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綾瀬しずか
綾瀬しずか
novelistID. 52855
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あゆと当麻~Vivid boys and girls2

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よしよし、と迦遊羅が慰める。
ごちゃごちゃ話しながら夕食を終える。
が、一人亜由美は暗い。
プリン、とぶつぶつ呟いている。
伸が助け舟を出してやる。
「あんまりあゆをいじめるとまた家出されるよ?」
「ふむ、愛想を尽かされるやも知れぬな」
征士が駄目押しをする。
「お前ら・・・。俺をいじめる気か?」
当麻がぶすっとして言う。
「あゆちゃんもこれだけ縛られてたら窮屈だよね?」
舞子がさらに押す。
お前らー、と当麻がうなる。
その、と亜由美は言いにくそうに言う。
「期待にそむくような答えで悪いのだけど、基本的に健康面に関してうるさいだけで、普段は放任だし、ちゃんと遊んでくれるし、いつでも助けてくれるし、それに・・・いつだって優しいから・・・。こういうこと言うのは結構恥ずかしいけれど、そういうわけで・・・」
「相変わらず熱いね」
伸が言う。
「ごちそうさま」
翔子も言う。
うん、と亜由美が答える。
「もし・・・」
言いかけて口をつぐむ。
「どうした? 言いたいことがあればいえよ」
 当麻が催促する。
「うん。いい。後で当麻だけに話すから。っとそんなつまらない追求するよりも。遼!」
 いきなり呼ばれて遼が身じろぎする。
「ほら、遼なんかは人のこと心配する前にいかにしてかゆを幸せにするか考える」
いきなり話しの矛先を向けられた遼と迦遊羅が慌てる。
「ちゃんとかゆを幸せにしないとただじゃ置かないからねぇ」
面白そうに亜由美は微笑みながら遼に迫る。
「私、十分幸せですから」
焦って迦遊羅がフォローする。
「だめだめ。かゆはもっともっと幸せにならなきゃ。私と当麻を追い越すぐらいにね」
そうだよね、と亜由美は幸せそうに当麻の顔を見る。
ああ、と当麻が答える。
「かゆが不幸せだとあゆも不幸せだからな。ということは俺も不幸せと言うことだから、遼、しっかりしろよ。なにせ三人分の幸せしょってるんだから」
当麻も面白そうに言う。
遼の顔が一旦ひきつったような顔つきになる。
あの亜由美が義理の姉になるのは納得しているが、この当麻が義理の兄になると思うといささか遼の心臓は痛くなるような気がする。
アーメンと、珍しく征士が胸元で十字を切る。
「遼をいじめたら僕が許さないからね」
昔から遼をかわいがっていた伸が当麻に迫る。
「いじめてなんかいないだろう? 実際にそういう現実なんだ」
当麻が自信満々答え、一同は心の中で一様に遼に同情した。
「あ、そろそろ。鍋片づけてくるね」
亜由美が立ち上がり、促されて迦遊羅も立ち上がる。
「たまにはお手伝いぐらいしないとね」
明るく亜由美は言うと台所へ消えていく。
当麻と遼、征士、伸、ナスティは亜由美の消えた方向を悲しそうに見つめていた。亜由美が何を言いたかったかは判明しないがあまりいいことではないのは確かだ。まだ亜由美は自分を許してはいない。彼らに刃を向けたことを。それが彼女の中で引っかかっていることを彼らは誰よりも知っていた。

台所で皿洗いを亜由美は迦遊羅としている。
亜由美はあのね、と明るい調子で声をかける。
「手合わせは別に良いから、明日ぐらい遼とデートしてきたら?」
その言葉に迦遊羅が動転する。危うく皿をおとしかける。
「い、いきなりなんですの?」
「いきなりじゃぁないよ。考えていたんだけどさー、今年の春にはもう関西へ戻るんだよ?今の内にいちゃいちゃしておきなさい。寂しくなる前に思いっきり甘えちゃいな」
亜由美はやや真剣な声で迦遊羅を諭す。
「ですが・・・」
恥ずかしそうに迦遊羅がもぞもぞすると亜由美は言う。
「そこの知将君が遼をいいくるめてくれるから」
へっ?、と珍しく迦遊羅がぞんざいな声を出す。
振り向くとカウンターごしに当麻が迦遊羅に軽く手を振っていた。
「そーいうわけだから、当麻お願いねー」
抜群のコンビネーションでデート作戦を展開された迦遊羅はあっけにとられるばかり。
当麻はへーいと答えて皆の集まるリビングへと戻っていく。
「姉様、計りましたのね」
別に、と亜由美は軽く答える。
「二人をびびらすよりはこっちの方がより建設的でしょ? 私も明日はちょっと遊びたいしー」
けろっと亜由美が言う。
遊びというのにぎく、と迦遊羅の体が固まる。
「安心しなさいって別にあなたたちをとって食うわけじゃないから。ちょっと舞子先輩の所に行ってくる。やっぱり知識だけでも欲しいなぁって思うから」
真剣さがまったくない声で軽く亜由美は言うがその胸の内は真剣そのものだと迦遊羅は分かっていた。亜由美は今だ、上手く魂を導くことが出来ないことを悩んでいた。
迦楼羅神教の37代目当主の舞子達に教えを請うつもりらしい。
「だーいじょうぶだって。家壊すわけじゃないし、当麻にも付き添ってもらうから」
その一言で迦遊羅はほっと安堵する。
「やだなー。ほっんとに信用してないんだからぁ」
洗い終わった亜由美は手に着いた水滴をばっと迦遊羅へ飛ばす。
ぴしゃりと冷たい水しぶきがかかって目を閉じた迦遊羅がすぐに瞼を開いたときはすでに亜由美は台所から去って行くところだった。
いつも何かをあの姉は抱えている。その事がなんだか迦遊羅には悲しかった。

明日は土曜日と言うことで舞子達も泊まることになった。もともと寄宿学校のような柳生邸である。
親も安心していたのだろう。あっさりと外泊許可が出ていた。
女の子達ばかり集まってパジャマパーティが始まる。
当麻達は珍しく起きている征士を伴って近江達と歓談していた。
夜食のクッキーをかじり、ねそびりながら話し合う。
恋愛のこと、学校のこと、関西のことなど話す。
舞子達は一度奈良に赴いていた。その時のことなどを話す。
ナスティはフランスの事や海外のことを話す。
迦遊羅は日本史マニアである。歴史好き翔子と話が弾んでいた。
そこへクラブ顧問のナスティが加わり話しに花が咲く。
亜由美は話の合間にほけっと天上を仰いだ。天窓から夜空が見える。
今日も道を教えている前世の姉の魂達は輝いている。
それを切なげに亜由美はちらちら見ていた。
早く解放したい。
早く救って上げたい。
そのためには自分が魂を浄化できるようになることが先決だ。
いつまでも姉の魂を闇に縛り付けておくのはいやだった。
「あゆちゃんって時々真剣モードになるよね」
歴史はとんと苦手な舞子が明るく亜由美に語りかける。
彼女たちは今までに壮絶な戦いをしてきたという。
その戦いはどんなものであったかわからない。
自分と同じく歴史の闇と戦う女の子。
同志のような舞子達に亜由美は好感を抱いていた。
「自分でもよくわからないんだけど、時々思い詰めちゃうんだよね」
てへっと亜由美が笑う。
「難しいことは考えないー」
舞子がにぱっと笑う。つられて亜由美もにぱっと笑う。
「舞子先輩って明るいから大好き」
亜由美は姉を慕うようにぴとっと舞子にくっつく。
よしよし、と舞子は頭をなでてやる。
今日はいろんな亜由美を見た。
明るい亜由美、甘えっ子の亜由美、はかなげな亜由美。
普通の女の子と同じ感覚を持った女の子ででも何か抱えている女の子。
心からの笑顔を取り戻して上げたいと思わせる何かが亜由美の中にあった。
「明日、とーまと舞子先輩家に遊びに行きますねー」