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綾瀬しずか
綾瀬しずか
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あゆと当麻~Vivid boys and girls2

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Vivid boys and girls 今宵はあなたと

練習試合も終わって一同は下校する。
遼は元々元主将という名目で来ていたので後輩にいろいろ指示を与えた後当麻たちと合流した。
が、流石に遠距離恋愛中の二人を邪魔するつもりは皆にない。さりげなく二人きりにして当麻達は帰路に着いた。
その帰りもしっかり当麻は亜由美の手を取り亜由美の心臓を縮み上がらせた。
知られてしまったのだからもう堂々としていればいい、というのが当麻の言い分だ。
明日もしっかり手をひいて歩くつもりらしいのを悟って亜由美はあきらめた。やりでも鉄砲でも持って来いと開き直る。
伸が学校で今日の夕食は鍋にするからといって舞子たちも誘ったので六人で家へ戻る。
夕食の準備は伸がすることになっているのでほかのものは帰ると基本的にすることはない。
思い思いに時間を過ごす。
征士は帰るとまっさきに習慣となっている夕方の素振りに出かける。
当麻は新聞を一読した後、いつも夕寝を決め込むのだが、舞子たちがいるのでそうもいかないゲーム機を引っ張り出してゲーム大会をはじめる。亜由美の苦手な落ちゲーだ。秀才と歌われる三人がいるので舞子と亜由美は不利だ。ハンデをもらってもなかなか勝てない。しかたなく舞子は翔子、亜由美は当麻というアドバイザーを得てなんとかゲームをこなす。
が、天性の特性か亜由美は何を言われてもまともなゲーム展開ができない。
基本的なつみ方をしては結局大敗を期す。
業を煮やした当麻がコントロールを取り上げて自分でゲームをしてしまう。
その事に回りから抗議の声が上がるが亜由美にとってはその方が助かる。
ピコピコと落ちてくるコマを上手に操りながら当麻が言う。
「お前、よくこれで仕事やってられるな」
「それとこれは別なのー」
亜由美が情けない声を上げる。
舞子たちも内調の関係者なので非公式メンバーの亜由美のことは多少知れている。
「お前、あのときだだっぴろい野原にいたよな・・・」
信じられん、と当麻が呟く。
それは言わないで、と亜由美がさらに情けない声を上げる。
あのとき、すなわち初の戦いのことは苦い経験として亜由美の胸にしっかりと刻まれている。とてつもなく情けない戦い振りだったと自覚しているから言われると弱いのだ。
その後、当麻に兵法と言うものを教え込まれたが今はもうほとんど頭から抜け落ちている。
「だからいろいろ鍛錬しようと思ってるのにぃ〜」
亜由美がさらに言う。
「お前、すぐに力技に持ちこむからだめ」
「今はセーブしてるもんっ。お仕事してないもんっっ。さいてーげんのことしかさせてくれないじゃないっっっ」
ドドーンとコマが相手の方に移って当麻が勝つ。ぶーたれた亜由美の方を向いて当麻が面白そうに頬をつつく。
「お前は体が弱いからな。せめて遼並になってから言え」
「なったってさせてくれないくせにっっ。とーまなんて、とーまなんてきらいっ」
ふんっ、と亜由美がそっぽを向く。幼い子供の様にすねる亜由美の様子を舞子たちはびっくりして見る。普段は大人しいがごく普通の亜由美だから次々に見せられる姿に驚いてしまう。
「俺は好きだが?」
平然と当麻が言って腕を伸ばして亜由美を抱きしめる。
流石にキスはしないが誰もいなかったら間違いなくキスするだろうと舞子たちは確信した。
伸が気苦労が多いと言っているのがわかるような気がする。
懐柔されてふにゅー、と亜由美がうなる。
「当麻・・・」
と用意が出来た伸が呼びにきてあきれたように名を呼ぶ。
「お客様の前だよ?」
ん、ああ、悪いと言って当麻が亜由美を離す。それから驚いた様にどうした?、と当麻が舞子たちに尋ねて舞子たちが脱力する。
「い、いつもこうなの?」
舞子が尋ねる。
そうだが?、と当麻が答える。
「この状態学校にばらしたらすごいだろうな・・・」
近江がぼそりと呟く。
亜由美があうっ、と言って絶句する。
言わないでっ、と近江は思いっきり涙目で亜由美に見つめられる。その様子に当麻が近江を睨む。
「泣かせるなよ」
泣いてないと思うんだけど・・・、という舞子の言葉は無視された。
「言わないから。ごめん」
近江が謝り亜由美はううん、と首を振る。
「やっぱり、お馬鹿カップルだもんね・・・」
亜由美がため息をつく。
「家に戻ると流石にえさのいらない猫もはがれるらしくって」
亜由美が苦笑する。
「それに当麻にすぐ言いくるめられてしまって・・・」
亜由美が深いため息をつく。
舞子たちは高校に入ってから内調に関わった。
亜由美のほうが一足早くメンバーになっているために外を出れば同僚かもしくは先輩であるため口調も
対等になる。
くるくる変わる亜由美の姿にやや戸惑い気味の舞子たちだが、なんとなく慣れてくる。
「じゃぁ、そろそろ夕食にしようか」
伸の言葉に一同はダイニングルームに向かう。
元々大人数対応型なのでテーブルも椅子も十分ある。その頃には遼と迦遊羅も戻ってきていて手伝っていた。素直な二人である。当麻と亜由美にも見習ってほしいと伸は願う。もっとも願ったところで改善されないのは確かだが。
皆で鍋をつつく。
「うーん。おいちい」
亜由美がうれしそうに食べる。
「火傷するなよ」
当麻が亜由美に注意を促す。
「わかってるよ」
と言いながらお約束通りに亜由美が熱いとつぶやく。
だが、当麻が動く前に亜由美は取り皿と箸をついと動かして当麻の手から逃げる。
その様子に征士がお、と見る。
「何かおかしい?」
苦笑いして亜由美が問う。
いや、と征士が答えるがその顔は面白がっているのがわかる。
「当麻がすねているぞ」
遼もくすくす笑いながら指摘する。
恨めしげとも言える当麻の視線に亜由美が降参する。
「わかったから。好きにしてよ」
とり皿を渡す。
「嫌がるなよー。きっと俺のことなんか・・・。すんすん」
当麻がさらにすねる。
わーん、と亜由美は心の中で叫ぶ。
「嫌がってないから。嫌ってないから。すねないでよぉー」
亜由美が情けない声を上げる。
「いいさ。伸のプリンお前の分もらうから」
いやっ、やめてっと意地悪な口調の当麻に亜由美が叫ぶ。
「キスだろうがなんだってしてあげるからっっ。プリンだけは取り上げないでっ」
その言葉に当麻がニヤリと笑う。
うっ、と亜由美が言葉をつまらす。
じゃぁ、と当麻が言う。
「お前の苦手科目日一つ減らせ」
その言葉に亜由美がわーんと声を出す。
「無理だよーっ。苦手って赤点科目でしょう?」
どうやっても無理だ、と亜由美は即座にあきらめてしまう。
「お前、英語をもう少しまともにしないと受験受からんぞ」
言いながら当麻は亜由美の取り皿に具を入れるとさましてやる。
恥ずかしい、と亜由美はもう顔を隠してしまう。
「ほれ、食え。偏食もなくせよ」
母親のような口調で当麻がしっかりと言う姿に舞子が爆笑する。
「は、羽柴君。超過保護ー。猫かわいがりしすぎーっ」
ひゃはははっと爆笑される。
亜由美はもう首筋まで真っ赤だ。
「こいつ猫だからちょうどいいんじゃないか」
平然と当麻が答える。
その自信にあふれた姿に近江はすごい、と思わず感心してしまう。
「猫だろうが、犬だろうが、なんとでも言って・・・」
亜由美がしくしくと傍らの迦遊羅に泣きつく。