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ラスト・キル

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泳いでいた瞳はもう迷わずに兄を見据えた。
「だったら・・・ここは・・・・」
輝一が言ったことが事実なら、“心”に触れることができたということは・・・。
「うん・・・ここは輝二の心の中の世界。」
「・・・・・。」
本当に俺の“心”なのかという理由からか、無意識に辺りを見回してしまう。世界は変わらず漆黒と輝く大地のみ。
そう簡単に納得できる事ではなかった。はい、ここは心ですよ。なんて教えられて納得する奴はそうはいない。

それに、もしそうだとしても、どうして・・・俺は心の中に来れたのだろう・・・・?

「・・・っていっても、信じられないよな」
俺がよほど怪訝そうな顔をしていたのか、輝一は苦笑した。
「・・・まぁ・・・・・な・・・・。」
「でも、信じてほしい。心の中が・・・存在するんだってコト・・・。」
「・・・・・。」
言葉は出なかったが、その代わりこくんと、首を縦に振る。返事として輝一は、ただ、何も言わず、微笑んでくれた。

見渡す世界は、黒と白が決して交わらず、ただ、境界線があるように分かれていた。善の感情と負の感情・・・・ということなのだろうか。
それはまるで、光と闇のように表裏一体で決して交わらないよう・・・

俺と輝一のように思えてならなかった。

「・・・・心はこんな感じなのか・・・?光と闇が交わらずに存在する感覚だけの世界・・・・」
ふと、そんなたわいもないようなことを呟いてしまった。ただ、本当に、不思議だったから。
「それは違う」
輝一は即答した。こちらを見る瞳は、真剣そのものだ。
「・・・え・・・」
その、はっきりとした物言いと、真剣な瞳に、少しばかり驚く。
「これは、俺の・・・闇のスピリットが入り込んだせいなんだ。本当の姿はこうじゃない・・・きっと・・・」
きっと、光あふれた世界なんだ・・・と輝一は顔を伏せて呟いた。
その時だ。
「・・・!!」
輝一の身体にノイズが混じり始めたのは。
あの時のような、消えていく予兆を告げるノイズ。
「輝一!」
いたたまれなくなって、無意味だを知りつつも、名前を叫んだ。輝一の身体は徐々に砂に飲み込まれるように歪む。また、それは酷くなってゆく。
まさか・・・・。
嫌な予感がする。止まっていた涙が逆流してきそうな出来事が起こる。
「輝二、ゴメン・・・時間が・・・ない・・・はやく・・・早く二つのスピリットを・・・光と闇を一つにしないと・・・・っっ!!」
声にも雑音が混じり、聞き取るのがやっとの位になっていく。ザ、ザと無機質で耳障りな音が酷く耳に残る。
「どうやってっっ!!」
目の前の事実に、声が裏返る。
「・・・・それは・・・俺にも分からないんだ・・・・ゴメン・・・ゴメン輝二っ・・・・・」
そう言って、輝一は苦しそうに顔を歪ませ、何の前ぶりもなく抱きついてきた。

暖かかった。
いつかのときと同じように、変わらずに、暖かかった。

絡んだ腕は徐々に強く抱きしめてきて、声は途切れ途切れに裏返り、嗚咽のようなものが混じってきた。

・・・・泣いて・・・いるのか?
顔が反対側にあったこともあって表情は見えなかったが、震えるからだと、吐息でそうだと、感じた。
それに、輝一が抱きついてきたときから、胸が痛かった。

「・・・っ輝一っっ」
胸の痛みに耐え切れず、涙する輝一に耐え切れず、抱き返した。
強く。
強く。
何処へも行かないように・・・・・・。

「輝二、ゴメン・・・俺・・・ここにも、・・・う、いられないんだ・・・・ほんと・・・はデジタルワールドじゃない・・・
俺たちの世界で・・・・ずっと・・・・・・・・・」

“ずっと一緒にいたかった”

ノイズが邪魔をして言葉にはならなかったが、確かに伝わってきた兄の心の声。
俺だって、そうだと、すぐに言いたくても、嗚咽が、苦しさが邪魔をして咽喉から出てくるのを抑えてしまっている。
やっと、出てきたのは・・・・
「お前は・・・死んでなんか・・・ない・・・・絶対・・・また、会える・・・・っ!」
希望。
「こうじ・・・・・・っっ」

輝一がまた強く抱きしめてくる感覚を最期に、辺りの均衡は急激に乱れていった。目の前の世界は歪み、確かにあった大地の重力も消えていく。音もない。
ただ、身体が焼けるように痛む。
それだけは、あった。
あのときに、この世界に来る直前の感覚が、また戻ってきたようだった。
だが、うっすらと見えた景色は違った。
世界は光だけ。
ぽつんと見えたのは、黒髪の長い、白装束を身にまとった幼い子供。
こちらに気づいたのか、その子供がこちらを振り向いた瞬間、光と闇が・・・いや、その融合体が俺たちを包みこんだ。
まるで、データのリボンのように。

気がつけば、輝一の暖かさも消え、先ほどの世界も見えなくなっていた。

「うっうわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!」
咽喉からは叫びが再発し、漏れる。
何か、熱い力が、膨張していくのが分かる。

そして、力は溢れ、俺はそれを身に感じた。
目の前は白かった。




輝一・・・お前は死んでいない。
これはただの願望かもしれないが。
生きていると・・・信じている。



だから、また会おう。









END
作品名:ラスト・キル 作家名:キッカ