいったな」
 「?」
 「離したくなくなったよ」
 「え、れ、怜治さん!?」
 「動いても無駄だよ。しばらくこのままだね」
 「今日、なんかいじわるです・・・」
 「それこそ気のせいじゃない?」
 「気のせいじゃないです!」



   俺を困らせたいとしか 思えないな
       (空回るところも かわいいけど)



 (耳元でささやき続けるの、やめてもらっていいですか?心臓いくつあっても足りません・・・!)
 (芸能人は見つかったらまずいから、外では静かにしなきゃって言ってなかった?)
 (いつもは気にしないのに・・・!)



 お題元:確かに恋だった 様、TOY 様