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甘い経験・前

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 いつになく小声で不明瞭に呟く源田の顔はますます赤く、視線は一向に鬼道に向けられない。それでも突き出す袋を引っ込めないところを見ると、恐らくこれは鬼道に開けてみろということなのだろう。帝国学園が所在する街はそれなりの規模のもので、大抵の近隣の駅よりは間違いなく買い物に際して品揃えなどは良いはずなのだが一体源田は何を求めたものか。この辺で曲がりなりにも買い物が出来る駅で、この学生寮の門限までに帰ってこられるというと稲妻町あたりか。源田の行動に思いを巡らせながら、鬼道は慎重に紙袋を留めているテープをはがす。紙袋自体にはそれなりに厚みがあるようで、中身は全く透けて見えないそれをようやく開け中を覗き込んだ鬼道は、完全に思考と行動が停止したような感覚に陥った。
 中が透けない紙袋の中には、12個入りのコンドームの箱と丸いハンドクリームの瓶。鬼道がはじめての時からすぐ調達し、それからずっと鞄に忍ばせているものと大差ない品物が入っていた。
作品名:甘い経験・前 作家名:タロウ