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同調率99%の少女(10) - 鎮守府Aの物語

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 閉まっている本館を離れ、工事現場の隙間を抜けて倉庫群に来た二人。鎮守府に来た時よりも強く朱が辺りを支配していた。二人ともなんとなく無言でテクテクと歩く。向かう先は倉庫群の先にある海だ。
 小さな港湾施設の手前に辿り着いた二人。那美恵が口を開いた。
「ここはこの地元の浜辺・海浜公園だよ。あっちがね、鎮守府Aの港だよ。近くの会社や団体とか海自、あとは……たまに民間人にも開放されてるらしいよ。」
「へぇ〜! 海自って聞くと、なんか身が引き締まりませんか?」
「え?」

「だってさ、あたしたち、と言ってもあたしはまだ正式には艦娘じゃないですけど、艦娘が本当に国に関わる組織なんだなって実感湧いてくる感じです。海自と関係深いんですよね?」
 流留の素朴な質問だった。一度艦娘として海自と連携したことあるので、両者がなんだかんだいっても切っても切り離せない関係なのかもと思うところがあったので、那美恵は素直にその気持ちを流留に伝える。

「多分ね。あたしもそんな詳しいわけじゃないけど、一応海自の人と出撃任務したことあるし。」
「え!?マジですか!?すっごーい!」
 素っ頓狂な声を上げて驚きを見せる流留。周囲に人はいないので響き渡った叫び声がなんとも夕暮れ時の海辺の寂しさを増長させる。那美恵はそんな驚きを見せる流留に一言伝えた。
「あのさ。展示の説明の時、一度説明してるんだよ。覚えてない?」
 那美恵から指摘されると、恥ずかしそうに申し訳なさそうに流留は弁解した。
「あの時はすみません、ぼーっとしてて頭に入ってこなかったもんで覚えてなかったです。」
「あ、そっか。そうだったよね。ゴメンね、嫌なこと思い出させて。」
「ううん。いいですって。もうどうでもいい過去のことですし。」

 思わず触れてしまった、先の流留の問題の発端たる告白直後の出来事。那美恵は流留がまだ心のどこかでその時の心の乱れを気にしているのだろうかと、なんとなく心配をしていた。しかし、流留の口ぶりからはそのような不安げな様子は見られない。あまり裏表がなさそうな彼女のこと、おそらく本当にもうどうでもいいのだろうと、那美恵は納得することにした。

「はぁ〜!気持ちい〜! 早く海に出たいな〜!!」
 突然流留は背伸びをして叫び声を上げた。夕暮れ時の静かな海、叫びたくなる気持ちもなんとなくわかる気がする。那美恵は後輩のはしゃぐ姿を見てクスリと微笑んだ。
「アハハ。正式に艦娘になったら、一緒に外に出てみる?」
「はい!その時はお願いします!」
 女二人の夕暮れ時の海辺での会話はそのあと数分続いた。鎮守府を離れる頃にはすでに18時を回っていた。遠目から見て工廠にはまだ明かりが灯っている。まだ誰かしらいるのだろう。
 あえてまた立ち寄る気もなく、二人は駅に向けて歩き帰路についた。