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綾瀬しずか
綾瀬しずか
novelistID. 52855
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あゆと当麻~Vivid boys and girls3

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当麻が頼もしそうにうなずく。
亜由美の顔がうれしそうにほころぶ。
それから前を向くと錫杖をシャランと鳴らして語りかける。
「ジジ様、姉様、緋影、白影、冬幻・・・出てきてちょうだい」
優しい声で語りかけ祈る。
シャランと錫杖が独りでに鳴ってゆらり、と人影が現れる。
ああ、と呟いて亜由美は愛おしげに喉をふるわす。
見る力のない舞子は翔子の力を借りて見る。
「魂鎮めの舞を踊ります。今から姉様達を解放するから・・・」
“亜遊羅・・・。無理せずともよいのじゃ。妾達はそなたを見守ると約束したであろう?”
亜由美より一つ頭分背の高い姉の沙羅耶が驚いたように語る。
いいの、と亜由美は微笑む。
「もう十分守ってくれたから。だから、今度は私が姉様達を助ける番なの」
亜由美は力強く言う。しばしその顔を眺めていた緋影達が顔を見合わす。
うなずくと三人は手に楽器を持っていた。
“四神ひさしぶりにそろったのじゃ、俺様達も手伝おう”
緋影が言い、冬幻が面白くなさそうにうなずく。白影は兄が了承すれば文句ないようだった。
当麻は座ると笛を手にした。
先導の旋律が鳴る。
それに合わせて祭りの旋律が始まる。
“姉妹ようやくそろったのじゃ。妾も踊ろうぞ。一族の舞をしかと覚えるのじゃ”
沙羅耶が嬉しそうに言って手をさしのべる。亜由美は嬉しそうに微笑むとその手を取り二人で舞を踊り出した。
不安はあった。だが、前世の姉の導きでしっかりと魂鎮めの舞が伝承されていく。
同じ形をなぞっていく。
蝶のように優雅な舞いがそこに繰り広げられる。
手にした錫杖がシャンシャンと鳴り音楽をもり立てる。
優雅な美しい、それでいて優しい舞が延々と続けられる。
天女の舞。まるで天空に舞っている天女が二人そこにいるかのようだった。
そして、長い長い祭りの旋律が終わった。
シャラン、と最後の音と立てて錫杖の音が止まった。
舞が終わったのだ。
床に座る形で舞は終わる。
ほうぅ、と人知れず感嘆の声が静かに響く。
“見事な舞じゃ。さすがは最後の長。しかと見届けた。あとを頼んじゃぞ”
沙羅耶が満足そうに言う。
その体の縁がすうっと薄くなる。
いつのまにか緋影達も立ち上がり体の縁が消えかかっていた。
「姉様!」
亜由美は思わず手をさしのべる。
“時が来たようじゃ。いつかまたあいまみえおうぞ”
沙羅耶がささやく。
うん、と亜由美は涙をこぼしながらうなずく。
「今までありがとう。亜遊羅は私はいつまでも姉様のこと大好きだから。慕っております。いつまでも!」
半ば叫ぶようにして幼き時告げることの出来なかった想いを告げる。
沙羅耶は満面の笑顔をしてうなずく。
“妾もじゃ。妾や里の者。一族のもの全てがそなたのことを愛しておるぞ”
名残惜しげに語る沙羅耶の言葉に一言一言涙をこぼしながら亜由美はうなずく。
最後の言葉を聞いたかと思うと沙羅耶達は虹色の光に包まれながら静かに消えていった。最後に残ったのは先代の長ただ一人。
すぐさま亜由美はジジ様と語りかける。
「ジジ様の事も恨んではおりません。もう一人ではないから。私には当麻達がいるから。だから安心して下さい。亜遊羅は見事、真の覚醒をはたして一族の悲願を果たして見せます」
その力強い言葉に長はうなずく。
“そなたの真の目覚めを心待ちにしておるよ”
長は涙を流している亜由美の涙を拭うそぶりを見せた後すっと消えてなくなった。四百年の時を超えてあった絆が今消えた。亜由美は押し寄せる寂しさとようやく楽に出来たという安心感から座り込むとぼろぼろ涙をこぼす。
纏っていた十二単もなくなり錫杖も消え失せ、一介の少女となった亜由美はただ泣き続ける。
そっと当麻が後ろからやってきて抱き寄せる。
久しぶりに亜由美は思いっきり当麻の腕の中で泣きじゃくった。
舞子達はそっと道場を出ていった。
ずっと心にあった重石がようやく解き放たれて亜由美は開放感に包まれる。
ようやく姉たちを救うことが出来た。少しだけだが魂を救う方法を見いだせた。
真の覚醒までもう少し。
ようやくここまでこれた。
安堵した亜由美は当麻の腕の中でとろとろと眠りに引き込まれていった。

はっと目を覚ました亜由美は優しい当麻の瞳がのぞき込んでいるのをみてほっと一安心する。握られた手があたたかい。
「起きたか。まだ少ししばらく横になっていた方がいい。想い存分泣いたからな。疲れているだろう?」
うん、と亜由美は答えてここがどこだかわからなくなった。
何か夢でも見ていた気持ちだ。
「安心しろ。夢じゃないから。ここは扇の部屋だと。寝かせてくれたんだ。ゆっくりしてろ。でないと俺がお前をおぶって帰ることになるからな?」
えっ、と亜由美は大きく叫んだ。
「だめ。この近辺でそんな姿見られたら親衛隊に殺されるーーーーっ」
今にも泣きそうな亜由美の頭を当麻はぐりぐりなでてやる。
「だったら扇のご厚意に甘えとけ。目が覚めたら呼んでくれと言われたから呼んでくるからな」
当麻はそういうとすたすたと部屋から出ていく。
ばたばたと舞子が嬉しそうに部屋に入ってくる。
よくがんばったねーとほめてもらい気恥ずかしい気がする。
「あれが私の仕事ですから」
気恥ずかしさから普通の後輩に戻った亜由美に舞子がぶーたれる。
「敬語はなし。いまさらそんな事言わないでよね」
亜由美がほへっと不思議なまなざしで舞子を見る。一体どうしたのだろう?
「舞ちゃんったら妹がいないからあゆちゃんを妹のように思っているのよ」
翔子が言うと舞子はばらさないでよーと翔子にくってかかる。
「よかったな。また姉が出来て」
当麻も顔をほころばせて言う。
えーっと亜由美が盛大な声を上げる。
「これ以上お姉ちゃんお兄ちゃんが増えたら困るっ。末っ子の立場にもなってみてよね」
言うと舞子が涙目でうりゅっと亜由美に訴える。
「あーっ。分かりました。わかりましたっ。学校の外ではいつまでも舞子お姉ちゃんの妹ですからっ。泣かないで下さいてっばーっ」
半ばやけくそのように困って亜由美が叫ぶと舞子はやりーっっとガッツボーズをする。
負けた、と亜由美ががくりと肩を落とす。
「まぁ。今日はせいぜい新しいお姉ちゃん達にかわいがってもらえ」
当麻が面白そうに言って近江と出ていく。
「ちょっと当麻の意地悪っ」
叫ぶ亜由美を余所に舞子達はうずうずと亜由美に近寄る。
「な、なにかなぁ? お姉ちゃん達」
本来の末っ子、純の仕草をまねながらおそるおそる尋ねる。
「ねねっ。あゆちゃんと当麻君ってどういう関係なの?」
知られたくはなかった秘密がまた暴かれようとする。
亜由美の顔は引きつった。
わーんっ。当麻の意地悪—っ。
来るべき質問攻撃に亜由美はたじたじとなり、当麻の高笑いがどこからか聞こえてくるようだった。