二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

同調率99%の少女(10) - 鎮守府Aの物語

INDEX|8ページ/26ページ|

次のページ前のページ
 

 流留の質問や不満を適当にあしらいつつ那美恵は先頭に立って歩いていると、バスの停留所から見知った顔の少女が降りてきて、那美恵たちと視線が絡まった。
「あ!凛花ちゃん!! おひさ〜!!」
「那珂。お久しぶり。……あら、そちらの人は?」
「うん。うちの学校の後輩。んでね!なんと、この度軽巡洋艦川内に合格した子なんだよー! ほら内田さん。艦娘の先輩に挨拶挨拶!」
 突然知らぬ少女と話しだした那美恵をポケーっと見ていた流留だが、急に挨拶をふられたのでとにかく挨拶をすることにした。
「はい。あたし、内田流留といいます。○○高校1年です。艦娘部に入りました。えー、この度、川内っていう艦娘に合格しました。よろしくお願いします!」
「初めまして。私は○○高校2年、五十嵐凛花よ。鎮守府Aの軽巡洋艦五十鈴を担当しています。よろしくね。」
 凜花は丁寧な仕草と言葉遣いで流留に挨拶を返した。

 3人は停留所の真中で会話していたので一旦道の端に行き、会話を再開する。
「凛花ちゃん今日はどうしたの?」
「私? 私は昨日今日と出撃任務だったのよ。これから帰るところ。」
「あー。凛花ちゃんのとこは艦娘部ないから、じゃあお休みして……?」
「えぇそうよ。このために学校2日も休んだのよ!ねぇ那珂、聞いてくれる!? なんかね、不知火のところとも学校提携してたっていうのよ提督!知らぬ間に! なんなのよ!私のところは無視かよって話よ。ったくもう。立て続けに休んじゃうと授業に追いつけなくなるから困るのに言うに言えないこの気まずさ、あなたならわかるでしょ!?」
「アハハ……うんうんわかるよぉ〜」

 堰を切ったように凛花は愚痴をこぼし始め、那美恵と流留にぶつけまくる。相当溜まっている様子が伺えた。学校提携してやっと軌道に乗りだした那美恵は不満を吐き出す凛花の手前上、色々言い返しづらい状況だった。
 凛花の愚痴の嵐のまっただ中にいながらふと、那美恵は不知火のことが気になった。自分の着任式のときにいたのを思い出した。彼女も中学生とのことだが五月雨たちとは違う学校らしく、鎮守府Aには一人で来ていた。どうやら同じ学校の艦娘仲間はいないとの話だった。那美恵は不幸にも彼女と出撃任務をする機会がなくこの数ヶ月過ごしてきたため、不知火のこと、彼女の学校のことはまったくわからない。

「まぁまぁ。きっと提督は順番決めてるんだよ。うちの高校でしょ?それからその不知火さんの学校でしょ?きっとこれから凛花ちゃんのために動いてくれるんだよ。期待して彼を待っててあげたら?」
「へ? 私の……ために!? も、もし考えてくれてたんなら、まぁ、もう少し待っててあげないこともないわね。えぇ。提督もお忙しいでしょうし仕方ないわ。」
 那美恵の言い方により凛花は妙に提督を意識し始め、モジモジしながら自分で納得した様子を見せる。
「そーそー。」
「ふぅ……。そういえばあなたはどうしたの?まだ任務はないんじゃないの?」
 落ち着きを取り戻して冷静になった凛花が那美恵に質問してきた。
「うーんとね。川内の艤装をこれから返しに行くところなの。提督に頼んで学校に持ちだしてたから、そろそろってことで。」
「ふぅん。艤装って外に持ち出せたんだ。」
「まー色々あってね。というわけでこれから、艤装を返すのと合わせて川内になる内田さんを連れて、提督と明石さんに会いに行くの。」
「なるほどね。あ、でもね。今日午後提督いなかったわよ。午後は五月雨が提督の代理でひーこら言ってたわ。行くなら明石さんだけじゃなくて五月雨のところにも顔出してあげたら?」

「あちゃー。提督いないのかぁ。せっかく新たな美少女を紹介してあげよーかと思ったのにぃ。ね、内田さん?」
「へっ!? な、なに言ってるんですか会長!」
 後頭部に手を当てておどけて残念がったかと思うと、隣にいた流留の方へ上半身だけ振り向いて視線を送る。自身が意識していなかったタイミングで話を触られ、途端に顔を真赤にして慌てふためく流留。彼女は、那美恵がこういう人をからかうお調子者なところの真髄をまだ把握しきれていない。
 流留のその様子を見てアハハと笑う那美恵と、どう反応したらよいのかわからず戸惑いの表情を見せつつ苦笑いする凛花。からかわれてると流留は気付き、那美恵に文句を言って怒る。
「ゴメンゴメン。今日のところは五月雨ちゃんと明石さんで我慢してね。」
「もー。どーでもいいですってば。」

 まだ頬を赤らめつつそっぽを向く流留と、彼女の肩に手を置いて弁解する那美恵。凛花はそんな二人の様子を見て、ため息混じりの笑いをこぼす。
「やっぱり、同じ学校の生徒同士って、いいわね……。」
「ん?なんか言った凛花ちゃん?」
「ううん。さ、二人はさっさと鎮守府行っちゃいなさい。早くしないと五月雨も明石さんも帰っちゃうわよ。」
「うん。いそごーいそごー。」
「はぁ。雑談で時間取られた気がする……。」

 自分で話を広げておきながら急かして鎮守府に行こうとする那美恵に、流留は少し呆れたという表情でツッコミにも満たない返しを口にするだけにしておいた。

「じゃあまたね。」
「うん。またね、凛花ちゃん。」
「失礼しまーす。」

 数分間雑談をしていた3人は別れ、那美恵と流留は鎮守府への道を急いだ。