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同調率99%の少女(10) - 鎮守府Aの物語

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「……コホン。内田さん。さすがに俺が女の子であるあなたに触るのは問題あるんだよ。それはわかるよね?高校生だもんな?」
 提督から直接指摘され、初めて流留は自分の発言の取られ方を理解した。瞬間、ボッと音が出るかのように顔を真っ赤にして提督に言い訳をして謝り始める。
「あ!いや!あの……そういうことじゃなくて、アハハ……そ、そうですよね〜あたしったら初対面の人に何言ってんだろ……。」
 手でうちわのようにパタパタと仰いで顔のほてりを和らげようとする流留。その様子で、どうやら素による発言だと察した那美恵。過去に流留に何かあったのだろうかと想像するが、それをわざわざ彼女に聞くのもはばかられるので、心に思うだけで黙っていた。
 それから提督はあえて流留の様子に触れず話を進める。

「……というわけで内田さんの身体測定は光主さんかあとは……明石さんか妙高さんにでも頼むから。その時になったら指示します。」
「「はい。」」

 気を取り直した提督の指示に那美恵と流留は真面目に返事をした。そして3人は流留の同調の試験のため工廠に向かった。


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 工廠に着くと、明石はちょうど出入り口に立って搬入した資材の確認をしているところだった。彼女は提督や那美恵に気づくと作業の手を休めて3人に声をかけてきた。

「おはようございます、提督。それに那美恵ちゃん、流留ちゃん。来てくれたんですね〜」
「おはよう、明石さん。」
「おはよ!明石さん〜」
「おはようございます!明石さん!」

 提督が真っ先に明石に近寄り、目的を伝える。
「明石さん、今大丈夫かな?」
「えぇ、大丈夫ですよ。」
「あぁ。多分知ってるんだろうけど、この度光主さんの高校で学生艦娘の候補がいるんだよ。」
「存じています。そちらにいる流留ちゃんですよね。昨日いらっしゃったので話を先に伺っておきましたよ。」
「そうか。それなら話が早い。早速だけど内田さんの同調の試験をしたいんだ。準備してもらえるかな?」
「はい。了解です。」
「あぁ、それとこの前神通の艤装届いたろ?いい機会だから光主さんに同調のチェックをしてもらおう。」

 提督の一言を聞いて、そういえば内緒でこっそりと持ち出したことを思い出して明石はドキッとした。それは那美恵も同じだったようで、明石と那美恵は提督から少し離れたところに駆けて行ってひそひそ話し始めた。もちろん口裏を合わせるためである。
 お互い、提督に話せない事情を持っているためだ。
「ねぇ那美恵ちゃん。私がこっそり神通の艤装を持ち出したこと、提督に話してないですよね?アレ、内緒にしてね?」
「もちろん言うわけないじゃないですか。あたしだって昨日の同調の異常を提督に知られたくないんです。だから明石さんこそ、黙っていてくださいね?」

 お互いの利害が一致したので、二人は無言で頷いて提督の側に戻っていく。そして明石は提督の言ったことに賛同した。

「了解しました!那美恵ちゃん、神通の艤装と同調できるといいですね〜?」
 明石のそのセリフに流留が反応して明石に対して言った。
「なに言ってるんですか、明石さん。昨日来て話したじゃないですk ムゴゴゴ!!

 途中で流留は那美恵に口を塞がれ、言おうとしたその先の言葉を言えなかった。詳しいことはわからないが、言ったらまずいことがあるのだなと、流留はなんとなく察した。3人の少し変わった様子を見て提督は怪訝な顔をしつつも、明石が同意したためにそれ以上は気に留めず、あとの準備作業を全て任せることにした。


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 明石は一旦工廠内に戻っていき、先日返却された川内の艤装一式と試験用の端末を持ってきた。端末を手にしてそれを操作したあと、流留に向かって促した。
「それでは流留ちゃん。一応決まりですので、もう一度艤装を身につけてもらえますか?」
 そう言って明石が手で指し示した艤装に流留の心は高揚感に包まれた。展示の写真で見た艤装(の各部位)。それらが全て揃っている、艦娘の艤装の本来の姿を形作る物。流留はゆっくりと川内の艤装に歩み寄り、各部位をまじまじと眺める。後ろから那美恵が流留に声をかける。

「全部装備するのは初めてだっけ?」
「はい。」
「手伝うよ?」
 流留はコクリと頷いた。那美恵に手伝ってもらい、流留は川内の艤装全てを装備した。

「それでは同調、いってみましょう。」
 明石が指示を出した。流留は心を落ち着かせ、これまでに教わった方法でゆっくりと同調をし始める。この瞬間、流留は見た目にも初めて軽巡洋艦川内になった。
 コアユニットだけをつけていたときよりも、全身の感覚が異なる。軍艦川内のあらゆる情報が、適切に各部位に伝わった証拠でもある。ゆっくりと目を開けて、後ろにいた那美恵や少し離れたところにいた提督や明石に視線を送った。

「同調率は、90.04%です。問題ありませんね。」
「おめでとう、内田さん。あなたはこれで本当に合格です。この記録はすぐさま大本営に送信するから、今日中にも続報を伝えられると思います。」
「は、はい……。」

 川内はあっさりと同調の試験が終わったことに拍子抜けし、へたり込む。
「ちょ!内田さん、だいじょーぶ!?」
 那美恵が駆け寄るが、川内はすぐに立ち上がって那美恵に笑顔を見せて無事を伝えた。
「大丈夫ですよ。なんかあっさりした感動っていうんですかね、拍子抜けしちゃって。」
「そりゃね〜これで計3回も同調を試してるんだものね。まさに三度目の正直ってやつですよ〜内田さ〜ん。」
 茶化すようにわざと敬語を混ぜながら那美恵は川内となった流留に声をかける。川内はその一言にハハッと笑った。その笑みには、やっとだ、という安堵感が含まれていた。

「あの。これで動きたいんですけど、いいですか?」
 かねてより艦娘の状態で動いてみたくて仕方がなかった川内はそんな提案を誰へともなしにしてみた。それには提督が答えた。

「気持ちはわかるけど、もうちょっと待ってほしい。」
「え〜、ダメなんですか?」
「あぁ。大本営から承認されないとね、万が一内田さんの身に何かがあったときに、安全を保証できないんだ。俺としても事故を起こした鎮守府のダメ責任者になりたくないからさ、頼むよ?」
「はい。じゃ待ってます。」

 不満気味な川内だったが提督の言うことに素直に従うことにし同調を切った。川内はその瞬間、艦娘川内から内田流留その人に完全に戻った。
 流留が同調を切ったので明石も端末側から艤装の電源を切断する。そして流留に艤装を外すよう指示を出した。流留の艤装解除は那美恵が再び手伝うことにし、二人は取り外す作業をし始めた。
 その間明石は提督と話し、川内の正式な着任準備のてはずを相談した。