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同調率99%の少女(10) - 鎮守府Aの物語

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 流留の素直な感想。それに提督が答えた。
「うちは最前線じゃないからのんびりしてる方なんだよ。深海凄艦の侵攻が激化してると言われてる九州や和歌山あたりの鎮守府に所属する艦娘たちは大半が職業艦娘で、皆すごい屈強だったよ。俺は管理者研修のとき防衛省の人たちに連れて行ってもらったことあるけど、雰囲気がまるで違ったよ。」
「へぇ〜!そうなんですかー。」
 と流留は相槌を打った。
「あぁ。うちの鎮守府でさすがにあそこまで徹底するのは無理だろうと思う。それから俺の考えは甘いかもしれないけど、艦娘というのは艤装と同調すれば普通の人の数倍は強くなるからさ、その担当地区に応じた艦娘の運用、教育の仕方があっていいと思うんだ。もちろん最低限の教育はするけど。」

 提督の言葉を聞いて皆今後のことに不安を持っていたのか、質問や感想を言い始める。最初に口を開いたのは時雨だった。
「でも提督。一応ひと通りの訓練したとはいっても、やっぱり戦うのそれなりに怖いです。なんだかんだでしっかりした訓練や勉強できてるとはどうしても思えないです。よその鎮守府の時雨や五月雨がどうなのかはわからないけれど、少なくとも僕たちは……中学生だし、那珂さんや五十鈴さんだってまだ高校生ですし、なんというかこのままでいいのかなって疑問に思います。」

 提督は言葉を発さずに相槌を打つ。次に村雨が自身の気持ちを打ち明ける。
「うちの鎮守府、10人くらいしかいませんけど、本当に私達だけでこの先大丈夫なんですか?いくら最前線じゃないって言っても、最近立て続けに出撃や警護の任務があって今はさみや私達が毎回出てるじゃないですかぁ。私達一人ひとりの力が十分足りてるとは思えないですし、もっと艦娘増えないと私達の負担が増えます。今だと一人欠けても任務が進められなくなっちゃうと思うんです。」

 村雨の不安に提督が答える。
「村雨、君の不安ももっともだ。この1ヶ月ほど、かなり君たちの負担が大きくなっていることは本当申し訳ないと思ってる。ちょうど任務が舞い込む数が多いタイミングというのか時勢というべきなのかな。今が落ち着けばまたのんびりできるはずだよ。それに今回、光主さんの学校から内田さん、神先さんの二人が加わることで、だいぶ変えられると思うんだ。二人は高可用性な軽巡洋艦担当になる。駆逐艦の君たちの負担も減るだろうし、作戦の幅も広がるはず。もちろん二人にはこれからしばらく訓練を受けてもらって早く慣れてもらっての話だが。」

 提督の言葉の中で触れられたので流留は口を挟んだ。
「ねぇ提督。その訓練、どのくらいかかるの?」
「えーっと。各艦の種類に応じた基本訓練の内容が提示されてるんだ。光主さんもそれをこなしてもらって今の那珂になってる。光主さんは確か2週間ほどだったっけ?」

「うーんとね。あたしは実質的には1週間と3日だよ。」
「へぇ〜那珂さんそれくらいで訓練終わったんですか?」
 感想を言ってきたのは村雨だ。
「そーだよ。そういえば村雨ちゃんたちはどのくらい?」
「私たちは揃って訓練して、みんな2週間でしたよぉ。」
 村雨から確認の視線を求められた時雨と夕立は互いに顔を見合わせながら訓練に費やした期間を打ち明ける。五月雨はそもそも初期艦で訓練内容が異なるので口を挟まずに黙っていた。村雨たちの言葉に提督が補足する。
「駆逐艦と軽巡洋艦じゃ必要な基本訓練が違うからね。一概には言えないけど、毎日みっちりというわけじゃないから、駆逐艦で約2週間というのは普通かな。那珂の1週間と3日はちょっと早いと評価されるレベルかな。」
「ふーん。なみえさんで1週間と3日かぁ。あたしたちだとどのくらいになるのかねぇ?」
 流留は幸の方を見ながら自分らがかかる訓練時間を想像する。当然何もわかっていないので想像できるはずもなく、同意を求められた幸は無言で首を傾げるだけであった。

「ねぇ提督。なんだったらあたしが二人の面倒見るよ?」
二人の様子を見ていた那美恵が提督に提案した。
「あぁ。そうしてもらえると助かる。それで訓練が終わったら、軽巡洋艦の君たちをリーダーにして、駆逐艦の五月雨たちをつければ2部隊ほどにわけて運用できるようになる。そうすれば出撃任務もかなりやりやすくなるかな。……本当は小回りの効く駆逐艦を増やしたいんだけど、艤装の配備が希望通りには来なくてさ。」

「次に配備されるのなんだっけ?」
 那美恵がそう提督に聞くと、提督は五月雨に視線を送り答えを求めた。それを受けて五月雨は飲みかけていたジュースのグラスを置いて呼吸を整えた後、提督の代わりに答える。
「ええとですね。もうすぐ軽巡洋艦長良と名取、その後駆逐艦黒潮、重巡洋艦高雄です。大本営の方からちょろっと聞いたんですけど、その後はもう一つ重巡洋艦、それから時期はわかりませんけれど、空母の艦娘の艤装が行くかもよと言われました。」
「一気に4人?6人?かぁ〜。どんな人が同調できるんだろ、楽しみぃ〜!」
 那美恵が期待を持って言葉を弾ませる。だが提督の心境は複雑だ。

「気軽に言ってくれるけどな、募集かけて採用試験するのしんどいんだぜ? その間明石さんたち工廠の人たちの作業も時間割いてもらわないといけないし、広告出すのだってもらってる予算からやりくりしないと。経理ができる人を艦娘に迎え入れたいくらいだよ……。」
「アハハ……管理職って大変なんだねぇ。」
 那美恵がそう茶化すと、それまで不安げな気持ちにより表情を暗くしていた時雨や村雨たちはやっと表情を柔らかくし、笑顔を見せた。

「ねぇなみえさん。またうちの学校でその4〜6人の艦娘の募集引き受ければ?」
 流留がそう提案した。
「あ〜それいいかも。どう提督?」

 那美恵は提督の心境を知って少しでも彼の負担や悩みを減らせればと、先の川内・神通と同じやり方で艦娘探しを引き受けるつもりで流留の提案に乗ることにした。が、提督は首を横に振ってそれを拒んだ。
「いや、俺の考える艦娘になって欲しい人・タイプがあるんだ。せっかくの提案申し訳ないんだけど、今回は普通に採用したいんだ。ゴメンな。」
「ううん。いいですって。あたしもなんとなく言っただけですし。」と流留。
「あたしも流留ちゃんの案いいかなぁ〜って思ったけど、提督の考えが一番だからね。また今後もらえるんならお願いってことで。」
「光主さんには、内田さんと神先さんの教育を再優先にお願いしたい。そしてタイミングが合えば、出撃任務や依頼任務の現場に早く復帰してほしい。」
 提督の考えを聞いた那美恵たち3人はそれぞれのタイミングで頷いた。