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同調率99%の少女(10) - 鎮守府Aの物語

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 しばらくして那美恵と流留が雑巾とモップとバケツを持って視聴覚室に入っていくのを三戸は横目で見る。何も聞くなと和子から注意をされていたので黙っていたが、そもそも那美恵も流留も三戸をスルーしていたので尋ねることはできなかった。

 視聴覚室の中、幸は半べそをかきなが何度も那美恵達に謝る。それをいいからいいからとフォローしながら床を拭く那美恵達。和子は幸の肩を抱いて彼女を必死に慰めている。
 幸は以前、最初に同調を試す際に恥ずかしい感覚を感じるかもしれないということを聞いて覚えていたはずだったが、川内の艤装の時は同調できない日が続いたのですっかり失念していたのだ。

 幸は和子から体操着を持ってきてもらい、下を履き替えてしばらくしてやっと気分が落ち着いてきた。そして那美恵たちの掃除の方も終わり、ようやく本題に入ることができた。
「ええと、神先さん。以前あたしが伝えたこと覚えてるかな?同調できるとどうなるかって。」
 那美恵から確認されて幸は赤面させつつもコクンと無言で頷いて答えた。
「もうわかってると思うけど、神先さんは、合格です!神通になることができるんです!やったねさっちゃん!」
 那美恵は合格を伝えると同時に勝手にあだ名で幸を呼んだ。

 一方の幸は先刻の粗相のインパクトも含め、同調して艦娘になれるという現実に驚きを隠せないでいた。何度も試せばいつかはと思っていたが、艤装とやらの種類が変わった途端にまさか本当に同調できるとは思わなかった。心のどこかでは艦娘とはどうせ非現実の存在なのだと疑っていたからかもしれない。
 だが現に、今艦娘である生徒会長光主那美恵、そしてすでに艦娘になってしまった同級生、内田流留がいる。幸自身は艦娘になりたくて何度も試してきた。それがいざ叶うと分かると、その先の思考が続かない。
 もともと口ベタな幸は、結果がどうであれ、普段の口調での返事しかできなかった。

「あ……う……はい。よろしくお願いします。」


 その返事を聞いた瞬間、那美恵は叫び声をあげて飛び上がって喜びを表した。
「やったーーーーー!!!やっと、やっと!三人集まったーー!!うぅ〜うれしいよぉ……。」


 歓喜のあまり那美恵は下級生がいるにもかかわらず、泣き出してしまった。それは、ついに自分の高校から正式に制度に則って艦娘が誕生することになるからだ。そばにいた三千花も親友の涙につられて涙を浮かべている。さらに流留ももらい泣きをしている。ただ彼女の場合は那美恵の夢や目的を分かっていないため、本当にただのもらい泣きだ。

「うぅ〜、よかったですね、会長。なんだかよくわからないけどすぐに次の艦娘になれる人が見つかって何よりですよ!」
「よかったわねなみえ。これであなたの目的が叶うわ。あとは四ツ原先生に連絡して、正式に艦娘部発足だよね?」
「うん。そうそう。あ、その前にこれだけはきちんと確認しておかないとね。」

 そう言って那美恵は幸に向かってあることを確認する。
「ねぇ神先さん。艦娘部に入ってくれない?艤装と同調できたのだから、入ってくれるとあなたの学校生活も艦娘生活もどっちも安心して過ごせるようになるんだ。どうかな?」

 それを聞いた幸はうまく言葉を紡ぎ出せないでいたが、十数秒後にやっと落ち着いて返事をすることができた。直後の心境はどうであれ、彼女の決意するところは決まっていた。
「は…はい。それ……もよろしく、お願いします……。」

 那美恵は彼女がきちんと返事をするのを待ってあげた。そしてやっと聞けた返事を受けて、再び叫び声を上げて喜びを示した。
「いぇす!!いぇす!!三千花さん。やりましたよ〜ついにわたくし光主那美恵、やり遂げましたっすよ〜!」

 その喜びを親友の三千花に向けておもいっきりぶつける。その矛先となった三千花は那美恵からまとわりつかれて少々うっとおしいと思ったが、過剰に喜ぶのも無理もないかと今回ばかりはスリスリしてくる親友の思うがままにさせてあげることにした。


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 神先幸から入部の意思をしかと確認した那美恵は、職員室に行き阿賀奈を呼んでくることにした。阿賀奈はすぐに那美恵についてきて、視聴覚室へと姿を表した。

「ホントに部員3人揃ったのね!?」
「はい!あとはこのことを先生が鎮守府へ伝えてくださればうちの高校の艦娘部、正式に発足ですよ〜!」
「よかったわね〜光主さん!先生も顧問として嬉しいわ〜。で、新しい部員というのが1年生の神先幸さんね?」

 阿賀奈から名前を呼ばれて幸は緊張しながら返事をする。
「は、はい!」

 噂では変な先生と聞いてはいるが、幸にとってはどのような素性の人であっても先生は先生。敬う対象の一人。そして自分は誰からも印象が薄いと自覚しているが、そんな自分をひと目見ただけで一発で名前を言って呼んでくれた四ツ原阿賀奈を、信頼できそうな先生と瞬時に認識した。

「じゃあ先生これから提督さんに連絡しちゃうね?他になにか伝えることはなーい?」
「あ、そうだ先生。これは先生に伝えてくれって言われたんですけど、今度、川内になる内田さんの着任式があるんです。先生の都合を聞いておいてくれと言われたんですけど、いつ都合がよろしいですかぁ?」

 那美恵は午前中に鎮守府に行ってきた時に提督からお願いされたことを阿賀奈に確認した。すると阿賀奈はいつでもよいとの返事をしてきた。
 それを受けて那美恵はそのことも阿賀奈の口から提督に連絡してもらうことにした。

 今日という日は那美恵たちにとって大きな動きのある日だった。一度に、正式に、2つの艤装の同調の合格者が出たのだ。那美恵は鎮守府外への持ち出し目的のための同調なのでカウントしないとして、鎮守府で川内の艤装と流留、学校で神通の艤装と幸。流れが自分の思うがままの展開になってきているのを那美恵は感じ始めていた。
 放課後に神通と神先幸の同調が成功したので、後日鎮守府で彼女は再び神通の艤装と同調を試すことになる。その時を持って幸も正式に鎮守府Aの艦娘として認められる。
 着任式は川内と神通の二人同時になるだろうと那美恵は想像した。そうなると自分の時以上に盛り上がる。いや、自分が盛り上げないといけないとある種使命感に駆られた。

 その日は阿賀奈から鎮守府に連絡してもらうことにし、後で阿賀奈からその後の流れを教えてもらうことにした。
 艦娘の展示もこれで役目を終える。学生艦娘制度に必要な艦娘部、そしてその部に必要な最低部員数3人と顧問の教師。いずれも揃ったためだ。展示物はこのままゴミとして捨ててもよかったのだが、せっかくの出来だから取っておきましょうと阿賀奈が言ったため、しばらくは生徒会室で保管することになった。

 学生の文化祭レベルの内容と演出ではあるが、その出来を提督や鎮守府Aの他の面々が認めたため、 そののち、 展示の一式は鎮守府Aで公式に引き取り、艦娘の活動を世に伝える資料の一つとして保管されることになる。