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同調率99%の少女(10) - 鎮守府Aの物語

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--- 1 川内の艤装



 流留の問題が一応の収束を見た次の日。生徒会本来の仕事も適当に片付いて落ち着きを取り戻した生徒会室。那美恵は大事なことを思い出した。それは、エネルギー切れを起こした川内の艤装のことである。
 明石には学校から来校の許可をもらっておくから待っててと伝えたその日から数日経っていた。これはまずいと思い、那美恵は学年主任を経由して教頭・校長に明石の来校の許可を貰いに行った。

 教頭から許可をもらい、改めて明石が来る予定の日程を聞くように言われたので、那美恵はすぐさま明石に連絡を取る。ほどなくして明石からメッセンジャーで連絡が来た。

「明日でいかがですか?ついでにちょっとよい連絡があります。それを早く伝えたいのです。」
「おっけーです!じゃあ学校に伝えておきまーす。伝えたいこと、なになに!?」
「それは、ひみつ、かな〜(*´艸`*)」

 軽い文面で締められた明石のメッセージを見て那美恵は頭に?を2〜3つ浮かべた。あの明石のいうことだから自身が知らぬ機械面で何かワクワク胸躍る事でもあったのだろうと、思うに留めることにした。
 足取りは行きより多少軽く、那美恵は職員室から生徒会室への廊下の歩みを進める。生徒会室の扉を開けると、三千花と流留がすぐに駆け寄ってきた。
「ねぇねぇ、どうでした?明石さんっていう人はいつ頃来られるんですか?」
急く流留に対し三千花は落ち着きはなった口調で那美恵に尋ねる。
「どうだった?先生方の許可は……なんかそのニンマリした顔は……もう聞かなくてもわかったからいいわ。」
「え〜〜〜みっちゃんに聞いてもらわないとシックリこないよぉおお!!」
 スイッチが微妙に入った那美恵は中腰で三千花に擦りよって両手を伸ばす。三千花はため息をつきつつその手をパシンと弾いて答えを求める。
「あ〜もう。あんたは妙なところでふざけるのやめなさい!いいからさっさと言え。」
 眉間にしわを寄せて厳しくツッコむ三千花。親友がキレるのはいつものことだが、今回はそのキレツッコミ具合に本気の苛立ちが見え隠れしたため、那美恵はつきだしてつぼめた唇を真一文字に戻し、にやけて細めた目を普段の大きさに戻して口を開いて再開した。
「はいはい。おっけぃですよ。まぁある意味あたしの顔パスってやつ?教頭先生もサクッと頷いてくれたよ。そんでね、明石さんは明日来るってさ。」
「明日って……また即決したわね。明石さんってそんな思い切りのいい人だったの?」
「さぁ〜? あたしとしては早ければ早いほうがいいから、明石さんナイスッって思ったよ。」
 三千花も那美恵もこの場にいない人物への意味のない問いかけは早々に止め、明日の明石の到着を期待してその日の残りの時限を過ごすことにした。


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 翌日、昼休みの時間が過ぎて間もない頃、那美恵の高校の校門をとある車がくぐり抜けた。時間はお昼頃と聞いていた那美恵は授業が終わると自身の昼食の弁当を三千花に預けさっそうと教室を飛び出し、校舎を出て校門のそばで待っていた。
 そしてその車が明石のものだと気づいた。那美恵が駆け寄ると、車の前方のミラーが開いて中の人物が指と声で合図をした。
「やっほ!那美恵ちゃん。工作艦明石、到着しました!」
 車の窓越しに那美恵に挨拶をした明石を見て、那美恵は満面の笑みで車の中にまで顔をつっこまんばかりに乗り出して出迎えた。
「明石さんいらっしゃ〜い。駐車場はこっちですよ。案内します。」
 那美恵の案内で駐車場に車を停めた明石は、車両の後部に積んでいた大小あるいくつかの包を那美恵に見せる。
「これ、なんですか?」
「これはね、艤装の交換部品と工具箱。あとこっちは艤装のコアの交換用バッテリー。ま、燃料みたいなものね。あとこっちは……ま、それは落ち着いた場所で、ね?」
 那美恵が尋ねると、明石は最初はすらすら答え、あとはもったいぶらせた笑い方をして言葉を濁す。

 那美恵は台車を持ってきて、機器の入った包と箱を載せて明石を案内し始めた。
 お昼時、廊下を歩く生徒は非常に多い。ただでさえ那美恵は普通にしてても目を引く。そんな生徒会長が生徒でない、しかも大人の女性を連れて歩いているのは非常に注目される。キョロキョロと若干挙動不審になる明石は那美恵に弱々しく尋ねた。
「な、那美恵ちゃん?なんか私、浮いてますよね〜。お姉さんなんだか恥ずかしいです……」
「恥ずかしがるなんて明石さんもまだまだだなぁ〜あたしは見られるのなれっこですから。気にしないでください!」
「気にしないでって言われてもねぇ……」
 事実那美恵は平然としている。時折他の生徒から声をかけられ、那美恵は挨拶を返したり冗談めかしたツッコミを返すなどして大半の生徒に素早く対応している。そんな気さくで気の利く彼女を感心した様子で明石は見ていた。

 明石の現在の格好は女性用のビジネススーツである。工作艦明石の制服はあるにはあるが、あの制服は公共の面前ではさすがに恥ずかしいと本人は感じていた。鎮守府や出動海域では非常に動きやすくて丈夫、汚れを気にしないで済むが、25歳の明石奈緒は一般人の目の前でミニスカを履く勇気はなかった。
 ぱっと見大人の女性が!と校内ではヒソヒソ騒がれるが、格好が格好なので、すぐに生徒は興味を移り変える。


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 那美恵と明石、そして台車はエレベーターを使って上部の階に上がり、そして生徒会室に辿り着いた。川内の艤装は生徒会室に保管しているためだ。
 ガラッと戸を開けると、そこには三千花ら生徒会の面々がいた。プラス、三戸の隣には明石が知らない顔がそこにあった。
「おまたせー。明石さん連れてきたよー。」
 那美恵が三千花らに報告すると、三千花たちは明石に挨拶をした。
「お久しぶりです。明石さん。副会長の中村三千花です。本日はご足労いただきありがとうございます。」
「書記の三戸っす。いや〜明石さんに会えるなんてなんだかいいっすねぇ〜」
「同じく書記の毛内和子です。本日はよろしくお願いします。」

 すでに知っている顔に明石は挨拶し返す。が、唯一知らない顔がいるので少し戸惑った様子を見せた。
「こんにちは!皆さん元気にしてましたか? ……えっと。あちらの娘は?」
 那美恵は台車を部屋の脇に置き、その足で三戸の隣にいた娘のところに向かい、彼女の肩を抱いて明石の前に連れて来て紹介した。

「紹介するね!こちら、内田流留ちゃん。なんとですね〜、この度、川内の艤装と同調できたその人です!!」
「は、初めまして。内田流留です。合格しちゃいました。んで、艦娘部に入ることになりました。」
 ぎこちない様子でお辞儀をして明石に挨拶をする流留。それを受けて明石も自己紹介し返す。

「あら!あなたがですか!? はい初めまして。私は鎮守府Aの工廠、つまり艤装のメンテをするところですね。そこの工廠長をしております、工作艦明石こと本名明石奈緒、25歳独身です!」
 あっけらかんとした言い方の中にも大人としての立ち居振る舞いが感じられる明石の自己紹介に、流留は少し圧倒されつつも、初めて見る那美恵以外の艦娘と鎮守府の存在に感動を感じざるを得ない。