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つま先立ちの恋に慣れたら

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 「最近ちょっと、がんばっちゃいましたか?」
 「・・・そうだね」
 「へへ、おつかれさまです」
 「うん、ありがと」

 しばらく無言が続いていると、こらえきれなくなったように、奈々がくすくす笑った。意味が分からなくて腕を離し、直接顔を見て尋ねた。

 「なにがおかしいの?」
 「おかしいんじゃなくて、嬉しいんです。私ばっかり頼ってたからいつも悔しいなって思っ
てて。でも、こうやって頼ってくれてるから、よかったって。私にも出来ることあるんだって、そう思いました」
 「・・・・」
 「それに完璧超人だと思ってましたけど、こういうところもあるんだって。新たな一面を発見できて、もっと好きになっちゃいました。・・・・あっ・・・」

 奈々はまた口を滑らせてしまいました、と控えめに照れ笑いした。そんなことない、自分が奈々にどれだけ助けられてるのか、分かってない。こんな急に呼び出しても嫌な顔一つせずに来て、いつも心配してくれて。
 アイドルにストライドに日舞に・・・いつのまにか息を抜く時間を取るのを忘れてしまっていた。全部自分の好きなことだから、大丈夫だと思っていた。でも、こういうことになってしまっている。ほっとできるところを見つけてしまった今では、もう手放せそうにない。

 「またこういう日もあるかもしれないけど」
 「はい、どんとこいです!」
 「変わらずそばにいてくれる?」
 「もちろんです!」
 「よかった」
 「任せてください!」

 こうやって弱みを見せれるのも、顔を見て安心できるのも、心からいとおしいと思えるのも、君だけ。
 人の気持ちに寄りそえる、優しい君だから、君が他人に向けるそれ以上に、俺は、君をもっと大切にしたい。

 「好きだよ、奈々」

 ゆっくりと顔を近づけて、唇を重ねた。




 

 また きみのあたたかさを 知る
          (もう何度も触れているはず、なのに)










 お題元:確かに恋だった 様