同調率99%の少女(10) - 鎮守府Aの物語
それを見ていた中学生組の一人、夕立が訴えかけるように声を上げた。
「前に合同任務から帰ってきた後からの約1ヶ月、那珂さんがいなくてあたしたち大変だったんだよぉ〜!頼れる人五十鈴さんしかいなかったしぃ、あたしたち4人でさぁ〜。」
「ゴメンね〜。でも妙高さんと不知火さんがいるじゃない。あの二人は?」
「妙高さんはママっぽいから、むしろ鎮守府に居てくれたほうがうれしいっぽい。ぬいぬいこと不知火ちゃんは別の中学校だし、あまりあたしたちと話してくれないし、正直あの子よくわからないっぽい。てかてーとくさん、ぬいぬいをあまりうちらと組ませないよね?わざと?」
夕立が鋭く指摘すると、提督は焦りつつ答えた。
「いやそんなつもりはないんだが、彼女は一人で来てるし他校の生徒と一緒だと気まずいかなと思って。」
「提督。それは余計な配慮だよ。せっかく同じ鎮守府に勤めてるんだし、僕たちはできれば出撃のときだって仲良くしたいよ。」
「私もそう思います。私にとっては初めての艦娘仲間ですし、今回久々に一緒に出撃できて嬉しかったです。不知火ちゃん無口ですけど楽しそうでしたし。」
時雨の意見に五月雨が賛同する。
「そうか。じゃあ今度から編成はもっとみんな均等になるようにするよ。」
「ねぇ、あたしもその不知火さんと出撃してみたいな〜。妙高さんとも。提督。あたしたちの方ともお願いね?」
那美恵も時雨達の意見に賛成だった。今まで駆逐艦といえば五月雨たち白露型の艦娘としか仕事をしたことがなかったためだ。
「あぁ。わかってるって。」
提督は時雨たちだけでなく、那美恵からも押される形になり、彼女らをなだめるようにその要望を承諾した。提督は、川内と神通の着任式が成ったら、そのタイミングで全員参加の親睦会を開こうと考え始めた。
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その後20〜30分会話が続き、頃合いを見て提督は全員に号令をかけお開きとさせた。レストランを出て駅に向かう一行。その間も五月雨や時雨たち中学生の間、那美恵たち高校生の間でぺちゃくちゃおしゃべりが続いていた。提督や明石、技師の女性は子どもたちの様子を後ろから眺めて、静かに2〜3の会話を交わすのみである。
駅のホームで電車を待つ間、那美恵はふと思いついたことがあり提督に話しかけた。
「ねぇ提督。流留ちゃんやさっちゃんは当然だけど、あたしもなんだかんだで鎮守府のみんなをみんな知れてないと思うの。」
「うん。」
「それでね、もし提督がノってくれるんならの話なんだけど、いつかのタイミングでみんなでパァ〜っと飲んだり食べたりして親睦を図れる場を作らない?」
那美恵の発言の鋭さに驚いた提督はすぐに言葉を返す。
「おぉ。実はさ、俺もそれ考えてたんだよ親睦会。そうかそうか。光主さんもそういう考えしてくれたのか。」
「え?提督も考えてたんだぁ。あたしたち気が合うねぇ〜?」
那美恵は提督の腰を自身の左肘で軽くツンツンと突っついて口でも物理的にもツッコミを入れる。提督はややのけぞり気味になりながら、側にいた明石や流留たちに聞こえるように返す。
「そうだなぁ。気が合う人がいるってのはいいもんだわ。ぶっちゃけ俺、艦娘制度の中では知り合いいないしさ、こう見えて寂しいんだぜ? 明石さんは同じ技術系で話題合うし気楽なんだけど、この人暴走すると手を付けられないしさ。たまに何考えてるかわかんねぇ人だし。」
「あらあら?私の右隣りで何か失礼な事言ってる人いますね。誰でしょうか?」
わざとらしく明石は顔をキョロキョロさせて最後に提督を笑みを含んだ睨みを向ける。
「おや、聞かれてしまったかな? それはそうと、ほかは歳の離れた娘ばかりで話も合わないし。でも内田さんは俺と趣味ドンピシャっぽいから、実は内心かなり嬉しかったんだよ。」
「アハハ。あたしもまさか提督が同じオタ趣味な人だなんて思わなかったですよ。これからの鎮守府勤務楽しみです!」
流留は提督や那美恵の前に幸と一緒に立っていたが、クルリと後ろを向いて提督に向かって言った。
「そして真面目な考えるところ、そこでは光主さん。なんか君とフィーリングが合いそうな感じがするんだけど、こんなこと言ったらおかしいかな?俺自意識過剰かな?」
「ううん。そんなの気にしないでいいよ。提督ちょーーっと頼りないところあるけどそれがいい味だってみんな思ってるだろーし、気が合うならあたしも遠慮なく提督にツッコミ入れられるからオールオッケーですさ、西脇さんや。」
フィーリングが合いそう、はっきりとそう言われ那美恵は内心ドキドキしつつ、照れをひたすらに隠して普段通りの茶化しで提督をからかって会話の収束先を綺麗にそらしてまとめる。
やはりこのおっさんは自分で恥ずかしいこと、相手をドキッとさせる発言してる意識あまりないのか?と那美恵は呆れて失笑する。
「言ってくれるね……。まぁいいや。内田さんや明石さんも、親睦会開くのにはどうかな?賛成してくれるかな?」
「いいと思いますよ。私の同僚の○○さんとか、なんだかんだであまり艦娘の子たちと話したこと無いって人いますし。」
「あたしも賛成ですよ。ワイワイ騒ぐの大好きです。」
「賛同者がいてくれるなら助かるよ。それじゃあ日取りは追って伝える。それまでにアイデアとかあったらくれるとうれしいな。」
提督の言葉に那美恵は間延びした声で同意の返事をした。
「はーい。ところでさ、五月雨ちゃんたちには賛同求めなくていいの?」
「あ〜、まぁ彼女らはいいだろう。聞かなくても五月雨は多分同意してくれるだろうし。時雨たちも反対はせんだろう。」
提督の言い方が少し気になった那美恵。流留や明石は気づいていない様子だったので那美恵はそれを表現を隠してつぶやくのみにした。
「そっかそっか。あの子たちを心から信頼してるんだね、提督は。」
「ん?あぁ、まぁそんなところかな。」
しばらくして電車がホームに到着したので乗り込んだ一行は、それぞれの自宅へと帰っていった。
作品名:同調率99%の少女(10) - 鎮守府Aの物語 作家名:lumis