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同調率99%の少女(10) - 鎮守府Aの物語

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「ど、どうも。よろしくお願いしまっす……」
 最後にどもりつつも流留は緊張を伴った挨拶を返した。


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 挨拶もほどほどに、那美恵たちは川内の艤装を部屋の広い場所に運びだし、さっそく明石に診てもらうことにした。

 明石は持ってきた工具箱をあさり、いくつかのチェック用の機器を川内の艤装のコアユニットに接続して状態を確認し始めた。
 その様子はただの高校生である那美恵たちにはさっぱりである。そのため明石の作業をじっと見ているしかできない。明石は途中で顔を上げ、那美恵たちに一言言って促す。
「あの、みんな。私のことは気にせずにお昼食べてていいですよ?」
「それだとなんだか明石さんに申し訳ないですし……。」
 三千花が申し訳なさそうな表情で明石に言う。だが明石は手に持った工具をぷらぷらと振ってまったく気にしない様子で返す。

「学生さんはそんなこと気にしなくていいんですよ〜。」
「はぁ。それでは……。」
 それではということで明石に断った三千花は那美恵たちに目配せをし、明石が作業をするかたわらで昼食をとることにした。

 昼休みも半分を過ぎた頃、早めに食事を終えていた三戸と流留は明石のそばで彼女の作業の様子を眺め見ていた。明石は若手ながらさすが製造会社の技術者なだけあって、川内の艤装をテキパキと確認していく。そんな彼女に流留は質問してみた。

「あの、明石さん。そういう機械いじりって、女性がするのって抵抗とかないんですか?周りから何か言われたりとか。」
 明石は手を止めず視線は艤装に向けたまま流留の質問に答える。
「いいえ。むしろ艦娘の世界では重宝されるのよ。艦娘は圧倒的な女性の職場だからね。同じ女性の技術者は相談しやすいとかなんとかで、うちの会社でも何かと女性の技術者を近年では多く採用して育成して、工作艦明石として派遣されることが増えてるの。」
「へぇ……」
「まあ、そもそも機械触るの好きっていう人しか集まらないから、むしろ充実した職場ですよ。私、従兄弟たちの影響で昔からプラモ作ったり、電子工作するの好きだったの。あと下に妹がいるんだけど、あの子も私に負けず劣らずね。」

「あ!あたしもプラモづくりとかそういうの好きです!」
 流留は思わぬ形で自分に似た境遇の人を見つけ、明石に一瞬で心惹かれる。それはどうやら明石も同じだった様子。明石は顔を上げて流留を見る。流留はパァっと表情を明るくした。
「あら!そうなの!?じゃあ○○は?」
「はい!知ってますしたまに作ります。」
「じゃあ△△は?」
「作品は見たことあります!」

「あらやだ!内田さんだっけ?流留ちゃんでいいかな?」
「あ、えぇとはい。なんとでも。」
「私ね、会社の人や提督以外で話の合う人欲しかったのよ!艦娘の中に工作とかそういう趣味のわかる人がいるなんてもうさいっこう!」
「あたしもです! 生徒会長!あたしなんだか鎮守府が楽しみになってきましたぁ!」
 明石の言葉に同意しその勢いで、まだご飯を食べていた那美恵に向かって腕をブンブン振って喜びを伝える。那美恵はウンウンと頷く。

「流留ちゃん、あなたならきっとうちの妹とも話が合うはずよ。妹にもいつかうちの鎮守府に艦娘試験受けさせるつもりだから、もし艦娘になれたら仲良くしてあげて! 今もたまーにうちの鎮守府に妹来るのよ。その時に改めて紹介してあげる!」
「はい!」


 すっかり趣味で意気投合する流留と明石を見て、那美恵と三千花は微笑ましく思った。
「二人が話してることあたしゃぜーんぜんわかんないけど、ともあれ明石さんと話が合うなら何よりだねぇ。」
「私もさっぱり。内田さん、今までで一番良い笑顔なんじゃない?」
 那美恵と三千花のそばにいる和子もそれに頷いた。

「俺もわかるっすよ明石さん!俺も仲間にいれてよ内田さぁ〜ん!」
 意気投合して関係が進んでいく流留と明石の様子を羨ましく思ったのか、必死に自己アピールをする三戸。そんな三戸に流留が突っ込んだ。
「アハハ。三戸くん必死すぎぃ〜。わかったわかったよ。」
 流留は三戸の肩をバシバシと叩いて今この場の逆紅一点をかまってあげるのだった。


--

「さて、メンテおわりました!」
 流留たちと話しつつも作業を続けていた明石がそう宣言した。時間にして12時45分すぎ。那美恵たちも昼食を食べ終わり、各自思い思いのことをしていた。明石の言を受けて、那美恵たちは視線を明石に向け近寄る。

「ありがとうございます、明石さん。で、川内の艤装が動かなかったのってなんだったんですかぁ?」
 那美恵がそう質問すると、明石は川内の艤装のコアユニットを手に持ち、回答し始める。

「うん。バッテリー切れと、あともう一つ問題があったの。それは中のケーブルや部品をちょこっといじっておいたからもう問題ないはずですよ。」
「ありがとうございます。変な問題とかなくてよかったですよ。」
 と、流留は感謝の言葉を述べた。

「それとですね、同調できる人を見つけたなら、もう鎮守府に戻してもいいんじゃないかな?どうですか?」
 そう提案する明石。彼女のいうことももっともだと那美恵は思った。しかしそれではあと残り、神通の艤装が届くまではタイムラグができてしまう。一旦艦娘の展示をやめれば生徒たちの興味はすぐになくなってしまうかもしれない。那美恵はそれを危惧している。

「うーん。そうしてもいいんですけどぉ。次は神通の艤装で同調出来る人も探したいんです。そのためには早めに神通の艤装も持ってこられるようにしないと。今やってる艦娘の展示で艤装の展示に合間が空いちゃうと、みんな興味途切れたりすると思うんです。そうなるとちょーっと探しづらくなるかなぁって。」

 那美恵の心配をよそに明石はニコニコし始めた。那美恵が明石の様子を訝しむと彼女はコホンと冗談らしく咳払いをして、自身の持ってきた数々の包の中から一つのものを那美恵たちの前に差し出した。


「「? なんですか、これ?」」
 ほとんど同時に那美恵と三千花が質問をした。


「実はですねー。なんと!神通の艤装のコアです!神通の艤装一式、鎮守府にもう届いてるんですよ。予定より遅くなったみたいなんですけど、ようやくです。」

 明石の言葉を聞いた瞬間、那美恵は飛び上がって喜びを表した。
「えぇーーー!!?ホントですかぁ〜〜〜!? じゃあこれ……あ!あたしまだ同調試してないですよ!」
「えぇ。実は提督にナイショで、持ってきちゃいました。コアユニットだけでも同調は試せるし、これくらいなら、ね?」
「ほほぅ。明石さん、あんたも悪よのぅ〜」

 冗談めかして明石の肩を軽く叩いてツッコミを入れる那美恵。明石もそれにノる。
「いえいえ。那美恵ちゃんほどじゃないですよ〜。」
「法律にないからって、この二人はこんなことしててホントにいいのかなぁ……?」
 二人の様子を見て三千花は頭を抱えて不安を感じるが、彼女のそんな心配は、那美恵たち二人にはまったく響かない。