あゆと当麻~Vivid boys and girls1
Vivid boys and girlsスクールデイズ
朝、一番に起きるのは征士。なんとも朝五時に起きて近くの空き地で素振りをする。
戻ってくると服を着替えて新聞を読みふける。
次に起きるのはナスティと伸。ほぼ同じ時間だ。
ナスティが朝食を作り、伸は弁当を作る。
その次に迦遊羅が起き、夜更かしでなかなか起きない亜由美を起こす。
悠然とダイニングルームへやってくる迦遊羅と対照的に亜由美はばたばたと走ってくる。
最後に起きるのが当麻。伸と征士が二人がかりで起こしてつれてくる。
そうして騒がしい朝食が始まる。
テーブルには各個人の御弁当がおいてある。
緑が征士、青が当麻、水色が伸、ピンクがナスティ、オレンジが迦遊羅である。
残る亜由美は黒。
ほぼ一年、休学状態だった亜由美が高校入学の際、弁当の入れ物の色を考えた所、こうなってしまった。
はじめは寒色系を選ぼうとしたがそれでは男三人と重なる。かといって暖色系もあまり色は残っていない。
それに亜由美は自分の色は闇色と思っていたことがあったから自然にそうなってしまった。もっとも少女らしい趣味を発揮して上蓋には和風の猫の絵が描かれている。
それを持って学生が早く家を出る。
伸とナスティはそれぞれ自分の車で職場である高校に向かう。
一家そろって同じ高校にいることになっているが、その六人が一緒の家に住んでいることは一部の人間しか知られていない。
たとえば、征士と当麻が同居しているだとか迦遊羅と亜由美が双子で一緒であるというぐらいの事実は知れ渡っているが。まぁ、学生四人がまとまって登校するからこの四人は同居しているというのも知られている。
そこでいつも亜由美は肩をせまくして登校する羽目になる。
なんと言っても校内三大アイドルのうち、二名と同居の上、一緒に登校するのだ。
自然とまわりの女子学生のすさまじい視線をあびることになる。
当麻と許婚と言う事実は学生の中ではほぼ知られていない。
知れたらただではすまないだろう、と亜由美はいつも思う。
しかし、最近どうも噂が立ち始めているようだった。
二人は付き合っているのではと言う噂が立って視線はいよいよ最悪な状態だった。
わー、と家を出た亜由美は歓声を上げた。
昨夜、降った雪がほんの少し積もっていたのだ。
うれしそうに門を飛び出て、滑って転ぶ。
「いたいー。すんすん」
泣き言を言う亜由美の腕を当麻が苦笑いしながら引き上げる。
「はしゃいで飛び出すからだろうが」
その様子に征士も迦遊羅も笑いを禁じえない。
「姉様、スカート大丈夫ですか?」
迦遊羅がハンカチを差し出す。
「うん。ちょっと濡れちゃった。ハンカチ持ってるからいい。ありがとう」
亜由美は迦遊羅に微笑むと自分のハンカチを取り出してスカートを適当に拭く。
亜由美が乱れたスカートを直してようやく四人は登校の路につく。
当麻が亜由美の手を握って亜由美は慌てる。
「だめだって。見られたらどーすんのよっ」
「それでまた転ぶのか?」
じとっと当麻に睨まれて亜由美が黙る。
寝起きの悪い当麻は朝、すこぶる機嫌が悪い。上に亜由美が怪我などしようものならとたんに不機嫌になる。
今朝は怪我をしなかったが少なくとも一つと半ぐらいの不機嫌は覚悟しないといけないようだった。
内心びくびくしながら亜由美は当麻に手をひかれて歩く。
一応、電車通学だからこの辺りには同じ高校の学生はまだいない。
まだ安心圏内だ。
てくてく歩くうちに駅に着く。
いつもの時間通り、いつもの電車に、いつもの場所に乗る。
朝の都内の電車は生き地獄だ。ぎゅうぎゅうに詰め込まれる。
早めの電車に乗ればいいが、それだとどうしても亜由美と当麻が乗り遅れてしまうために結局ジャストタイムの電車に乗ることになる。
執念で亜由美は電車に乗ると反対側のドア付近に陣取る。そうでないとどうしても降りられないから。
その亜由美が押しつぶされない様にさりげなく当麻が守る。
後から乗ってきた征士は迦遊羅を守ることになる。
二人のナイトと姫君という状態だ。
もっともこれが彼らの間の正しいカップリングと言うわけではない。
しかし、半分は当っているわけでそれに隠していても当麻と亜由美の仲むつまじさは隠しきていない。
結果噂になってしまっているという事を当人達はまだ理解していない。
征士と迦遊羅の場合はどちらも相手が違うためにどうしても先輩と後輩という雰囲気から抜け出すことはなく、二人は常に安心圏内だった。
駅を降りて学校へ向かう。
流石にこの頃になると亜由美は一人離れて歩き出す。
が、今朝は当麻が亜由美の腕を掴んで離さなかった。
離してとぎゃぁぎゃぁわめく亜由美を当麻が一喝する。
「滑って転んで頭でもうったらどーするんだっ。それでなくてもお前は生傷が絶えないんだからなっ。
お前があくまでも離れると言うならこっちにも手があるぞ」
脅されてしぶしぶ亜由美が当麻に従う。
段々、道に学生が増えてきて視線が集まってくる。
しかも、今朝は亜由美と当麻の状態に殺気すら感じられる視線が集まる。
途中で四人は当麻達の級友と合流する。
同じく双子の女の子と三大アイドルの一人だ。
有名人がぞろぞろ登校する図はすでにこの高校の見所の一つとなっている。
それに付き合わされる普通人亜由美の気は教室に着く頃にはもうくたくたになる。
迦遊羅もその美しい容貌から有名人の仲間入りを果たしているからだ。
唯一目立たない学生というのが亜由美であった。仲間内では巨大な猫かぶりと言われている。
校門のところに入るとそこにはアイドル達を待ちうける学生がうようよしている。
いつもは黄色い歓声を後ろに聞きつつ、すっと通りすぎてしまうのだが、今日はそうは行かなかった。
なんといっても当麻が亜由美の腕を離さなかったからだ。
いつもと違う状態に一瞬学生達の動きが止まるが、バレンタインの翌日ともあってか勇気ある女子学生がチョコを手に当麻達に近づく。翌日だろうがなんだろうが、女子学生も必死なのだ。
それを丁寧にアイドル達は断る。
それでいつもは過ぎていくバレンタインの翌日だが、今回は違った。
噂がたっている二人がぴったりくっついているのだ。一人の女子学生が尋ねる。
「羽柴先輩ってその子と付き合っているって本当ですか?」
問われて、一瞬当麻が考え込む。
その子呼ばわりされてしまった亜由美など顔面蒼白だ。
はい、と言えばこの場が収拾つかなくなる場合もある。
だが、いいえと言ってしまえば嘘になる。亜由美のことを好いている自分を否定したくはない。
ので、当麻は肯定した。
「申し訳ないがそういう事だ。だが、言っておくが、あゆに手を出したら俺は女の子だろうが後輩だろうが容赦しない」
静かに、だがしっかり釘をさして言う。その場が騒がしくなる。
痛いほどの視線に亜由美は泣きそうになって思わず当麻の背中に隠れてしまう。
これからの事を考えると恐ろしくなる。
「こらこら。あゆちゃんをいじめたら私だってただじゃおかないよ」
先輩双子の舞子が加勢する。
その明るい声に凍りついた場の緊張が解ける。
そのすきに有名人達はさっさと教室へ向かった。
それぞれがそれぞれの靴箱へ向かう寸前、当麻が亜由美にささやく。
朝、一番に起きるのは征士。なんとも朝五時に起きて近くの空き地で素振りをする。
戻ってくると服を着替えて新聞を読みふける。
次に起きるのはナスティと伸。ほぼ同じ時間だ。
ナスティが朝食を作り、伸は弁当を作る。
その次に迦遊羅が起き、夜更かしでなかなか起きない亜由美を起こす。
悠然とダイニングルームへやってくる迦遊羅と対照的に亜由美はばたばたと走ってくる。
最後に起きるのが当麻。伸と征士が二人がかりで起こしてつれてくる。
そうして騒がしい朝食が始まる。
テーブルには各個人の御弁当がおいてある。
緑が征士、青が当麻、水色が伸、ピンクがナスティ、オレンジが迦遊羅である。
残る亜由美は黒。
ほぼ一年、休学状態だった亜由美が高校入学の際、弁当の入れ物の色を考えた所、こうなってしまった。
はじめは寒色系を選ぼうとしたがそれでは男三人と重なる。かといって暖色系もあまり色は残っていない。
それに亜由美は自分の色は闇色と思っていたことがあったから自然にそうなってしまった。もっとも少女らしい趣味を発揮して上蓋には和風の猫の絵が描かれている。
それを持って学生が早く家を出る。
伸とナスティはそれぞれ自分の車で職場である高校に向かう。
一家そろって同じ高校にいることになっているが、その六人が一緒の家に住んでいることは一部の人間しか知られていない。
たとえば、征士と当麻が同居しているだとか迦遊羅と亜由美が双子で一緒であるというぐらいの事実は知れ渡っているが。まぁ、学生四人がまとまって登校するからこの四人は同居しているというのも知られている。
そこでいつも亜由美は肩をせまくして登校する羽目になる。
なんと言っても校内三大アイドルのうち、二名と同居の上、一緒に登校するのだ。
自然とまわりの女子学生のすさまじい視線をあびることになる。
当麻と許婚と言う事実は学生の中ではほぼ知られていない。
知れたらただではすまないだろう、と亜由美はいつも思う。
しかし、最近どうも噂が立ち始めているようだった。
二人は付き合っているのではと言う噂が立って視線はいよいよ最悪な状態だった。
わー、と家を出た亜由美は歓声を上げた。
昨夜、降った雪がほんの少し積もっていたのだ。
うれしそうに門を飛び出て、滑って転ぶ。
「いたいー。すんすん」
泣き言を言う亜由美の腕を当麻が苦笑いしながら引き上げる。
「はしゃいで飛び出すからだろうが」
その様子に征士も迦遊羅も笑いを禁じえない。
「姉様、スカート大丈夫ですか?」
迦遊羅がハンカチを差し出す。
「うん。ちょっと濡れちゃった。ハンカチ持ってるからいい。ありがとう」
亜由美は迦遊羅に微笑むと自分のハンカチを取り出してスカートを適当に拭く。
亜由美が乱れたスカートを直してようやく四人は登校の路につく。
当麻が亜由美の手を握って亜由美は慌てる。
「だめだって。見られたらどーすんのよっ」
「それでまた転ぶのか?」
じとっと当麻に睨まれて亜由美が黙る。
寝起きの悪い当麻は朝、すこぶる機嫌が悪い。上に亜由美が怪我などしようものならとたんに不機嫌になる。
今朝は怪我をしなかったが少なくとも一つと半ぐらいの不機嫌は覚悟しないといけないようだった。
内心びくびくしながら亜由美は当麻に手をひかれて歩く。
一応、電車通学だからこの辺りには同じ高校の学生はまだいない。
まだ安心圏内だ。
てくてく歩くうちに駅に着く。
いつもの時間通り、いつもの電車に、いつもの場所に乗る。
朝の都内の電車は生き地獄だ。ぎゅうぎゅうに詰め込まれる。
早めの電車に乗ればいいが、それだとどうしても亜由美と当麻が乗り遅れてしまうために結局ジャストタイムの電車に乗ることになる。
執念で亜由美は電車に乗ると反対側のドア付近に陣取る。そうでないとどうしても降りられないから。
その亜由美が押しつぶされない様にさりげなく当麻が守る。
後から乗ってきた征士は迦遊羅を守ることになる。
二人のナイトと姫君という状態だ。
もっともこれが彼らの間の正しいカップリングと言うわけではない。
しかし、半分は当っているわけでそれに隠していても当麻と亜由美の仲むつまじさは隠しきていない。
結果噂になってしまっているという事を当人達はまだ理解していない。
征士と迦遊羅の場合はどちらも相手が違うためにどうしても先輩と後輩という雰囲気から抜け出すことはなく、二人は常に安心圏内だった。
駅を降りて学校へ向かう。
流石にこの頃になると亜由美は一人離れて歩き出す。
が、今朝は当麻が亜由美の腕を掴んで離さなかった。
離してとぎゃぁぎゃぁわめく亜由美を当麻が一喝する。
「滑って転んで頭でもうったらどーするんだっ。それでなくてもお前は生傷が絶えないんだからなっ。
お前があくまでも離れると言うならこっちにも手があるぞ」
脅されてしぶしぶ亜由美が当麻に従う。
段々、道に学生が増えてきて視線が集まってくる。
しかも、今朝は亜由美と当麻の状態に殺気すら感じられる視線が集まる。
途中で四人は当麻達の級友と合流する。
同じく双子の女の子と三大アイドルの一人だ。
有名人がぞろぞろ登校する図はすでにこの高校の見所の一つとなっている。
それに付き合わされる普通人亜由美の気は教室に着く頃にはもうくたくたになる。
迦遊羅もその美しい容貌から有名人の仲間入りを果たしているからだ。
唯一目立たない学生というのが亜由美であった。仲間内では巨大な猫かぶりと言われている。
校門のところに入るとそこにはアイドル達を待ちうける学生がうようよしている。
いつもは黄色い歓声を後ろに聞きつつ、すっと通りすぎてしまうのだが、今日はそうは行かなかった。
なんといっても当麻が亜由美の腕を離さなかったからだ。
いつもと違う状態に一瞬学生達の動きが止まるが、バレンタインの翌日ともあってか勇気ある女子学生がチョコを手に当麻達に近づく。翌日だろうがなんだろうが、女子学生も必死なのだ。
それを丁寧にアイドル達は断る。
それでいつもは過ぎていくバレンタインの翌日だが、今回は違った。
噂がたっている二人がぴったりくっついているのだ。一人の女子学生が尋ねる。
「羽柴先輩ってその子と付き合っているって本当ですか?」
問われて、一瞬当麻が考え込む。
その子呼ばわりされてしまった亜由美など顔面蒼白だ。
はい、と言えばこの場が収拾つかなくなる場合もある。
だが、いいえと言ってしまえば嘘になる。亜由美のことを好いている自分を否定したくはない。
ので、当麻は肯定した。
「申し訳ないがそういう事だ。だが、言っておくが、あゆに手を出したら俺は女の子だろうが後輩だろうが容赦しない」
静かに、だがしっかり釘をさして言う。その場が騒がしくなる。
痛いほどの視線に亜由美は泣きそうになって思わず当麻の背中に隠れてしまう。
これからの事を考えると恐ろしくなる。
「こらこら。あゆちゃんをいじめたら私だってただじゃおかないよ」
先輩双子の舞子が加勢する。
その明るい声に凍りついた場の緊張が解ける。
そのすきに有名人達はさっさと教室へ向かった。
それぞれがそれぞれの靴箱へ向かう寸前、当麻が亜由美にささやく。
作品名:あゆと当麻~Vivid boys and girls1 作家名:綾瀬しずか