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同調率99%の少女(10) - 鎮守府Aの物語

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 午後の授業が始まり、各々普通に授業を受けそして放課後になった。那美恵たちは生徒会室に集まり、艦娘の展示の一式を視聴覚室に運び始めた。もちろん流留も一旦生徒会室に来ての作業だ。
 全て運び出し終わりその日の艦娘の展示が始まった。
 さすがに1週間以上経つともはやほとんど人は来ない。どうやら那美恵は自身が危惧したとおり、生徒たちの艦娘への興味は途切れてしまったと判断せざるを得なかった。その日は30分以上待っても誰も来ない。

「ねぇみっちゃん。昨日は何人来た?」
「えぇと、3人ね。もちろん神先さんも入れて。もうそろそろ人来なくなるかもしれないわね。」

「そっかー。人来ない日が2〜3日続いたら、もうやめよっか。」
「いいの?まだ神通になれる人いないでしょ?」
「いいかげんに視聴覚室を借りるのも限界だろうし、艦娘部の部員必要人数3人集めの猶予期間も限界だから、あとは直接めぼしい人に話しかけて地道にアタックしていくしかないかなぁって思ってるの。」
「まぁ、なみえがそうしたいならいいわ。そうなっても私達も手伝うからさ。」
「ありがとみっちゃん!」

 そう話していると、その日最初で最後の見学者が来た。

 外から和子の声が那美恵たちの耳に飛び込んできた。そのため誰が来たのかが一発で理解した。
「あ、さっちゃん。今日も来てくれたの?」
「…あ…もにょもにょ……うん。」

 相手の声は小さすぎて那美恵たちからは全く聞こえなかったが、和子の相手への呼び方で、神先幸が来たのだと判明した。
「……いい?」
「うん。いいよ入って。」
 そうして入ってきた神先幸。那美恵たちは直接しっかり話したことはなかったが、和子からそれとなくいろいろ聞いていたため、ニコニコしながら幸を迎え入れた。

「神先さんだったよね?」
「!! ……はい。……ゴメンナサイ。今日も来ま……した。」
「そんな遠慮しなくていいからさ。今日も試すんでしょ?艤装の同調。」
 那美恵のその確認に、幸は言葉を発さずにコクンと頷いて肯定した。
「今日の艤装はね、この前までの艤装とは違うよ。神通っていう艦娘用の艤装なんだよ。だから遠慮せずガツンと試しちゃってね!」

 そう言って那美恵は艤装のある区画に案内した。幸はかれこれ数回は同じことをしているので、別に案内されなくても一人で行けるとわかってはいたのだが、勝手にスタスタ行くわけにもいかずおとなしく那美恵の案内に従った。


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 艤装のある区画には流留がいた。幸は彼女のことを周りから聞こえてくる噂によって知っていた。だが自分とは見た目の印象も住む世界も違う人だと思っていたので、正直なところ先の噂話や流留への集団いじめには無関心、ノータッチだった。そもそも人付き合いが苦手なため、仮に一緒にいたとしても絶対に話さないであろうと思っていた。
 そんな自分とは違う人が側にいる。なんでいるのか不思議に思っていると、那美恵はそれを察したのか説明してきた。

「そうだ。神先さんに紹介しておくね。彼女はね、この前まであった川内の艤装に同調して、正式に艦娘になることになった、内田流留さんだよ。」
「はじめまして。同じ一年の内田流留よ。今度艦娘川内になるんだよ。」

 幸はそれを聞いて愕然とする。艦娘に先になってしまった生徒がいた。てっきり何度も試し続ければいつかは艦娘という存在になれると思っていたところに、先を越されてしまった。そのことにショックを受け心臓がキュッと縮み込む感覚を覚える。
 目の前にある艤装は違う艤装だと生徒会長が言った言葉を頭の中で噛みしめる幸。この際、艦娘になれるなら何でもいいやと諦めにも似た感情が首をもたげていた。

「あ……どうも……よろしく…おねがいします。」
 その場にいたということで挨拶をかわし、それが一通り済んだのを見届けると、那美恵は幸を神通の艤装の前へと促した。
「それじゃあ神先さん、さっそく前みたいに艤装を身につけてみよっか。」
 幸はコクリと頷き、那美恵の指示通りに神通の艤装のコアユニットとベルトを身につけた。ふと、心を落ち着かない、妙な気持ちになった。艤装とやらの電源は入っていないはずなのに、幸は身につけた瞬間から、この前の川内の艤装のときとは明らかに違う感覚を感じ始めた。

「それじゃあ、電源つけるわよ。」
 艤装の同調チェックの際のアプリの操作は三千花の役割になっていたため、那美恵たちから少し遅れて艤装のある区画にやってきた三千花は自然とすぐさまタブレットを手にとり、幸の準備が終わるのを待っていた。
 そして三千花はアプリから、神通の艤装の電源を遠隔操作でつけた。


ドクン


 幸は、全身の節という節がギシリと痛むのを感じた。しかしそれは一瞬。それが収まると同時に上半身と下半身に電撃が走ったような感覚を覚え、特に下半身に熱がこもるのを感じ、恥ずかしくなってくる。誰にも見られたくない。


 瞬間。あぁどうせ試すなら、お手洗いに行っておけばよかったなと、後悔した。


 その直後に頭の中に流れ込んできた大量の情景。
 午後11時過ぎという夜の海、右に旋回し続けたら仲間にぶつかってしまったとある光景、
 銃を持った多くの人を、遠く離れたある泊地に運ぶ自身と数多くの小さな艦のいる第三者視点の光景、
 とある泊地で、回りで騒ぐ銃を置いた人たちと銃を持たない人を静かに見つめ、ただひたすら戦の命を待ち続ける自身のいる自分視点の光景、
 止めに、超高出力の光を放ち続ける自分に向かってくる中空からの燃える弾と海を進む一撃必殺の何かを見、身体の真ん中から砕かれ引き裂かれた自分、最期に見えたのは何も見えぬ夜の海の光景。

 他にも細かな情景が様々な視点で飛び込んで頭痛を引き起こす。頭が割れそう。そして下半身が濡れて気持ち悪い。Wで気持ち悪い。今の自分の身に起きた異変・異常を止めたくても止めるすべがわからない。
 幸はただひたすら、顔を真赤にさせて俯き、異常が収まるのを黙って待つことしかできないでいる。

 幸の異変に那美恵、流留、三千花はすぐに気づいた。タブレット上の数値は、87.15%と、合格圏内なのは間違いない。しかしそれを喜べない状況がそこにあった。3人とも同じ感覚を覚えたことがあったので同情にも似た感情を浮かべる。どう見ても神先幸のはかなりひどい。幸の足元にはポタポタと滴が落ちてきて止まらない。

「あ、あたしとりあえず拭くもの持ってくるね!」
「あたしも行きます!」

 慌てた那美恵のあとに流留が付き従って区画を出て行く。三千花はその場に残り、幸のフォローにまわる。那美恵は視聴覚室を出る前に和子に幸が粗相をしたことを、三戸に気づかれないように伝えていった。

 二人が何を話したのか気になった三戸は和子に聞いてみたが、和子は珍しく声を荒げて言い返した。
「いいですか三戸くん。君は何があっても絶対に視聴覚室には入らないこと。いいですね!?あと何も聞かないこと!」
「えっ? な、何があったのs
「いいから廊下に立っててください!」
「は、はいぃい!!」

 和子の凄みのある声に仰天した三戸はその場、つまり廊下に突っ立っていることしかできなかった。