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今宵、役者たちはしめやかに舞台袖に立つ

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Side:Flynn


 フレンは侍女の持ってきた懐中時計の中を確認し、胸ポケットに仕舞った。
 細いプラチナの鎖に繋がれたそれが収められたのを見て、傍で控えていた侍女は音もなくフレンに歩み寄ると、二輪の濃い青紫色をした花を恭しくも慣れた所作でその胸ポケットに挿し、ゆっくり辞儀をしてから下がる。ありがとう、と礼を言ってフレンが微笑いかけたところで、後ろの別室に繋がるドアの向こうでは黄色い歓声が上がり、若い騎士団長と彼の身支度を任された一人の侍女は顔を見合わせて苦笑した。

 「ご婦人の支度は賑やかだね」
 「今夜は特別でございますからね」

 二人の視線は揃って騒がしいドアの方へ流れ、そして、一抹の不安が過ぎり共にため息を溢したのであった。